影の現象学 (講談社学術文庫)

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著者 : 河合隼雄
  • 講談社 (1987年12月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588110

影の現象学 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「現象学」というタイトルがついているけれど、河合さんの専門であるユング等の世界の話を「影」という観点から考える論考集で、やはり心理学にカテゴライズされるでしょうか。「現象学」というタイトルはあとがきで河合さんが触れてますが、出版社の要請でやむなくつけたのだとか。

    そんな事情もある本ですが、心理学というよりは、文学論としても読めます。中に例えとして引かれる本は、シャミッソーとかホフマンというような岩波の赤帯に入っていそうな本たちで、そのことも個人的には好みでした。『影の現象学』の中で例として引かれる小説は、それらに通低するメッセージをしっかりとご自分の観点でとらえた河合さんによるまじりけのない印象が入っている、と感じられ、自説を強調するために、その例として(小説からしたら)いやいや引っ張ってこられた、というような仕上がりになっているような雰囲気はありません。そのため、これらもまた内容を確認してみたくなります。特に自身興味深かったのはマーク・トウェインの『不思議な少年』の読み解き。『不思議な少年』というのは、明るい作風と思われがちなトウェインからすると、確かに「不思議な」位置づけの作品だなあ、とは思っていたので、人間の影の部分で説明しようとする流れは、素直に腑に落ちます。

    4章、5章が特に興味深く、個人的には、人間は「影の部分」と上手く折り合いをつけていくことが大事なのではないか、というメッセージを読み取りました。「日本人とは…」という言い方はあまり好きではないのですが、光の部分と影の部分、というような人間の多面性、という観点から「日本人」というイメージが浮き彫りになることがあるのかもしれない、と、かすかにですが、思ったこともとどめておきたいと思います。

    確かに「影」をめぐる物語には魅力的なものが多い!

  • 人間なら誰もが持っている「影」について述べられた本です。他の著作との重複箇所はありますが、興味深い内容でした。

  • ホフマン。「白い影」の投影問題。イブホワイトの統合について。ユングの幼児の頃の夢、元型的な恐怖、皮と裸の肉とでできたおそろしい高さの「人食い」。永遠の少年の元型、急速な上昇と下降の反復。中世のヨーロッパでの「愚者の祭り」、道化の重要性、それ自身自己充足的であるため両性具有的である、完璧な統一へのカウンターバランス効果。道化の分類、ドライ、スライ、ビターフール、愚鈍、悪賢さ、辛辣、順に風刺の度合いが濃くなっていき笑いを失っていく。単層構造においては笑いの余地がなくなり、王に対して道化は悪としてしか機能できない。呪的逃走。

  • 近所の市民図書館で放出されていたのでお持ち帰りした。

    「影」とは何か。
    それは、「私」の生きられなかった半面である。

    ユングとか精神分析とか小難しいことや、神話やら古典やら文学的素養についてはちんぷんかんぷんだったが、自分の精神状態と照らし合わせた時、この本は気付きの宝庫となった。



    創作を志す方は一読されたし。
    あー、『ゲド戦記』読みたくなってきた。

  • 2014年37冊目。

    「影」の存在の恐ろしい面ばかりに囚われている人は必読だと思う。

    世界的・歴史的に「影」はどのように扱われてきたのか、というそもそも論から丁寧に始まり、
    心理学的に「自我」に対して「無意識」に潜む「影」の正確をもの凄く分かりやすく解説する。
    病的な症例から見られる「影」、そして神話や文学作品の中に見られる「影」の具体例が豊富かつ的確に示されてゆき、
    「影」に潜む創造性を手にする可能性を示してくれる。
    (もちろん、「影」との接触の危険性も十分に論じながら)

    この本のおかげで、自分の中でいくつかの扉が開いたのを感じた。
    何度も戻ってきたい素晴らしい名著。

  • 2005.4~7 4章 影の逆説 5章 影との対決 が面白かった記憶があってぱらぱらとめくっていたら、マークトウェインの話をこの章でしている。

    …『デミアン』が出てきたのはこの本ではなかったのかな?
    河合さんの『デミアン』の話はすごく印象に残っていて本を買ったんだけれども。

  • 白い影という言葉が興味深かった。周りへの過剰な期待も自分の影の一面だと捉えることもできるんだなぁ。自分にもそういう時がある。こういう状態に陥っちゃったときはしんどいよね。

    飛行機でトリックスターのくだりを読んでいるとき、ちょうど目の前のテレビで外国版どっきりみたいな番組をやってて面白かった。そこで思いついたけど、こういう社会にちょっとしたイタズラをして笑いを起こすことや、アートの働きっていうのは、トリックスターの働きもかなりあるんじゃないかと思った。

  • 心理学は、それを利用する者の思考・視野を拡大させる武器である。我々は、絶え間ない現象の総体としての世界を受け止め、物・心両方の認識と行為による経験を重ねて、老いていく。ユング派の著者がフロイトのエロス主義を乗り越える形で展開された、ユングの心の哲学を紹介したのが本書である。影というモチーフを使い、幽冥・顕在の二元的対立、心が含みうる葛藤・闘争の解釈を加えていく。まず、私としては漠然とした靄として想像した心のイメージが、視覚的に理解しやすい構造を明示した説明のおかげで、ハッキリした形となって掴めるようになった。ユングにしても、その思想は一つの仮説であり、読者にとっては、知覚の冒険のとっかかりを与えられているに過ぎず、本書は、完全なる証明は出来ない「心」に対する興味を掻き立てると云う意味で、心理学の啓蒙の書だと思われる。心は、信念や倫理観、人格などに跨がる領域である。この書によって、思う・考える私という存在を、見つめ直す機会を与えられるだろう。認識の力の冒険は、肉体的な暴力よりも、広く深くおそろしい。心理学の理解には、ある程度の忍耐性が必要であると明記しておく。

  • ユング分析心理学の中核である〈影〉概念について日本人はこの本で学べることをよろこばねばならない。
    いままでグダグダと考え続けてきたこと、ポスト・モダンの相対性の問題とか、組織を動かす個人を超えた力だとか、創造性にかかわる意識と無意識などなど、ユング&河合先生にはすべて説明されてしまう。
    それが面白くないという贅沢に倒錯した読書だ。
    影との対話、そして西洋と東洋を考えるために引かれたヴァン・デル・ポストの物語(『戦場のメリークリスマス』の原作)は感動ものである。

  • 文学作品を読み解く上で、参考になるところも多い。卒論書く前に読めばよかったな~と後悔しました。

    あと、第四章、特にトリックスターの箇所にどうしようもないインスピレーションを得た。笑
    どうしても、ちょっぴり厨二心が疼いちゃいます。

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影の現象学 (講談社学術文庫)の作品紹介

影はすべての人間にあり、ときに大きく、ときに小さく濃淡の度合を変化させながら付き従ってくる。それは、「もう1人の私」ともいうべき意識下の自分と見ることができる。影である無意識は、しばしば意識を裏切る。自我の意図する方向とは逆に作用し、自我との厳しい対決をせまる。心の影の自覚は、自分自身にとってのみならず、人間関係の上でもきわめて重要であり、国際交流の激しくなってきた今日においてはますます必要である。

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