組織を強くする技術の伝え方 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498709

作品紹介・あらすじ

企業の2007年問題を乗り越える鍵がここにある!!「わかる」とはどういうことか、から始まって、身につけるべき知識や、記録の付け方まで著者の知的生産の技術を一挙公開!「伝わらないのはなぜ」と悩む人、必読。

感想・レビュー・書評

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  • ・アルプス電気では「顧客からのクレームがないのがよい製品」と定義し、一定のスペックに合っているか確かめる最終検査を一切行わない工程を作った。生産の工程をすべてモニターし、生産管理する。工程を管理するのに教えるのは「心(どう考えるか)・技(どんな工夫をするか)・体(どんな動作をするか)」。

    >凄い。これでも未だ、タグチメソッドのように設計段階での不備には切り込めない気がするが、「心」の段階で部署を超えた問題提起が含まれていれば、もう完璧だ。サービス業の品質管理は難しいと思っていたが、成熟した工業生産の世界ではこんな事までしているんだ。

    ・目黒のさんま。殿様の家来は危険が無いように骨を抜いて蒸し焼きにして出すが、不味い。一般に教育も、分かりやすいようにと話を整理してしまって、面白くないものにしてしまいがち。それだと受け取ってもらえない。

    ・六本木ヒルズの回転ドア。ビル玄関のスライド式自動ドアやエレベータドアの設計者は「ドアの運動エネルギーが十ジュールを超えると危険である」という暗黙知を持っていたが、回転ドアの設計者は十ジュール則を知らなかった。結果八百ジュールも出しうる危険なドアが出来てしまった。

    ・伝えるためのポイント
    ①まず体験させろ
    ②はじめに全体像を見せろ
    ③やらせたことの結果を必ず確認しろ
    ④一度に全部を伝える必要は無い
    ⑤個はそれぞれ違うことを認めろ
    その為に、まず先輩の真似を愚直にし、型を覚える事が必要になる。守→破→離なのだ。

  • 序章 「技術」とは何か
    第1章 なぜ伝えることが必要か
    第2章 伝えることの誤解
    第3章 伝えるために大切なこと
    第4章 伝える前に知っておくべきこと
    第5章 効果的な伝え方・伝わり方
    第6章 的確に伝える具体的手法
    第7章 一度に伝える「共有知」
    終章 技術の伝達と個人の成長
    「技術を伝える」を巡るおまけの章

  • SEKIモデルを思い出しましたが、本書でも触れられていました。伝えることよりも伝わることの大切さを改めて気づかせてもらいました。再読ですが、かつてこの本を読んで、講師の仕事に生かしたことを思い出すとともに、ちょっと今は難しくなりました。

  • 本書は、2007年問題として騒がれた時期に、組織における技術の伝承についての方法を書いた本である
    時期的に、本来の趣旨としては大量退職時代における世代間の技術の伝承を対象にしているのだろうが、内容としては中堅が後進を育成するときや異動による引き継ぎなどにも活用できるものとなっている

    なお、著者は「技術の伝承」ではなく「技術の伝え方」「技術の伝達」と言っているが、
    ・技術の「伝承」では変えにくいイメージがある
    ・技術の本質部分はきちんと伝えつつ、周囲の状況にあわせて変化させるべきで「伝達」の方がイメージとしてよい
    と言うことらしい

    この技術の伝達についての本質は、
    ・伝える側にとって都合の良い形ではなく、伝えられる側に都合の良い形になっていなければ伝わらない
    ということで、つまり
    ・問題なのは伝え方ではなく、伝わる状態になっていないこと
    ・伝えられる側の意欲が大切
    ・整理しすぎてはつまらなくなるだけ
    ということである

    あと細かい点としては、
    ・伝えるときは全部を一気に教える必要はなく、伝えられる側のレベルに合った技術を伝える
    ・伝えるときは正しいやり方はもちろん、正しくないやり方をした場合どんな不都合があるかも教えるとよい
    ということもある

    結局は、教えられる側の立場になって考えることが大切で
    ・興味を持たせる方法・内容
    ・伝えるべき内容・レベル
    等の考慮が必要なのだろうし、OJTの活用なども大切になるだろう
    そろそろ中堅どころになって後進の育成について考える必要があるので、個人的に非常に参考になる内容でした。

  • 「技術の定義:知識やシステムを使い、他の人と関係しながら全体を作り上げていくやり方」、「技術は伝えるものではなく、伝わるもの」、「原因と結果の間に行動を書くと伝わる」、「欲しい人が自分でむしり取れるようにしておく」、「「知」、「技」、「行動」/「企業文化」、「気」」、「目黒のさんま」、「正しいやり方と正しいやり方をしなかった場合のことを書くと立体的になる」、「裏図面」、「「目利き」と「語り部」の育成」

  • 組織を強くする技術の伝え方

  • ちょうど並行して「知識創造企業」を読んでいて、いろいろとリンクしていたので面白かった。

    第7章は特にぐっとくる。

  • 著者は、一橋大学の先生。学者らしいナイーブな意見のてんこ盛りなんじゃなかろうかと疑いつつ、人から進められたのと、アマゾンでの☆マークがたくさんついていたので読んでみた。読んでみるとすぐ分かるのは、著者が理想主義に凝り固まった学者ではなく、実践と理論を併せ持つ類まれな能力の持ち主であること。我が社で進行しつつある組織的崩壊を見てきたんじゃなかろうかと思うほど、我が社の内情にそっくりな例を挙げての説明はものすごく説得力あり。また、この人はそれに対する一定レベル以上の解決案も示しており、マネージャ必読の書である。

  • 技術の定義が興味深かった。知識やシステムを使い、他の人と関係しながら全体をつくり上げていくやり方であると。他の人との関係が大事。

  •  たとえば機械系の設計書などはどのように記述するのが良いのか?と考えていたが、裏図面(はずかしながら作成したことなし)というものを知る。ただこれでは設計書にはならない。伝えたいことは何か?という視点で見たとき、裏図面も不十分なツールと思われる。どうすればいいか?を考えることとなった。
     技術伝承が重要であるとの認識はどの会社にもあると思う。ただ、ではデータベースを作り、その使い方を展開して運用しよう、だけではほとんど死蔵品コレクションのままかと。実際のシリーズで、この辺のことを記載した書籍もあるとのことなので、そちらも参照したい。

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著者プロフィール

1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主 宰。2002年にNPO法人「失敗学会」を、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『図解 使える失敗学』(KADOKAWA)、『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』(講談社)『技術の創造と設計』(岩波書店)、『続・実際の設計』(日刊工業新聞社)『3現で学んだ危険学』(畑村創造工学研究所)など。

「2022年 『やらかした時にどうするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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