自警録 (講談社学術文庫)

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著者 : 新渡戸稲造
  • 講談社 (1982年8月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061585676

自警録 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  真の成功なるものは、己れの本心に背かず、己れの義務と思うことをまっとうするの一点に存するのであって、失敗なるものは、己れの本心に背き、己れの任務を怠るにある。(p.140)

     古人の言に、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」(『十八史略』)
     とて、小人が英雄の心事を解し得ぬに譬えたが、この句は独り人物の大小の差を示すのみにあらで、小人と小人との間にも、大人と大人との間にも当たる言である。(p.143)

     思慮のない熱心ほど己れを害し人を害するものはない。ややもすると世の中ではほとんど目的もなく騒ぎ散らすをもって、熱心があるとか、気象がさかんだとか、あるいは勇敢だとか、痛快だなと称する。しかし熱心勇敢の気象などというものは、いわば馬みたいなもので、御する人があればこそその方向に進んでいくが、御する者なければその向く処を知らない、狂人と同然である。発狂人の多くは勇気あり熱心あり気象の旺であるのであるが、惜しいかな心を守り、気を抑える力がないのである。古人の曰く、
    「この心を敬守すれば則ち心定まる、その気を斂抑すれば則ち気平かなり」と。(p.194)

     彼の眠られぬ時はともに起き、彼の眠っている際もなお眼ざまし、彼の起きぬ間にとく起きて、彼の準備を助け、彼の眼や耳にさらに触るることなく、彼の身辺を擁護する母の情愛があって、始めて無難な試験を経たものと、迷信かは知らんが僕は信ずる。(p.230)

     大ざっぱの教訓も、すなわち忠義でも、孝行でも、信義でも、いずれも抽象的で、いかなる国民にも、いかなる境遇の者にも応用できるだけに、これは俺のことだと私の意味に取ることは薄くなる。それゆえに先に述べたように、こういう文字は人を責むる道具に用いるほうがむしろ多いかと思う。彼は不忠者である、彼は不孝者であるという言葉はしばしば聞くが、俺は不忠である俺は不孝であると感ずることは少ない。またたまたま己れの非を自覚しても、すぐに俺はまだ某々ほどに堕落せぬとか、あるいは俺の場合は特別であると自ら義せんとしたがる。(p.247)

     教訓も忠告も、その百分の一も功の無きはこれを受ける人の真情に当たらぬのと、これを受ける人に対する同情の薄きによると思う。約言すればとかくわれわれの忠告なるものには誠心誠意が欠けがちで、軽々しくするがゆえに、先方を動かさぬは当然のことである。人に忠告せんと思う者は口に言を発するに先立って深く心に念ずることこそ順序であろう。また人より忠告を受くるものは先方の誠意を疑ってはならぬ。彼の言は長く心中に念じたる結果、やむなく口外に出でたるものと思えば、これ実に天の声である。(p.254)

     偉大なる凡人となることは平凡なる豪傑となるよりも、はるかに上乗であると思う。米国に行きてことに感ずることは、この国には偉大なる凡人の大きことは、ほとんど日本において平凡なる豪傑の多きがごとくである。凡人をして偉大ならしむるのはそれ思想か。思想ほど恐ろしき力はない。人の動くのはみな思想の力によるのである。すなわち世の細事大業も機械に譬うれば思想なる原動力の発現にほかならない。(p.300)

     人が真に教育家なら笑っても教育になる。寝ているのも教育になる。一挙手、一投足、すべて社会教育とならぬものはない。われわれの目的および理想が教育であるなら、全身その理想に充ち満ち、することなすことがことごとく教育でなくてはならぬ。(p.314)

  • 新書文庫

  • 新渡戸稲造氏の先見性に驚く。一方で、それほどの考え方を持ちながらも、やはり時代の影響を受けずにはいられないのか、という面白さもある。

    釈迦やガンジー、セネカが述べるいつの時代にも通じる真理とはまた違い、より世俗に近く、真理と処世術の丁度間といった感の書。

    格の高いビジネス書というのが正しいかもしれない。
    しかし、それは何かを貶めるものではなく、
    新渡戸氏が哲学者よりも、教育者であるということを示すものなのだと思う。

  • 私的には最高峰だと思う。シンプルな言葉であれだけ皮肉れるのもすごい。というか一番感動したのはあの単純な英文をあそこまで情緒的かつ格式的に和訳できる力。この時代の倭人はみんなそうだったのかもしれんけど非常に胸にどどんときた。

  • 武士道より面白い!

  • 5000円札の肖像だった新渡戸稲造という人物のことを知りたくて読んでみた。彼が晩年に入ってから、「実業之日本」に出稿した原稿をまとめたもの。当時の平均的な日本人像を念頭に置き、戒め、教訓、訓え、のオンパレードだが押し付けがましくはない。著者のメッセージのオーディエンスである日本人像を想像することで、当時の世相や気質が見えてくる。

  • 現在の時事問題を考えるとき「新渡戸さんが今の時代にいたとしたらこれをどう考えるだろう」とか思うようになったり。

  • 「読みたい本」

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