日本神話と古代国家 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061589285

作品紹介・あらすじ

神話の条件として著者は、「神々の物語が、一部の人の創作でなく広く民衆に支持され、宗教性と呪術性をもつこと」をあげる。『記・紀』編纂の過程で、また明治以後の歴史教育のなかで、日本神話はどのような潤色が加えられたか。天孫降臨の話やヤマトタケル伝説、三種の神宝などの具体例をもとに、綿密な文献学的方法による研究を進め、古代国家の歴史と形成に果たした神話の実体を明らかにした労作。

感想・レビュー・書評

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  • 我が国の社会史は天皇家の歴史と我々含む人民の歴史の交差である。という事をひしひしと感じる内容だった。故に古事記日本書紀についても天皇家サイドでの見立てと人民サイドの見立てがありそのいずれもが、利用され利用する関係の相互で成り立っていたのだと感じた。
    また本書を読む事で、鵜呑み思い込みで判断を行わず、自ら見聞きし感じ判断する必要のある時代の到来を改めて意識し直すことができ良かった。
    人間の目は前についている。
    前進あるのみなり◎

  • 古事記と日本書紀の作為性を検証する内容で、難解さはないですが日本の古代史入門というよりは記紀とその関連を一通りかじった後の復習に向いている本だと思います。根拠の弱い説もありますが、史料の少ない古代史では仕方のないことですし、現在では一般的な考え方として定着しているものがほとんどなのでそれは構わないのですが、ところにより著者個人の政治思想が強く出ていて、読者をそちらの方向へ誘導している感があります。個人の信条は自由ですが、この手の本にそういうのはあまり必要だとは思わないのでそこは少し我慢して欲しかったです。

  • 高校時代の本を整理。名著を発掘したので持っていくことに。

  • ある特定の意図ににより編纂される史書を解釈する方法はビジネスにも役に立つ。

  • 文章が読みやすく、論じたい内容が理解しやすい。「神話」の語の定義と所謂「日本神話」。

  • 神話は「主に民衆が中心となって信仰した神々の話」と定義づけた上で、日本の記・紀は朝廷の上流階級・知識人によって作られたから、厳密には違うんじゃないの?という話です。
    著者は津田史学の立場に立って、論述しています。
    天皇制を権威付けるために、地方の神話を取り込んだりなどして、日本神話は叙述されたと述べています。

  • 古事記・日本書紀から読み解く古代史。古代史の入門書としても親しみやすい本で、とても気に入っています。

    面白いと思った点・納得した点

    ●古代天皇の和風おくりなから推察される、「イリ」王朝「ワケ」王朝などの古代王朝の変遷
    いまだに万世一系を信じてる人がいるようですが、この本に載ってるおくりな一覧を見れば、つぎはぎが一目瞭然!
    それにしても、なんで「万世一系」だと「すごーい、尊ーい」って思う人がいるんだろうか。池田晶子さんのソクラテスだったら、さしずめこう言うだろう。「何代もつづいた家系、っていうのは、何百年も生きた亀と似たようなもので、珍しい、珍重すべきだ、とは思うけど、尊敬すべきだ、とは思わないねえ。」


    ●直系男児による天皇相続という制度が、かなり新しいものであるという指摘
    古代王朝では、王位は兄弟相続的なものが一般的だったであろうと指摘している。
    『大化改新 : 六四五年六月の宮廷革命』(中公新書・遠山美都男著)によれば、大化改新前後の政治状況ですら、一定の年齢層グループの皇族集団から天皇が選出されていた、という。(いわゆる「世代内相続」で、他にも多くの学者が指摘している)
    ますます、男児直系というのは古くからの制度ではない、ということが納得できる。
    考えてみると、古代は寿命も短かっただろうし、戦争や暗殺の危機が一杯あったろうから、自分の子供が成人するまで王位に居続けるのは難しかったはず。兄弟や、近しい年齢の親族間での王位継承は、そういうリスクを回避する上でも非常に有効だっただろう。

    ●神武東征がかなりフィクションであること
    最近の学者の中では神武天皇の東征を歴史上の事実に基づくものと主張する動きもあるようだが・・・。百歩ゆずっても、九州方面から関西方面へ勢力を伸ばしてきた豪族が、古代において存在したかもしれないが、古事記に描かれてるようにはぜったい起こらなかったろう、という指摘は納得できる。「核となる事実」をどのように見積もるかは、結構問題だ。直木氏は、まったくゼロとはしていないが、限りなくまゆつばで、古事記・日本書紀成立時の情勢を色濃く反映しているという。

  • 古事記・日本書紀を予備知識なしに読むと、
    神話と史実の境目や史実の中でもいろいろな学説が交錯していて往々にして頭が混乱してくる。
    この本は、そのへんについて緻密にかつ丁寧に分析されていて、非常に参考になる。後半は、津田左右吉の古代史学に対しての考察を展開。

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著者プロフィール

1919年、神戸市生まれ。大阪市立大学教授を経て名誉教授。大阪文化財協会評議員などを務める。大阪文化賞受賞。著書多数。

「1997年 『なにわ塾第66巻 古代史の真実を探して』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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