進化とはなにか (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061580015

作品紹介・あらすじ

突然変異と自然淘汰説により理論武装された正統派進化論に対し、著者は名著『生物の世界』以来、生物の進化とは種社会を単位とした生物の世界の歴史的発展であるとの立場から、一貫して疑義を提起している。豊富な踏査探検と試練の上にはじめて構築された今西進化論は正統派進化論を凌駕する今世紀最大の理論の1つである。進化論はあらゆる問題にまたがる本質的認識であるがゆえに、本書に要約された今西進化論こそ必読の文献である。

感想・レビュー・書評

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  • 講談社学術文庫 1

    進化とはなにか
    著:今西 錦司
    紙版

    本書を読むと、自分は、ダーウィンの進化論について、おざなりにしか接ししていなかったことが痛感される。
    ダーウィンの正統派進化論に対して、今西流進化論を展開する反駁の書である

    進化とはなにか、種生成発展を中心として、展開してくる、一連の問題を指す

    進化論を理解するためには、種、突然変異、そして、自然淘汰を知る必要がある

    ダーウィンの進化論は、ある個体に突然変異がおきて、それが、自然淘汰で生き残っていき、新しい種ができるというものである

    今西氏は、優勢な突然変異が1つの個体ではなく、種全体に起こらなければその種は生き残れないと説く。
    今西流進化論は、個体ではなく、種全体における突然変異と、自然淘汰論である
    環境の変化が生じた場合は、1つ1つの個体ではなく、種全体に突然変異が起きなけれならない
    そして、その種は、その突然変異を経て、次の種へと変異していると主張する

    どうも、ダーウィンは、個体のみを対象としていって、集団である種というものを考慮していなかった節があるといっている

    これが本論である

    種を取り扱う分類学者として2つの立場がある
     ラムバー 似たようなものをあつめて1種類とする
     スプリッタ ちょっとでも、ちがうものを別種としてみなす

    交配が可能なものが、種である、これをAとする
    つぎに交配可能であるが1代雑種といって交配しても子供がうまれないものでてくる
    つぎに、交配はできても、子どもができなくなる。
    そして、ついに、交配ができなくなる。これはもう別種、Bである

    同一種でも、親子での交配や、兄弟姉妹での交配などがあって、突然変異の機能は、おもったより早く種全体へ伝播していく
    個体というのは、おもったよりもひじょうに多いのである

    ダーウィンの突然変異だが、その変異体がなんらかの事故で失われることもあり、第一変異は劣勢である場合がおおく、わずかに残ることは難しい

    1つの種がすみ分けをしていて、長い間には、相接しながら、独自に進化していく場合もあり、やがて交配もできなくなっていく

    おなじ、ホモサピエンスでも、地域の違いなどで、文化の分化が生じていく。これを、生物学では、放散といっている

    同じ種の中でも、当然個体間の差異がある。個体間の中には序列がある

    人間とはなにか、それは二足歩行する猿である

    進化というものは、目でみてもわからない。しかし、100万年以上かかって、人間の脳の容量は大きく変わっていく。そういう事から言えば、進化していると言える
    生物は変わるのである。タイムスケールというということはを考慮に入れるならば、変わらないというのも正しいし、変わるというのも、正しい

    進化と進歩とは違う、地球が進化をつづけて逆行しないのと同様、生物の進化もまた後にはもどらない

    人類の進化において特徴的なことが3つある
     1 サル類に共通な四足歩行から、二足歩行にかわったこと
     2 頭が大きくなったこと
     3 歯が弱小化したこと
    である

    目次


    正統派進化論への反逆
    人間以前と人間以後
    人類の進化
    パラントロパスの行方
    進化とはなにか
    私の進化論の生いたち
    解説
    出所一覧

    ISBN:9784061580015
    出版社:講談社
    判型:文庫
    ページ数:220ページ
    定価:820円(本体)
    発行年月日:1976年06月30日第1刷発行
    発行年月日:1990年05月25日第23刷発行

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/739669

  • 飛べない羽根のあるネズミは生き残れない。

  • ちょっと自己満足っぽい・・・。

  • 自然淘汰にも突然変異にも与しない今西進化論は、業界では異端であり続け、それゆえ余計魅力的である。
    個体というものを軽視するから社会主義だとか全体主義だとか即断するのはそれこそ排他主義に過ぎず、例えば、身近な企業や役所の種や類を参照してみれば良いのである。ミクロな遺伝子科学などとは別の次元で、世間的な考察に役立てるべきだし、もっと言えば、地球内存在は自己完結的か?という遠大な思索への扉なのである。
    思想のない科学こそ現代最悪の凶器である。

  • ラマルクやアリストテレス、ダーウィンの「目的的進化論」「自然選択」の二項対立にとどまらず、それにたいする私見を述べている。

    自然選択とは、突然変異などの要因によってその生物が変異し、それが元になっていままでの動物を淘汰していく、よって「キリンのクビが長いのは高いところにある葉っぱを食べるために進化した」のではない、という内容であるが、これにはアナがあるとする。

    ①突然変異とはいうが、実際突然変異で生まれてくる個体は概ね奇形のような奇妙な個体であり、実際にそうなっているのか?
    ②ヘラジカやツノゼミのような定向進化説(過剰進化)をどう説明するのか?進化には方向があるのではないか?

    の2つである。まず著者はラマルクのダーウィンも「同じ穴のムジナ」であるとしているし、環境にあわせているのであれば、目的があるではないか、ということである。そして動物は、「その進化を志向」しているのだ、とする。

    たしかに「暗黒バエ実験」では、暗いところに何世代も育てていたら、遺伝子に多少の差異は見られたのだ。「環境は遺伝子に影響を与えている。」と考えていいのかもしれない。たしかにその遺伝子は「暗闇で生きていくために進化」したのではないが、「暗闇で生きていたら変わった」のだ。淘汰はされていないが、進化はしている。

    決してラマルクもダーウィンも当たっているわけではなく、著者は以上のようなことを述べている。思考停止に陥ってはならないし、我々は陥っていただけなのかもしれないが。

  • 簡単に言えば、ダーウィンの足りない部分を補完するような意見で、
    対立しているものではないように見える。

    ダーウィンの自然選択もしくは自然淘汰
    と規定していることが意味があるとしている。
    つまり自然淘汰以外の種の進化というのがあるという風に解釈している。

    今西錦司氏は、
    生物を構造的に見て 種社会を導入することによって
    すみわけが、すみわけ理論として、確立される。
    この場合でも種の進化を説明することができない。

    ダーウィンは、個体差に注目していて、
    個体差が、進化を推し進めていくと考えていた。

    それは、ラマルクの形質獲得の遺伝という考えにつながる。
    形質獲得の遺伝は、学生のころに夢中になって読んだことがある。
    環境によって、遺伝形質が変わり、
    その形質が 遺伝するという考え方であった。
    『ルイセンコ論争』である。

    そのときは、一体何を考えていたのだろう。
    『進化論』というものが、政治的に利用されたということに
    興味があったのだろう。

    今西錦司氏は言う
    『進化論というものは、科学の問題であるとともに
    また、思想の問題である。』

    思想の問題ならば、いくとうりの考え方があっていい。

  • (1996.12.28読了)(1996.12.14購入)
    *解説目録より*
    正統は進化論への疑義を唱える著者は名著『生物の世界』以来、豊富な踏査探検と卓抜な理論構成とで、〝今西進化論〟を構築してきた。ここにはダーウィン進化論を凌駕する今西進化論の基底が示されている。

    ☆関連図書(既読)
    「私の霊長類学」今西錦司著、講談社学術文庫、1976.11.10
    「遊牧論そのほか」今西錦司著、平凡社L、1995.09.15
    「イワナとヤマメ」今西錦司著、平凡社L、1996.02.15

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階 学士力支援図書コーナー 請求記号:467.5//I45

  • 種とは何か。生物とは何か。
    ・個体としての突然変異と自然淘汰の正統派進化論への疑問
    ・種としての進化、生物としての方向性

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著者プロフィール

1902-92年。
1926年 京都帝国大学農学部卒
1932年 同理学部大学院修了。
京都大学教授、岡山大学教授、岐阜大学長を歴任。
1979年 文化勲章受章。
『今西錦司全集』(全10巻、講談社)がある。

「2002年 『今西錦司フィールドノート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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