日本の近代化と社会変動―テュービンゲン講義 (講談社学術文庫)

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著者 : 富永健一
  • 講談社 (1990年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061589520

日本の近代化と社会変動―テュービンゲン講義 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 著者自身の近代化理論に基づいて、日本社会の近代化のプロセスをたどっている。

    テンニースは、「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ」という言葉で近代化を特徴づけたが、彼の視野は西ヨーロッパのみに限られており、非西洋社会における近代化に対する考慮は払われていない。これに対してウェーバーが東洋社会に深い注意を払っていたことは、『宗教社会学論文集』における儒教と道教、あるいはヒンドゥー教と仏教についての議論からうかがうことができる。だが、プロテスタンティズムの倫理が近代化において果たした役割を重視する彼の理論では、近代化は西洋に固有の事態として捉えられている。確かにウェーバーの時代には、西洋以外の社会で近代化を実現した国はなかった。西洋からの文化を受け入れることで近代化に成功した日本も、当時はまだようやく産業化の初期段階に到達したにすぎなかった。だが今や、日本以外の国々もしだいに近代化を果たしつつある。こうした状況を受けて、非西洋社会における近代化をも説明するような、より包括的な近代化理論が求められている。

    これまで日本の近代化については、単線的発展論か日本特殊論という2つの見方が提出されている。だが著者は、近代化を(1) 経済的側面(産業化)、(2) 政治的側面(民主化)、(3) 社会的・文化的側面(自由・平等・合理主義の実現)に分けた上で、西洋社会の近代化と日本の近代化との違いを明らかにすることで、単線的発展論にも日本特殊論にも与しない説明をおこなう。ルネサンス、市民革命、産業革命を順次達成していった西洋においては、社会的・文化的側面の近代化が先行し、ついで政治的側面の近代化が実現され、最後に経済的側面の近代化が達成された。これに対して日本では、上からの近代化によって経済的側面の産業化は比較的容易に実現されたが、政治的側面の近代化の歩みは遅く、文化的・社会的側面の近代化はなかなか進んでいない。

    日本の近代化の特殊性を「イエ社会」などの日本特有の仕組みに求める文化的本質主義に陥ることなく、日本の近代化と西洋の近代化の違いを説明する、たいへん優れた論考だと思う。

  • 経済だけにこだわらず、社会学や多方面から日本の近代化を記した良著。日頃から、「やはりそうだったか。」と思わせる記述が多い。

    日本は明治維新で近代化を成し遂げたとするが、その精神は「和魂洋才」というように精神としては非近代的なものであったこと。
    また昭和維新など資本主義に対する敵意は、民衆の間にもあったこと(とはいえ暴力に依る解決は正当化され得ないだろうが。また一部の左翼政党は軍部と結託していたのもある意味納得できるかもしれない。)。
    またいわゆる「日本的経営」は、第一次大戦と第二次大戦の間にあらわれたこと。これは労働運動の高揚や公共などが重なったことが、要因である。
    戦後のいわゆる高度成長は、戦前までは「国家のため」であったが、それ以後は「自分が豊かになるため」という目的にすげ替えられ、それが要因となったこと。

    またこの近代化理論は、マックス・ヴェーバーの理論が随所に現れ、一概な「経済史たる側面」に釘を指しているし、マルクスの理論は一面的であることを示す。彼のいう「上部構造の反作用性」は、日本では顕著に現れているであろう。

  • ●構成
    Ⅰ 近代化理論と日本社会
    Ⅱ 日本の近代化
    Ⅲ 日本の社会的近代化と社会構造変動
    --
     現在は先進諸国として自他ともに認めている日本であるが、その近代化は明治維新後になされたとする見方が一般に少なくない。
     本書は、この日本の近代化という事象がいつどのように達成されたのかについて、社会学の手法を用いて、理論的枠組みを通して歴史を分析することにより詳述する。
     まず、表題にある「近代化」と「社会変動」、さらには「近代」と「社会」と「変動」の語の意味するところについて厳密に定義づける。その上で、これまで様々な社会学者によって提示されてきた様々な近代化理論が日本の近代化の解明について適合できるか否かを一つ一つ考察する。そして、近代化の先駆者である西洋諸国から近代化の伝播が生じることで、非西洋後発国の近代化が成されること、近代化は「産業的近代化」・「政治的近代化」・「社会的-文化的近代化」の各サブシステム毎になされること、なかでも産業的近代化がもっとも達成しやすく社会的-文化的近代化がもっとも達成しやすいこと、また一般に近代化は、産業的近代化が「上から」(=政府など)なされることに対して政治的近代化及び社会-文化的近代化は「下から」(=民衆など)なされることを示す。
     この近代化理論に基づき、3つのサブシステムの観点からから日本の各時代の史実を分析し、産業的近代化については明治維新以降に「上から」始まったが、政治的近代化は第二次大戦終結後に、また社会的-文化的近代に至っては高度成長期以後に、本来ありえないはずの「上から」達成されるという、西洋諸国とは異なる形で近代化が成し遂げられたと結論付ける。
     理論的な、丁寧で厳密な記述であり、気軽に読める本ではないが、腰をすえて一言一句大切に読めば十分理解できる内容である。また「歴史学は過去を通じて現代を理解する学問」であることを、社会学の手法で明快に示している好著である。

  • \105

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日本の近代化と社会変動―テュービンゲン講義 (講談社学術文庫)の作品紹介

本書は、第1部で近代化論の視点を日本社会論に適用する場合の基本的な考え方を述べ、第2部では徳川時代から現代までの日本の近代化過程を分析的に扱い、第3部では社会の固有領域たる5つの構造類型をとりあげ、社会変動の歴史過程を、社会学の構造‐機能理論の考えにしたがいながら分析している。日本の近代化の歴史を社会学理論とかさねあわせたこれまであまり類例のない、画期的な書き下ろし

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