塩の道 (講談社学術文庫)

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著者 : 宮本常一
  • 講談社 (1985年3月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061586772

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塩の道 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  • 本書では塩が題材になっているが、かつての日本の流通が、たとえば密林やサバンナの生態系、ヒトの腸内環境のような精緻なバランスを連想させる。それは当時の必要に応じた暮らし方の一部に過ぎないとも言えるのだけれど、現在の効率的なのに大量の廃棄物が出る社会にはない美しさだ。いたずらに過去を美化するわけにはいかないが、「必要なものを必要な分だけ」手に入れる良さを、少しでも維持していきたいという気持ちになった。義務感ではなく、そのほうが美しいと感じるから。

  • 傑出した名著。宮本氏のたぐいまれな観察と失われゆく習俗への愛情にあふれている。

  • 塩が貴重だった時代、山に住む人にとっての塩。

    その塩を活用するための日本人が編み出した暮らしに密着する知恵と工夫。

    「日本人と食べもの」の内容に関心がありましたが、どの章をとっても、どの節をとっても、得るものが多かったです。

  • 民俗学の古典ともいうべき本ですね。
    勿論、今、読んでみると古臭いネタも多く、
    非現実的な話もあるのですが、(何故か三陸の人たちが自分たちのところで塩を作らず、わざわざ遠くから塩を調達しようとしてたり(´∀`;))
    戦後の時代にこの本にあるような論文が書かれたという事実を、
    時代背景を考えながら、読んでみると、やっぱり宮本常一という人は、
    凄くバイタリティに溢れていた人なんだろうなと思えます。

    そのような意味で元気の出る本ですね。

  • 塩がいかにして作られ、運ばれてきたのか。
    塩は神として祭られたことがないという話から始まり、山奥に住む人が苦労して塩を手に入れていた話や、塩を運ぶために道が作られたという話などが続きます。

    塩だけにとどまらず、日本の食べ物や道具や暮らしなど、興味を掻き立てられることがぎっしりと詰まっていました。

    宮本常一さんは実際に自分が見聞きしたことを書き記しているからか、文章に血の通っているような温かみがあって好きです。

  • 本の題は『塩の道』ですが

    Ⅰ塩の道

    Ⅱ日本人と食べ物

    Ⅲ暮らしの形と美   の3部から成る。


    塩を通して、また稲作を通して日本の成り立ちを読み解こうとする。


    塩は糖と違って、自分の体の中では生成できない。しかしながら、

    塩は循環機能を保つためには必須のものだから、この塩を手に

    入れるために古くから交易が行われていた。その塩の道をたどり

    暮らしの変化を見つめてゆく。


    稲作は稲の作り方だけが流布したのではなく、家族、技術や高床式

    の家と一緒になって日本にやってきた。それが後々の日本の文化と

    なって定着してゆく。単に食べるだけの自給ではなく、仕事をするた

    めに、その地で自給して生活をたてていくといったスタイルは古くから

    あったのではないでしょうか?といったところを探ってゆく。


    高床式の家はやがて、障子や畳といったものを生み出してゆく。生活

    様式は変化してゆくとともに、日本独特の美も生まれてゆく。


    もう一度、長い歴史の間に生み出されてきた独自の文化を再評価しよ

    うではありませんか?

  • 「塩の道」「日本人と食べもの」「暮らしの形と美」
    文献だけでなくフィールドワークで得た情報が、リアルに立ち上がってくる。

    塩は必要不可欠なものだから、山の民は灰(麻を白くする)と交換したとか、牛を使って運ぶと道草を餌にできるし、ついでに向こうで牛も売れる(馬は管理が厳しかった)とか、当時の生活が垣間見れておもしろい。
    また、塩の摂取の仕方も現実的で興味深かった。塩イワシは必ず焼く(煮たら塩が散る)し貴重品だから四日かけて食べる、わざとニガリのある悪い塩を買って分離させ豆腐作りに使う、塩が不足すると新陳代謝が悪くなって吹き出物が出たり目が悪くなる、等々。
    動物も塩を欲するから、野宿をする場合は必ず火をたく(そうしないと翌朝牛が獣に喰われている)、小便を壺にためたり立ち小便をするとオオカミが舐めに来るから駄目、という話に驚いた。

    わらじは消耗品で三日に1つ破れるから一年に百足は作らなければならない、ということさえ実感としてわかなくなってしまった今、こういう生活に密着した記録は非常に貴重なものだと感じた。

  • 【つぶやきブックレビュー】駄洒落から脱出。今日は「塩の日」だそうです。http://www.stat.go.jp/naruhodo/c3d0111.htm

  • 人間にとって不可欠な「塩」を手に入れるため、昔の日本人がどのような手段を取っていたかが紹介されています。中でも、山の中に住む人々が塩を手に入れるため、木を伐って川に流し、河口まで行ってその材木を拾って焼いて塩を取っていたというのは衝撃でした。そこまでの苦労をしないと塩を手に入れられなかったというのがすごいなと。
    これ以外にも、日本での製塩方法がいくつか紹介されていて、その辺の雑学も楽しいです。

    著者によると、塩の道はかつては牛が踏み固めた道であり、道草が牛によって食われた道であるとされています。つまり、その先に必ず何かがあると確定している道であり、旅人はそれを頼りに道を進んでいったことになります。その意味でも、塩が通る道は非常に重要だったことが分かります。

    この本では、塩以外にもサツマイモの安定供給によって江戸時代の人口が急増し、様々な職業が増えていったことや、畳が発明されたことで座ったまま生活をするようになり、食事が膳になってそこから幕の内弁当が作られるようになったことなどが紹介されています。塩の道以外のテーマについてはあまり詳しくないですが、面白い情報がいくつも入っている本です。

  • 明治時代の日本人の暮らしとは隔世の感がある。

    本書は昭和50年代に書かれている。
    日本全国を訪ね歩き調査するときに話を聞いた地元の長老はまだ明治生まれが健在であった。

    現在では戦前の話を聞くことすら難しいだろう。
    そういった意味で、すでにかつての日本の姿を新たに見つけ出すのは不可能だ。
    昔の日本の暮らしが知りたければ書物に聞くしかない。


    本書では「塩の道」「日本人と食べもの」「蔵氏の形と美」の三点が収録されている。

    海からしか採ることが出来ない塩を山村の住民はどのようにして確保していたのか。

    木を切り川に流し、それを海辺で回収し自ら塩を浜辺で炊いていた。
    それが瀬戸内海産の塩が海運で全国に運ばれるようになってからは、中から外の流れが外から中への流れに変わる。
    陸船を呼ばれた牛の隊列が日本全国に塩を運んでいた。


    失われた日本の姿は書物の中にしか残っていないのだ。

  • 親父の本棚から持ってきた本。

    「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」の3作が収録されています。
    いずれも日本人の生活レベルの文化を読み解くお話。

    ・塩の生産法と販売ルート
     塩の生産方法の伝播と販売ルートに関する丁寧な記述が面白い。
     塩は生活に欠かせないもの。今では手に入れる苦労なんてほとんどなく、著者曰く「意識することもない」が、歴史上塩を生産し、手に入れることには多くの工夫と労力が割かれてきた。とんでもなく足を使ったであろう渾身の研究ですね。

    ・戦乱と食料生産
     食料を生産する人口と、戦う人口はまったく区別されてきたのが日本の歴史。
     戦国時代にあっても民衆はなるべく戦乱に巻き込まれないようにすることが重要事であり、
     ゲリラ戦は一般的ではなかった。
     ⇒自然の植物食料が非常に豊富だったこととはどういう関係があるのか?

    ・「軟文化」と「硬文化」
     日本は軟らかい物質を巧みに利用する軟文化であった。とくに生活を支えていたのが「わら」
     草鞋をはじめとしたわら文化は日本の大きな特色。3日に1回は履きつぶしてしまう草鞋は非常に大量に必要になるものであり、子ども時代からわら細工を覚える必要があった。また、この軟文化の特色は刃物をほとんど使わずに多くのものを作ること。わらだけでなく竹細工も同じ。これを各家庭、個人それぞれが身に付けることが生活上必要だったことは日本人の器用さの背景にあった。
     ⇒他の日本的文化の発現にもこうした生活上の必要の説明が多くあると良かった。

    ・日本家屋と畳文化
     まっすぐな木を使用する住宅だったからこそふすまによって、間取りを自由に変更できる形式が発達した。また、畳も部屋を自由に使える空間にした。

    民俗学の本、だけどそれほど小難しいことが書いてあるわけではないです。
    日本の歴史読み物として非常に面白い本です。

  • 昔の日本で、塩をどのように作り、運んでいたかを民俗学者が語る。内陸の村民が伐った木を川に流して、その木を海岸の村民が薪にして海水を煮詰めて塩を作っていたとか、馬よりも細い道を歩ける牛の背を使って塩を運んでいたとか、まったく知らない話が具体的に説明されていて面白かった。塩自体の神がいない説明が興味深い。

  • 20131223 講演会のまとめのため、読みやすい。日本人とは?ということを考えるきっかけになりそうな本。日本人として大事な事は何か、考えさせられる。

  • 塩と塩味が好きなので読んでみたのだが、次から次へと、日本の文化や生活に関する謎が明らかになって「ほほー」「へぇー」「はー」と感じ入る。
    日本人の生活習慣や風習で、なんでかなーと思うことや、疑うこともなく行っている行為について掘り下げるとこんな歴史があったのかと知ることができた。

    岩手の牛、牛のすごさ、これまた知らなかったよ。未明の地と思われていた東北・北海道が、大昔から日本経済を支えていたのである。

  • 宮本常一晩年の話がたり。日本人とは何か?というかそれを育てた型やあり方についての深遠膨大な知識。韓国人がどうのという前に、自らの民族史を読み返しても損は無いですは。

  • 専売制であった塩について、知りたいなと思い購入。専売制時代のお話はほとんどありませんでしたが、興味深い内容がたくさんあった。

    3部構成で、「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」からなる。

    日本は、内陸に塩井なるものや岩塩などを存在しなかったため、海岸で塩を造作りそれを内陸まで輸送していた。その輸送する方法や輸送に生業とする者の話、そして輸送には馬よりも牛が使われ、牛の伝播についても書かれていた。

    第2部の「日本人と食べ物」辺ではトリビア的な知識が多く得られた。

    世界でも類がないこととして、日本は過去二千年はどの間に人口がずっと漸増してきている。異民族が大挙して侵攻してきたことがないのが大きな原因。

    また、大規模餓死がないことも原因の一つ。戦国時代に100年も戦争が続いて、みんなが餓死しなかったのは、戦争している人と、食べ物を作っている人たちが別であったことが餓死を防いだ。

    これも世界敵に珍しいことだが、ゲリラ戦が行われたことがない。戦争する者と食べ物を作る者が分かれているためゲリラ戦も行われない。ゲリラ戦とは民衆も参加して行われることがおこってくるものらしい。

    保存食なるものも紹介されていたが、記述量が少なく消化不良な感じ。発酵に関して興味がわいてきたので、別で読む必要あり。

    民俗学者が書いた本。科学者が書く本とやっぱり違いますね。これはこれでおもしろかった。

  • 研究者ではなく世間師といわれる宮本常一がフィールドワークでつかんだ史観。

  • 「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」という3つのテーマについての講演をもとにした本。
    表題の「塩の道」がやはり興味深い。今でこそ専売制も崩れいろいろな銘柄の塩を好き勝手に使えるが、歴史にあっては貴重かつ不可欠なものとして生活・経済と歩みを共にしてきたことがわかる。
    柔らかい語り口ですんなり読めるいい本だった。

  • うらカバー
     宮本常一、最晩年の講演
      「塩の道」 「日本人と食べ物」 「暮らしの形と美」。
     日本人の生きる姿を庶民の中に求めて村から村へと歩きつづけた著者の膨大な見聞と体験が中心になっている。
     日本文化の基層にあるものは一色でなく、 いくつかの系譜を異にするものの複合と重なりであるという独自の史観が随所に読みとれ、 宮本民俗学の体系を知る格好の手引き書といえよう。

  • 「塩の道」「日本人と食べもの」「暮らしの形と美」

  • 最初、塩がどうやって作られ、どう運ばれていったのかが説明されるが、後半は、どんどん塩とかけ離れていく。塩を基点に、日本人の底にあるものを探っていく感じが面白い。

  • 柳田国男や折口信夫はそれぞれに独特な、文学的な語り口で、晦渋なところがある。日本民俗学の古典的著者としては、この宮本常一がいちばん易しく、すっと入っていけるのではないだろうか。
    巻末の解説に明記されていないが、ここに収められた3編とも、講演の記録と思われ、いっそう平易な文章が読める。
    柔軟な思考で、さまざまな観点から庶民の文化現象のルーツをさぐっていく手法は、歴史学とはときに交わるようでいて、軌を一にしない。この「庶民」へのまなざしはウェットでもドライでもないが、たぶん優しいものだろう。
    「われわれの目の見えないところで大きな生産と文化の波が、そのような形で揺れ動き、その上層に、記録に残っている今日の歴史があるというわけです。これはとりもなおさず、じつは国民のわれわれが国全体を支えていたのだということをご記憶いただきたいのです。」(P60)
    しかしここでいう「われわれ」とは誰なのか?と問い始めると難問に突き当たってしまう。「庶民」とは誰なのか? それらのゲシュタルトは、実在する個々の(無数の)個体をいかに包括し、あるいは捨象しているのか?・・・しかしこういう難問はとりあえず後回しにしておこう。

    最近はグローバル化によって世界中どの国も同じなどと言う人が増えた。しかしそれはたぶん表面の一角にすぎない。日本は今でも、民俗学的に描かれるところの古き日本の遺伝を引いている。たぶん300年後も、日本は日本であるだろう、と思っている。
    ヴィム・ヴェンダースの「東京画」という映画で、監督は小津安二郎への畏敬の念を抱き、小津映画における東京は、現在(1980年代)も何らかの形で残っているのか? と問いかけた。その回答は、映画の中では明確にコメントされていなかったが、私は小津映画に映し出されたものも、現在の日本に残っていると考えている。姿形はかわっていても、それは通時的に、どこかでつながっている。

    この「つながり」の線を発見してゆく旅、それが民俗学の本を読む際の興奮を呼び覚ます。

  • いいですね。宮本常一の文体は常に市井の人のそばにありて読んでて平和な気持ちになります。
    本書は塩を手に入れるための庶民の生きる術、生活の術、そこから作り出された社会の構造を描いています。
    それにしても、上流の村人が薪を流して海辺の村人が塩を焼くくだりは、人の交流と富の交換が昔から自然発生的に機能してきたことに感銘を受けます。

  • 日々の暮らしの中に ひっそりと息づいている 大事なことが
    腑に落ちる・・・村から村へと歩き続けた宮本常一さんの見聞と体験が
    ぎっしりつまっています。
    「日本人と食べもの」「暮らしの形と美」とあわせて3作が薄い文庫本におさめられています。目からうろこ、のエピソードもたくさんあって、海外への旅のお供にも おすすめ。

    p.77 すべての道が海につながる

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