古事記 (中) 全訳注 (講談社学術文庫 208)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061582088

作品紹介・あらすじ

古事記の中巻下巻は、上巻の神話をうけて、神話と歴史とをつなぐ伝説を記した巻である。古事記の文学性は、主に中巻下巻の伝説に認められる。中巻では、垂仁天皇の皇后サホビメの苦悩の物語に、夫婦の情愛がみごとに描かれており、ヤマトタケルの命の悲劇的生涯を語る伝説には、英雄の末路があわれ深くロマンチックに描かれている。古事記の伝説には、史実と認め難いものが多く、古事記が文学的作品といわれているのもこのためである。

感想・レビュー・書評

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  • 古事記の中巻は、神武天皇から応神天皇までの15代の物語です。

    天皇の名前に神がつくものは、神武、崇神、応神の3天皇で、いずれもその王朝の創始者ではないかと言われています。
    国史ではあるのですが、突っ込みどころ満載の作られたものである。

    しかし、気の利いた挿絵だとか、東征の順路を示した地図とか、細かい系譜とか、歌(番号はついていますが)だけを丁寧に解説したコラムがあっても良かったのではと思ってしまいます。わかりにくいです。

    つたない表現で申し訳ありませんが、物語性のある部分は次のところです。

    ・日向、高千穂を出発した神武天皇は、筑紫(福岡)、安芸(広島)、吉備(岡山)、難波(大阪)、紀伊(和歌山)、奈良での討伐を終えて、神武東征は終わる。

    ・神武が日向の出身であるのであれば、何故同じ南九州の熊襲がしばしば反乱を起こしたのであろうか。

    ・中巻の物語は、天皇の御代によって、場所があちこちにばらけるのです。

    ・妻問い 恋の駆け引きの歌は後から挿入されたものではとの説もあるが、ゆかしくほほえましい。が天皇はえてして恐妻家が多い。

    ・神武天皇から開化天皇までの9代を欠史8代としてみるのか、それとも、葛城王朝とみるのかの問題提起があります。

    ・崇神天皇の初国知らしし天皇とは、初代の天皇であることを示しているが、神武天皇も同じく初代の天皇であることを示している。人しての天皇は、崇神であり、その先祖の神が、神武であり、その間の9代を挿入して、神代から人代としたのではないかと考えられる。

    ・垂仁天皇の皇后が、兄の陰謀に巻き込まれて、夫である天皇を殺そうとするのだが、殺しきれずさりとて兄も見捨てることができず、兄とともになくなっていく。

    ・垂仁天皇の子である景行天皇は奈良の桜井市に都をおく。その子倭建命の征討の物語となる。天皇に疎まれた倭建命は、九州征伐を行い、出雲征伐を行い、東国征伐を終えてもどると病をえて不遇の一生を終えるというもの。命を慕う姫が、命のために入水して、その征伐を助ける話。有名な足柄峠で、その姫=妻を思い、関東を振り返るなど情緒あふれた話が盛り込まれています。
    倭建命の葬儀は、天皇のそれであったにもかかわらず、彼は天皇に数えられていない。解説者もそれを不思議がっていた。

    ・次の仲哀天皇からは、また、都は下関、福岡に戻ってしまう。天皇は熊襲征伐に行こうとして、后である神功皇后に下った神託を信じなかったために、たちまち天罰が下って亡くなり、神功皇后は新羅討伐に向かうというもの。そして仲哀天皇の遺骸とともに大和にもどって、応神天皇の異母兄弟を誅して、応神天皇を即位させるというもの。

    ・ここでも、その不連続性から、応神があたらしい名前にワケがつく王朝が新しく建てられたというもの。

    上巻 神話の世界 
    中巻 神話と歴史をつなぐ橋
    下巻 人の世、大和朝廷を舞台とする人間模様

    各段の構成は、

     原文書き下し文
     現代語訳
     注
     解説

    からなっています。

    中巻の目次は次のとおりです。

    はしがき

    凡例

    古事記中巻

    神武天皇
      1 東遷 
      2 布都御魂と八咫烏
      3 兄宇迦斯と弟宇迦斯 
      4 久米歌
      5 伊須気余理比売
      6 当芸志美美命の反逆

    綏靖天皇

    安寧天皇

    懿徳天皇

    孝昭天皇

    孝安天皇

    孝霊天皇

    孝元天皇

    開化天皇

    崇神天皇
      1 后妃と御子
      2 三輪山の大物主神
      3 建波邇安王の反逆
      4 初国知らしし天皇

    垂仁天皇
      1 后妃と御子
      2 沙本毘古と沙本毘売
      3 本牟智私気王
      4 円野比売
      5 時じくの香の木の実

    景行天皇
      1 后妃と御子
      2 大碓命
      3 倭建命の熊曾征討
      4 倭建命の出雲建討伐
      5 倭建命の東国征討
      6 美夜受比売
      7 国思歌と倭建命の死
      8 白智鳥と御葬歌
      9 倭建命の子孫

    成務天皇

    仲哀天皇
      1 后妃と御子
      2 神功皇后の神がかりと神託
      3 神功皇后の新羅遠征
      4 忍熊王の反逆
      5 気比大神
      6 酒楽の歌

    応神天皇
      1 后妃と御子
      2 大山守命と大雀命
      3 矢河枝比売
      4 髪長比売
      5 国栖の歌
      6 百済の朝貢
      7 大山守命の反逆
      8 天之日矛の渡来
      9 秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫
      10 天皇の子孫

  • この書籍は、日本の最古の歴史書「古事記」の講談社版です。
    他の出版社と違う点は、短くして本文と現代文、そして単語の意味のじゅんにして掲載しています。
    この巻では、中巻です。本家と同じ区分です。

  • 『上』に比べて物語系が少なく、天皇の系譜の羅列は読んでも全く頭に入らず厳しかった。
    八幡神社の御祭神である応神天皇がなんで御祭神になったのかは描かれてないんだな…

  • 神武天皇が登場し、人間の時代が始まる。

    欠史八代の後、文学的な内容が続き、
    実在説が濃厚な応神天皇の項で終わる。

    上巻の内容が全て伝説だったのに対し、
    中巻は伝説と史実の境目という印象。

  • だいぶん人間らしい時代になってくるね。

  • 全三巻に渡る『古事記』本文付き訳注本の中巻。神代を扱った上巻に引き続き、本書では『古事記』中巻(神武天皇から応神天皇まで)を収録している。
    著名な「神武東征」、「三輪山神婚」、「倭健命」、「三韓征伐」などといった伝説が収録されているのはこの巻である。独立して語られることの多いこれらの伝説の原典に直接当たってみて、新たに思った事は多かった。悲劇として語られる弟橘比売命の入水のエピソードで、弟橘比売命の登場がやや唐突に思われたのはその例である(本文中では走水海で倭健命の船が立ち往生したという記述の後、唐突に「ここにその后、名は弟橘比売命~」と出てくる)。また秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫の伝説にて、賭けを反故にした秋山之下氷壮夫が「うつしき青人草習へや(現世の人々のやり方に見習ったのでしょうか)」と非難され、神々の価値観と対比されている点も興味深かった。

  • 倭健命の物語が中盤に登場します。
    クマソタケルとイズモタケルを倒す段までは勢いがついていても、後半になり息吹山のイノシシを殺したことで運が尽きてしまう。悲しいヒーローです。
    神武天皇の遠征も楽しんで読めます。

  • 請求記号:913.2ツ
    資料番号:011108248

  • 上中下巻の全3巻。やっぱり記紀は欠かせません。さまざまな編者、訳者、解説者、出版社より出版されていますが、「原本を安易に簡略化していない」「必要以上に難解な解説、訳をしていない」「原本の内容に忠実」「勝手な解釈をしていない」という基準でお勧めのシリーズです。

  •  
    ── 次田 真幸・全訳注《古事記(中)19801210 講談社学術文庫》19801205-19951025
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4061582089
     
    (20100227)
     

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