ふるさとの生活 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061587618

作品紹介・あらすじ

著者は若き日の小学教師の経験を通し、ふるさとに関する知識や理解を深めることが、子どもの人間形成にとっていかに大切であるかを生涯にわたって主張した。本書は日本人の生活の歴史を子どもたちに伝えるため、戦中戦後の約10年間、日本各地歩きながら村の成り立ちや暮よし、古い習俗や子どもを中心とした年中行事等を丹念に掘りおこして、これを詳細にまとめた貴重な記録である。民俗調査のありかたを教示して話題を呼んだ好著。

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    のっけからののけぞるような驚きがある.柳田国男の美しい序文に続き,第一章は「ほろびた村」からはじまる.いわば村の失敗事例から筆をはじめ(*02),村の成立から発展で筆を措いている.それは世界の創造を物語るような叙事詩でもあり,その意味では神話の構造を本書は有している.
    文庫版の解説(1986年,山崎禅雄)にあるように「子どものよみ物として書かれた」ことは本当に「明らか」だろうか.柳田の序文の意図や,宮本の本文が「平易な語り口調の文章」であるからといって,本当に子ども向けなのかどうか,疑うつもりで本書に接してみるのもよいだろう.柳田も宮本もこれが子どもに向けて書いたことを直接には言及していない.
    本書が編まれた1950年当時の国民の情況に配慮して読んでみるのは有効だろう.戦中に教育をスポイルされ,村もふるさとも次代の担い手を失いかけた(失った?)当時の国民が本書から浮かび上がる.ところどころで著者は村における神社のあり方に言及している.そこには戦前の思想の支柱にもなりえた近代神道に対する著者のスタンスをも示している.
    以上の事情をふまえると創世記としての「ふるさとの生活」の側面が見えてくるかもしれない.

    (02)
    ほろんだ村が失敗であったのかどうかという問題も留保されてよいだろう.動的な人間の活動を描いた本書において,村はトライのプロセスであって,そのうちのいくつかのエラーは必然でもある.著者は,古い伝統的な村を支点とした静的なパースペクティブはまったくというぐらい拒否している.そこにある移動や交易や挑戦を村の種子や栄養として肯定的にとらえている.また,ハレの行事として類型化される民俗を,「休みの日」というカテゴリーで捉えなおしたのは卓見であり,旅をし,動き続けた著者が,休みをどのように考えたかの端緒をうかがいしることができる.

  • 宮本常一さんの撮られた
    「写真」に各地方での「洗濯物」が
    けっこうある

    その土地の人が
    どんなものを着ておられるのか
    その家族がどんな構成なのか
    どんな暮らしをしておられるのかが
    見えてくる
    と おっしゃっている

    何気ない日常の中にある
    衣・食・住を
    ていねいに「歩いて見る」ことによって
    わたしたち日本人がよりどころとしてきた
    わたしたちのアイデンティティーを
    考えさせてもらえる
    一冊です

    本書は また
    この国の 若い人たちにへ
    という 常一さんの意識もあり
    易しい言葉で綴られているのも
    うれしい

  • 今となっては遠い昔の話の記録。大半の日本人はこうやってつつましく生きていたんですね。

  • 1986年(底本1973年)刊行。村(ムラ)の形成と衰亡(飢饉、山崩れ、津波)、そこで暮らす人々の営み、例えば、休日(信仰上の意味)、人の移動、食生活といった一般庶民の生活史を叙述。

  • う〜〜ん・・・なんて思いながら読んでいたら、どうやら子供向けに書かれた本だそうです。
    なので、総論的で深堀りはあまりありません。
    民俗学への入門としては良いのでしょうが、大人には少し物足りないかも。

  • [ 内容 ]
    著者は若き日の小学教師の経験を通し、ふるさとに関する知識や理解を深めることが、子どもの人間形成にとっていかに大切であるかを生涯にわたって主張した。
    本書は日本人の生活の歴史を子どもたちに伝えるため、戦中戦後の約10年間、日本各地歩きながら村の成り立ちや暮よし、古い習俗や子どもを中心とした年中行事等を丹念に掘りおこして、これを詳細にまとめた貴重な記録である。
    民俗調査のありかたを教示して話題を呼んだ好著。

    [ 目次 ]
    1 ほろびた村
    2 人々の移動
    3 今の村のおこり
    4 村のなりたち
    5 暮らしのたて方
    6 休みの日
    7 ひらけゆく村

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 自給自足的な生活を成立させるための、自然に獲得された生活の知恵

  • 土地に歴史あり。想像がふくらむ。
    個人の幸不幸を越えた、人々の営みを感じる。

  • 執筆当時は新進の民俗学者であった宮本が主に小学生を対象としてふるさとの生活史とくらしの成り立ち方を描いた読み物。子供向けということもありひらがなが多く、現代の大人には少し読みづらいところもあるが、書かれていることは正に「(当時の)生活のための教科書」といっていいのではないだろうか。
    なぜ同じ島の中でも集落によって漁のやり方が異なるのか?なぜ祭りはいつも月の半ばに行うことになっているのか?身近な疑問点から出発してそれらの背後にある「理由」を子供にもわかりやすく解説し、民俗学という学問が「科学」の所産であることを印象付ける一冊。

  • 子供向けに書かれた本で、表現は極めて平易、漢字も少ない。しかし内容は実に豊富であり、宮本民俗学の「ムラ」世界を一望できる多彩さを持っている。
    柳田国男が序文で「話の数を並べすぎたかもしれないが・・・」と書いたとおり、膨大な知見が繰り広げられていて、じっくり読めば、大人が読んでも凄く楽しめる。
    しかし当時まだ残っていたこれらの「民俗」は、北海道はアイヌ文化を除けば後発であり、後で各地からの移民が入り乱れたために、あまりストレートには伝わっていない。本州でも、東京はおろか、ちょっとした地方都市でさえ、現在残っている民俗の名残は極めてかすかになっているだろう。けれどもその「かすかな徴」が不意にあらわれてくるのを見るのはとても嬉しくなる。
    そのようなスタンス、昔の風習の痕跡を発見し、それを追ってみようという気持ちを子供に(あるいは大人にも)持たせることに成功している本だ。

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著者プロフィール

1907年(明治40)~1981年(昭和56)。山口県周防大島に生まれる。柳田國男の「旅と伝説」を手にしたことがきっかけとなり、柳田國男、澁澤敬三という生涯の師に出会い、民俗学者への道を歩み始める。1939年(昭和14)、澁澤の主宰するアチック・ミューゼアムの所員となり、五七歳で武蔵野美術大学に奉職するまで、在野の民俗学者として日本の津々浦々を歩き、離島や地方の農山漁村の生活を記録に残すと共に村々の生活向上に尽力した。1953年(昭和28)、全国離島振興協議会結成とともに無給事務局長に就任して以降、1981年1月に73歳で没するまで、全国の離島振興運動の指導者として運動の先頭に立ちつづけた。また、1966年(昭和41)に日本観光文化研究所を設立、後進の育成にも努めた。「忘れられた日本人」(岩波文庫)、「宮本常一著作集」(未來社)、「宮本常一離島論集」(みずのわ出版)他、多数の著作を遺した。宮本の遺品、著作・蔵書、写真類は遺族から山口県東和町(現周防大島町)に寄贈され、宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)が所蔵している。

「2022年 『ふるさとを憶う 宮本常一ふるさと選書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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