きみの脳はなぜ「愚かな選択」をしてしまうのか 意思決定の進化論 (KS一般書)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061567030

作品紹介・あらすじ

古典的経済学者は「人間は合理的」と考えた。だが、現実の人間は状況を見誤り、損な選択をしてばかりだ。今では行動経済学者に「バイアスもちの愚か者」と見なされている。では愚かな人類が繁栄できたわけは?
 本書は、まったく新しい進化心理学を基礎に目からウロコの議論を展開する。動物にとっては、遺伝子の複製を増やす行動こそ合理的だ。進化がきみの脳に授けた愚かなバイアスは、じつは優れた仕組みだった!

【自殺するウミガメ】
 愚かにも自殺するウミガメがいる。ふ化すると海ではなく道路に飛び出す。といっても、死を望んでではなく、本能に従ってのことだ。ウミガメは進化の過程で、真夜中にふ化し、明るい方へ進む本能を得た。夜の砂浜近くの明るい場所といえば、昔は月や星の光を反射する海だけだったから合理的だ。しかし、人工照明が出現し、その光に惑わされた海の賢者は愚か者となった。
 人間はどうか? 現代人の脳は原始人のものとほとんど変わらない。太古の合理的な脳は現代の光に惑わされ、愚かな選択をしてしまう。

【合理的な転落人生】
 無一文から大金持ちになり、破産を迎える人は少なくない。破天荒に生き、大金を一瞬で使い切る。堅実な人から見れば愚かだが、正しい使い道は?
 ネズミとゾウのエネルギー投資が参考になる。ネズミは自らの成長よりも生殖に多く投資する。いつ死んでもいいように出し惜しまない破天荒タイプだ。ゾウは堅実タイプで、成長に多くを投資した後、じっくり子育てする。
 貧しく不安定な幼少期を過ごした人にとって、明日失いかねない金は今使うのが正解だ。安定した幼少期を送った人は慎重になる。死にかけて、堅実から破天荒へ宗旨替えする人もいる。人の行動は合理性の表れではなく、それぞれがおかれた環境で懸命に生きようとした結果だ。

【原著について】
本書は、2013年にBasic Booksから出版されたThe Rational Animal: How Evolution Made Us Smarter Than We Thinkの翻訳である。ミラー、ゴールドスタイン、チャルディーニなど著名な意思決定科学者に賞賛された。アリエリー『予想どおりに不合理』やカーネマン『ファスト&スロー』より深く「人間とは何か」を考察した知的興奮の書。

感想・レビュー・書評

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  • 自分たちの選択の背景には祖先から脈々と受け継がれた性質があり、そしてその選択によって自分たちは愚かな選択をしてしまうことがあるよ、という話。
    自分たちの選択は、進化上の目的を果たすために行われている。

    同じ状況に対して、時と場合によって違う選択をしてしまうのはなぜだろう。
    魔が差したや、なんとなく、と言うのは簡単だがそうではない。
    人間の自意識の中には、7つの下位意識が存在し、それが意思決定に対して重要なファクターとなっている。
    自分の祖先が生き残る上でで必要だった考え方が本能に刻まれており、それが我々の選択に影響を与えている。
    自分たちの行動の究極的な理由はそこに行き着くこととなる。

    自己防衛 : 自己防衛が刺激されると、人は警戒深く物事を選択し、用心深くなる。
    病気回避 : 病気になる可能性を察知すると、予防を考える。免疫の活性化や、その場から離れたりすることを促す。
    協力関係 : 自分主体ではなく、他人主体で考える。家族や友達を思って動いたり。あるいは他人とうまくやっていくために。
    地位 : 集団の中で地位を確立し、権力を持とうとするために。
    配偶者獲得 :恋人候補に対して、自分が魅力的に映るように努力する。
    配偶者保持 :自分の配偶者(あるいはその候補)との関係を脅かそうとするものに対して警戒する。そして、二人の関係が長期的に続くよう努力をする。
    親族養育 : 子供を愛し、隣人を愛し、弱き者を助けようとする。


    度々ファスト&スローのトピックについて言及されている。未読の方はそちらも読んだ方が良いだろう。
    ファスト&スローを認知的バイアスについての本とするならば、本書はなぜその認知バイアスが起こるか、についての本だ。

  • 行動経済学で紹介される一見不合理な人間の心の動きは、進化心理学的には合理的であるという知見は新しい。得より損を嫌う心理は、生存を最優先してきた遺伝子としては当然。
    1人の人間には7つの下位自己がある。自己防衛、病気回避、協力関係、地位、配偶者確保、配偶者保持、親族養育。それぞれの自己が別々の行動を示唆し、最も活性化していた自己の判断が最終判断とされる。

    下位自己が討論するのは最近のアニメによくある場面( 蜘蛛ですがなにか 乙女ゲームの破滅フラグしかない 等)だが、学術的にも正しかったのか!
    経済合理的な判断は自己防衛等の下位自己が示す判断であり、地位の下位自己や配偶者確保の下位自己による無謀な判断を回避するよう、自意識を制御することが肝要みたいである。 

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00509782

     古典的経済学者は「人間は合理的」と考えた。だが、現実の人間は状況を見誤り、損な選択をしてばかりだ。今では行動経済学者に「バイアスもちの愚か者」と見なされている。では愚かな人類が繁栄できたわけは?
     本書は、まったく新しい進化心理学を基礎に目からウロコの議論を展開する。動物にとっては、遺伝子の複製を増やす行動こそ合理的だ。進化がきみの脳に授けた愚かなバイアスは、じつは優れた仕組みだった!

    【自殺するウミガメ】
     愚かにも自殺するウミガメがいる。ふ化すると海ではなく道路に飛び出す。といっても、死を望んでではなく、本能に従ってのことだ。ウミガメは進化の過程で、真夜中にふ化し、明るい方へ進む本能を得た。夜の砂浜近くの明るい場所といえば、昔は月や星の光を反射する海だけだったから合理的だ。しかし、人工照明が出現し、その光に惑わされた海の賢者は愚か者となった。
     人間はどうか? 現代人の脳は原始人のものとほとんど変わらない。太古の合理的な脳は現代の光に惑わされ、愚かな選択をしてしまう。

    【合理的な転落人生】
     無一文から大金持ちになり、破産を迎える人は少なくない。破天荒に生き、大金を一瞬で使い切る。堅実な人から見れば愚かだが、正しい使い道は?
     ネズミとゾウのエネルギー投資が参考になる。ネズミは自らの成長よりも生殖に多く投資する。いつ死んでもいいように出し惜しまない破天荒タイプだ。ゾウは堅実タイプで、成長に多くを投資した後、じっくり子育てする。
     貧しく不安定な幼少期を過ごした人にとって、明日失いかねない金は今使うのが正解だ。安定した幼少期を送った人は慎重になる。死にかけて、堅実から破天荒へ宗旨替えする人もいる。人の行動は合理性の表れではなく、それぞれがおかれた環境で懸命に生きようとした結果だ。

    【原著について】
    本書は、2013年にBasic Booksから出版されたThe Rational Animal: How Evolution Made Us Smarter Than We Thinkの翻訳である。ミラー、ゴールドスタイン、チャルディーニなど著名な意思決定科学者に賞賛された。アリエリー『予想どおりに不合理』やカーネマン『ファスト&スロー』より深く「人間とは何か」を考察した知的興奮の書。
    (出版社HPより)

  • なんだろう、、内容的には大変面白いはずなのだが、なんか読みにくい、面白みがない。
    「ギャンブラーの錯誤」「後知恵バイアス」など古典的命題も含め、世の中の合理的とは思えない選択を、生物としての進化の観点から考えるのだが、ひところ流行った竹内久美子の本格派版というか、「そうかもしれないけどこじ付け感」「いちいち専門用語を使って言ってもらわんでも分かってる感」がにじみ出てくる。

    啓蒙書ではなく、テーマごとに読み物としてまとめたほうが面白かったのではないか。

    <バイアスの戦略的優位性>
    アメリカの離婚率は50%。だが86%が自分たちの結婚は永遠に続くと信じている。
    つまり1000人いれば500人が離婚するがそのうちの360人は自信過剰だったことになる。この人たちは結婚という誤った選択をしたように見えるが、結婚は出産への強い前兆であるので、このバイアスがあるために、出産=子孫を残す可能性を高めたと言える。

  •  われわれの脳がはじめからバイアスをそなえて生まれてくるのは、そのバイアスが歴史的に見て適応度を高めるようにつながってきたからだと考えるほうが納得がいく。自然選択はかなり効率のいい仕組みなのだから、ある行動が人類にもほかの種にも広く見られるなら、それをたんなるばかな行動と考えるより、適応性のある行動だとみなすほうが、推測の出発点としてはよさそうだ。(pp.31-2)

     飛行機事故や納税者のパラドックスの例が示すように、われわれの脳は数が大きくなると感覚が少し鈍くなる。一光年はどのくらいだっけ?10の12乗ナノメートルは?非常に大きいかずは、脳にとって、進化との関連性がまったくないあいまいな概念だ。人の誤った決定や不合理な決定を理解したいなら、この点はきわめて重要だ。(p.164)

     “ダイヤモンドは永遠の輝き“キャンペーンがはじまってわずか30年のうちに、ダイヤモンドの指輪はたんなる贅沢品ではなく、現代の婚約儀礼の必需品とみなされるようになった。(中略)デビアス社は利潤への欲求の矛先を米国だけに限定しなかった。当時、恋愛結婚の伝統がなかった日本のような国では、花嫁のためのダイヤモンドは売り込むのがむずかしかった。しかし、デビアス社は日本人の配偶者獲得の下位自己さえまるめ込み、輝く炭素のために大金を使わせた。1967年にダイヤモンドを身につけていた日本の花嫁はわずか5パーセントにすぎなかったが、1990年には77パーセントにまで増えた。(p.278)

     科学とはミステリーを解くことだ。われわれ人間の選択の根底に何があるのかという問いは、古今を通じて最大級のミステリーのひとつだ。すばらしく入り組んだ筋立てになっていて、調査をつづけている科学者は、手がかりの迷宮をたどっている。手がかりをもたらしてきたのは、進化生物学、認知心理学、人類学、経済学だ。科学をこれほど興味深くしているもの、そして科学の探偵をうそのように興奮させつづけているものは、ひとつ難題を解決すると、新しいもっと興味をそそるミステリーが明らかになるという事実だ。(p.303)

  • 認知的バイアスを進化の観点で見るとちゃんと筋が通ってるよ,という話。7つの「下位自己」(≒究極要因)があって,それぞれあるタイミングで強まる,と。生存と繁殖だけじゃないのか。このへん,一般向けに書いているからこういう表現なのか,元の文献ちゃんと読まないといけないな。自分がやりたいことってまさにこの領域のことなんだし。あと,おわりに,のところで著者らがサイエンスライティング講座を受けて云々,と書いていて,ほんとにあっちはサイエンスライティング講座ってのが身近にあるんだなーと妙な感銘を受けた。サイエンスライティングに興味を持つ前に学術論文をまずばりばり書かねば,ということも身につまされた;;

  • 「人の決定は、表面上ばかげていて不合理な場合があっても、たいていは深い進化レベルで理にかなった無意識のプログラムが導き出したものである」
    「人は少なくとも七人の異なる下位自己を持っている」

  • とても面白い!名著だと思った。
    人の意思決定には様々なバイアスがかかっていて、中には不合理的だと思われる場合もあるけど、生物の進化の過程を考えると、なかなか合理的だったりもするんだよ。って内容。

    とにかく様々な人間の経済行動に関する具体的な実験が示されていて、その結果を見るだけでも興味深い。

    7人の下位自己を知ろう。
    親族扶養の下位自己
    配偶者保持の下位自己
    配偶者獲得の下位自己
    地位の下位自己
    協力関係の下位自己
    病気回避の下位自己
    自己防衛の下位自己

    己の自己は1つではなく、外部環境により表面化する下位自己によって意思決定がされる。

  • 進化するためには合理的な選択をしているだけではだめ?てな論点からスタートしている。面白いがちょっと唐突な感じが。
    いろいろなバイアスと、この本で言う下位自己、マズローとはちょっとずれているが、それぞれの欲求の立場から選択がある。その際にもそれぞれバイアスが。

    きみの脳はなぜ
    「愚かな選択」を
    してしまうのか
    意思決定の進化論


    <進化した人の欲求の階層
    親族養育
    配偶者保持
    配偶者獲得
    地位
    協力関係
    病気回避
    自己防衛
    これらのそれぞれこの本では下位自己とよんでいる。

    目次
    はじめに キャデラック、共産主義者、ピンクのフーセンガム
    エルビスが自分のキャデラックの
    ホイールキャップに金めっきをしたのはなぜか?
    第1章 合理性、不合理性、死んだケネディたち
    テストステロンで発情したスケートボーダーとウォール街の銀行家の共通点は何か?
    第2章 七人の下位自己
    マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは多重人格障害だったのか?きみはどうか?
    第3章 家庭の経済学とウォール街の経済学のちがい
    ウォルト・ディズニーが後継者と対照的なやり方をしたのはなぜか?
    第4章 心のけむり感知器
    真実を追求するのがなぜ危険なのか?
    第5章 現代の原始人
    ハーバード大学の賢人がだまされる問題に無教育のジャングル住人が引っかからないのはなぜか?
    第6章 生き急いで若くして死ぬ
    無一文からいきなり金持ちになった人がよく自己破産の申し立てをすることになるのはなぜか?
    第7章 金色のポルシェ、緑の孔雀
    人は同じ理由で派手なポルシェを買ったりエコなトヨタのプリウスを買ったりするか?
    第8章 性の経済学ー彼の場合、彼女の場合
    メスが得をしてオスが損をするのはいつか?
    第9章 深い合理性に寄生するもの
    ペテン師はどうやって深い合理性を食いものにするか?
    おわりに 旅の記念品
    おれにどんな得がある?

  • 経済学からすると合理的と思えない、人間が起こす非合理的な行動を、進化生物学という切り口で説明を試みる。動物として生き抜いてきた先祖の遺伝子が、経済的には合理的ではないが、生存あるいは子孫を残す可能性を高めるために、非合理的と思えるバイアスがかかった行動が現れる。
    具体的な喩えも面白く、斬新で楽しい。

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