比較文化論の試み (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (99ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061580480

作品紹介・あらすじ

経済的破綻に更生はありえても、文化的破綻はその民族の自滅につながる。文化的生存の道は、自らの文化を、他文化と相対化することによって再把握し、そこから新しい文化を築くことしかない、とする著者が、日本人とヨーロッパ人、ユダヤ人、アラブ人との差異を、ことばや宗教、あるいは法意識などを通してわかりやすく解明した独特の比較文化論。日本文化の特性が如実に浮き彫りにされ、私たち自身を見直すうえで絶好の書である。

感想・レビュー・書評

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  • 結構前に古本屋で見つけたものです。
    私が普段読んでる・見てるでキャッキャ言ってる(笑)作品などでも
    よく扱われるテーマ「わかりあえる」
    ためにはどうしなければいけないか、が読むとよく解ります。

    単に「相手に訴える・話を聴く」だけではだめ。
    どうして相手はこういう価値観なのか、その価値観はどうして
    出来上がったか、を知り、「相手の価値観の言葉」で
    話し合わないといけない、納得です。

    結構日本は「それが常識」と言いながら、何故それが常識なのか
    については深く追求しない、ただそれを常識と教育する、
    本当にありますよね。

    先日、多種の民族の方が住むマレーシアでは、
    「いじめ」がほとんどないというのをTVで見ましたが、
    まさに「それが常識」がないんだと思います。
    常識がそれぞれ違うことを当たり前に受け入れているから、
    そもそも「常識から外れる」がないとは言わないにしても、
    日本のように排他的でないんでしょうね。

    うん、このテの本は文章が固かったり改行がなかったりとかで
    読みにくいのが多いのに、この本は薄く読みやすい文章で
    凄く読みやすかったです。
    30年以上前の本なのに、現在も発売されていることが
    全てを語っている気がしますね。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/739683

  • まったく新しい視点をくれる。
    「なんとなく」考えることのルーツがどこにあるのか。

  •  「日本人とは何か?」を追求する山本七平。1921年に生まれる。1942年青山学院卒業即日入営。1944年ルソン島に派遣される。1947年日本に帰るという軍隊経験を持つことで、日本の歴史を見つめ、西洋の思想形成について考察し続けた。
     本書は、西洋の思想から見て、日本人は何か?を論じている。1974年の発行であるが、現在にも通用する視点だ。「日本人はひとりよがりで同情心がなかった。それは、日本文化というものが確立していなからだ。日本文化というのは普遍性がなかった」という小松さんという人の意見を考察する。
     日本人は、他との文化的接触をして自分が色々な行動をした場合に、反省することができなかった。精神的な弱さとひとりよがりに加えて文化の確立がなかったと著者はいう。
     宗教に対するアンケートで、「自分は宗教を必要としない。そういうものがなくても生きていける。しかし、だからと言って、否定しようと思わない」という考えに、「自分がなぜそう考えるのか?」という問いに「なぜって、別に理由はないですよ。そう考えるから、そう言っただけです」
     これは自分の考えを歴史的に把握しなおすことをしないことからきている。自分の考えを言葉にしきれないことも大きな要因だ。
     塚本虎二は、日本の聖書学の基礎を作った人で、冬にあまりにも寒いので、ひよこにお湯を飲ませて死なせたという。「これが日本人の親切だ」自分には善いと思って行動して、相手のことを考えない。日本がフィリピン人に対して、アジアの解放と言っていたが、誰一人「あなたたちのために私たちができることがありますか」と聞いた人はいなかった。これは同情ではなくひとりよがりなのだ。
    日本人は、「あなたのためを思ってやっているのに何をいうか」という言葉が出てくる。そうだから、アメリカやソビエトの国の人は日本人とは交渉ができないということになる。
     基本の問題として、日本人はどういう考え方で何を前提としてどうやって生きているのかっていうことを、自覚し直して、相手に相手の理解できる論理で説明する以外にない。自分の考え方を再把握し直すことだという。要するに、同一価値観ではなく、多様性社会に突入しているからだ。
     民族によって、「臨在感」が違う。常識つまり共通の感覚、感じ方は、理屈にならない感じ方、言葉にしにくい感覚。これをどう言葉で説明できるか。日本人は感じ方の違いを無視する。感じながら理由を考えない。
     「ヨハネ福音書」の「はじめに言葉(ロゴス)あり」「はじめに秩序あり」というのが西欧諸国の考え方の基底をなしている。そうであるから、普遍性を持つ。「聖なる場所」に行くことで臨在感が生まれる。ユダヤ人は聖地意識であり、イスラム教徒も同じ聖所、メッカに行くことを一生の願いとした。日本人には場所に対する臨在感はなく、自分の家の中に引き入れる。それが仏壇である。
     また、自然(じねん)に対する考え方も「天然自然に従っておればよい」と考える。そして輪廻転生の考え方に繋がっていく。全て自然に行っておれば良いと考える。
     臨在感の特色把握と歴史観的把握をすること。つまり「こういう事実がある」と「なぜそうなったか」という二つの視点で考えることだ。
     西欧では、正統と異端という対立概念がある。対立概念があると対象を確実に捉えられる。日本は、善と悪に分けるだけで、対立概念となっていない。
     言葉で説明しきれないということに甘んじているがゆえに反省もきちんとできないという指摘は随分と痛いなぁと思う。自分の立っているところの歴史観的把握という作業は重要だと思った。

  • 日本人が常識と考えている事が世界での常識ではないことを提示し、そのような差が生まれた要因に対するが示されていた。
    日本文化とヨーロッパ文化を比較した際に異なる文化との交流経験がある文化ほど自らの文化を伝播し、異なる文化との折り合いを付ける事に長けているというのには驚いた。
    この本が出版された時に比べ、世界との距離が縮んでいる現在では当時よりもこれらの考え方は重要になってきている。
    最終章で触れられていた。対立論と分立論の考え方はここ最近のヘイトスピーチ問題へと繋がる考え方であることも感じられた。
    今まで山本七平という人物を知らなかったのだけど、他の著作も読んでみようかな。

  • 『日本文化ってのは「普遍性がなかった」』

    『たとえば、左翼と右翼という形で、あるいは与党と野党という形で対象をとらえる。
     しかし、対象はあくまでも“一”で、対立概念というものは、その極限にあるものは究極的には“一”であるということが絶対の前提になっている考え方なんです。』

    納得すぎて、膝をうちぬいた。

  • 昭和四十九年の講義を纏めたもの。日本人は、他の文化との衝突「文化ショック」を経験してこなかったために、自らの思想信条を相対化して考える機会がなく、言葉として表現することもなかった。このため、独りよがりな民族である、といった論調。内容的には薄くて物足りない感じ。

  • 「自分が何故そのように考えるのか」ということを説明できるかどうか。そんなこと考えたこともなかったのですが、異文化コミュニケーションではそれが大切ですし、仕向け地向けのテストでもきっと「その国の人は何故そのように考えるのか」ということを説明できるかどうかが大きな分かれ道になると思いました。

    本書は、99ページしかない文庫本で、たぶん私が持っている文庫本の中で最薄です。iPhoneよりも薄いです。

    だからあっという間に読み終わりますが本当に深くてよい本です。テスト関係者に特に読むことをお勧めしたいです。

  •  今は亡き著者の、日本と西欧の文化が持つ根本的な違いについて説明したごく短い一冊である。内容は、大学での講演をベースにしているのだそうだ。
     この短い中にも、確かな知性に支えられた文化的考察がぎっしり詰まっていて、正直圧倒されるような思いに駆られる。名著と言って差し支えない内容だろう。
     というわけで、星五つと評価しておきたい。

  • 山本七平の本は山ほど読みたい。
    "私たちはごく自然に結婚しました"の比較文化はすごく面白い。

  •  『日本人とユダヤ人』等、卓越した日本論の著書を多数執筆している山本七平氏による比較文化論。本書では、日本人と世界との違いについて述べている。
     日本人には、「何事も自然に」といった伝統があるため、「自分がなぜそう思うのか」を説明できない。そのため、「自分がこう思うから、相手も同じことを思うはず」という独りよがりの状態に陥りやすいという。一方アラブやユダヤ、ヨーロッパ社会では、多くの民族や宗教が入り混じった社会のため、言葉による論理的説明が発達した。
     そこで、『多くの言葉を必要としない日本社会』⇔『言葉がないと始まらない世界』という図式が出来上がる。

     キリスト教、イスラム教、仏教、ユダヤ教とあらゆる宗教に精通する作者だけに読みごたえがあった。日本人は海外を語るときにえてして経済の話をする傾向があるが、もっと深い根の部分、宗教や文化についてももっと深く考えてみるべきだと思った。

  • 日本の文化と他の文化を相対化し、日本文化の特性を明らかにする試みです。他の文化との臨在感の違いや、言葉にすることの重要性、対立概念と二元論を説き、文化を再把握してそこから新しい文化を築くべきとしています。名著ですね。

  • (1982.12.28読了)(1982.12.27購入)
    *本の表紙より*
    経済的破綻に更生はありえても、文化的破綻はその民族の自滅につながる。文化的生存の道は、自らの文化を、他文化と相対化することによって再把握し、そこから新しい文化を築くことしかない、とする著者が、日本人とヨーロッパ人、ユダヤ人、アラブ人との差異を、言葉や宗教、あるいは法意識などを通してわかりやすく解明した独特の比較文化論。日本文化の特性が如実に浮き彫りにされ、私たち自身を見直すうえで絶好の書である。

    【目次】
    はじめに
    1 ひとりよがりの日本人
    2 民族による臨在感の違い
    3 セム族の臨在感の特徴
    4 臨在感の歴史的裏づけ
    5 ショフティムと多数決原理
    6 言葉を重んじるセム族の伝統
    7 正統と異端・護教論とその裁定
    8 言葉の差―神概念の相違
    9 ものの見方の差

    あとがき

    ☆山本七平さんの本(既読)
    「日本人とユダヤ人」イザヤ・ベンダサン著、角川文庫、1971.09.30
    「日本資本主義の精神」山本七平著、光文社、1979.11.05

  • マストバイです

  • 内容は面白く、確かにそうだと思わされる部分が多い。ただ、本が非常に薄く(簡潔とも言えるが)、例えば、日本以外の文化の人はこういう時にこういうことをする、だから日本人もこういう知恵を持って異文化交流をしよう、というような具体的な主張が少ない。なので、これを読んだ上で、自分の中で考えやどういった行動をしようといったことを整理する必要がある。

  • 何年も前に買い、折に触れて再読する本。
    無意識に「自分の考えは普遍的な真理だと信じている」ことに気づかせてくれる良著。
    以下、自分用メモ

    ・日本人は相手と自分を混同してしまい、自分の感情を充足させることと相手への同情の区別がついていない。(例 ヒヨコが寒かろうとお湯を飲ませて死なせてしまう)
    ・日本人は「自分がなぜそう考えるか」を歴史的に把握しようとしない。臨在感を持ちながら理由を考えず、無視するのが科学的と思っている。
    ・日本人は文化ショックを受けて自分たちの規範を再確認する機会が少なかったため、自国の文化を把握・説明しきれていない。
    ・日本では、言葉にすることで自分たちの考え方を弁護する護教論が発生せず、相手の言葉・考え方で説明する必要がなかった。
    ・「言葉にする」とは、臨在感を歴史的に把握し直すための知識化。セム族は法則や規定、生き方はすべて「言葉にしなければならない」と考えていた。

  • ニコニコ動画の蝉丸Pが紹介していた。

  • -ニコニコ堂がで仏教講座を見てから、ずっと読みたかった本。自分の考えが、時代・地域において通用する相対的なものだと気づくための書籍という紹介。

    思想の違いが『現在どのような点で違っているのか』ということと、『どのような経緯で成立していったのか』、を説明できるようにすることが比較文化論の第一歩ということだ。

    参考:坊主めくり
    http://bouzumekuri.jugem.cc/

  • とても薄い本です。
    でも,そこらへんの無駄に厚い本よりも勉強になります。

    日本と他の文化を比べてます。
    「空気よめよ」が異なる文化では通じない事を改めて認識させられました。
    「ならぬことはならぬものです」ではなく,きちんと相手を納得させる事も時には必要です。

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著者プロフィール

1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。
著書には『「空気」の研究』(文藝春秋)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『論語の読み方』(祥伝社)、『なぜ日本は変われないのか』『日本人には何が欠けているのか』『日本はなぜ外交で負けるのか』『戦争責任と靖国問題』(以上、さくら舎)などがある。

「2020年 『日本型組織 存続の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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