レトリック感覚 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061590298

感想・レビュー・書評

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  •  レトリック-言葉の文彩(あや)について、実際の小説の一部をなど参考にしながら、表現のもたらす意味やその役割について考察していく本である。この実例が非常に分かりやすく、軽い気持ちで手に取った人にも納得させてしまうような説明を繰り広げてくれる。加えて、著者の気持ちが伝わってくる軽やかな説明口調が心地よい。

     直喩は、共通認識を確認、隠喩は相手にゲーム性を求めるものである。ゆえに、小説などでは読者はそのゲーム性を楽しんでいるのだ。換喩は、対象の一部をズームして表現すること、提喩は並列・直列(または、および~)の事である。
     誇張法は、文字通り大げさに表現することである。ここでは、相手に間違いを伝えていることになるか否かを議論している点がある。個人的には、大げさな表現を使うことで、相手も誇張を理解するので、嘘ではないと考える。
     列叙法は、言葉を重ねることで対象を表現すること列挙法と徐々に文章を長くしていく漸層法がある。個人的には、列徐放の使い方によって、イメージがダイナミックに変動していく特徴があって好きだが、一つ誤ればただ淡々とした文章にもなってしまう懸念が考えられる。
     緩叙法は、~ではない。と肯定できないが、一つの事柄に決定できない時に使われる表現である。政治家の答弁などで多様されている様に思う。

     これらの表現を日常に意識的に組み込むのは、難しいように感じる。ただ、知識として持っておくだけで、日常の景色の見方に変化をつけることができるのではないだろうか。

  • もう20年以上前、国文学部の大学生だった頃、大学院生に薦められて読んだ本を再読。

    当たり前に使っている言葉や何気なく読んでいる文章に潜むレトリックを紐解く。

    言われてみれば納得だけど、普段なかなかそうは思い至らない視点。
    専門書寄りの内容ながら、難しすぎない。

    読むこと以上に書くことに役立つ内容だと思う。

  • お友達が読んでいて面白そうだったので手に取りました。アリストテレスによって弁論術、詩学として集成され、近代ヨーロッパに受け継がれたレトリックは言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であったが、その後、消滅してしまう。著者はレトリックが「新しい創造的認識のメカニズムの探求であった」と再認識し、ことばのあやとして、直喩、隠喩、換喩、提喩、誇張法、列叙法、緩叙法に分類し、様々な文学作品から引用をしながら解説。普段、無意識に使ったり、読んだりしている中に多くのレトリックが使われているのを知って興味深く思いました。そしてレトリックが言葉に、文章に活き活きとした豊かな表情を与えてることも改めて知り、言語の多彩な有り様を感じました。

  • 「レトリック」=「詭弁術」と結びつけて理解していたが、それは単に自らの言説を飾り立てるための方法のことではなかった。この世界に出来するあらゆる現象を、限られた言語で表現しようとする際、どうすればより効果的に他者に伝えることができるかという言語表現法のことなのである。

  •  ヨーロッパの伝統的な表現作法、演説の話法、文章の書き方。そこから解説は始まる。佐藤信夫という哲学者が、ひょいと差し出して、ぼくだけではない、多くの人が目からうろこを落とした。
     国語の先生とかしたいと思っている学生さんには是非お読みいただきたい、古びない名著。

  • レトリックは元来、表現の説得性を追求する技法および芸術性を追求する技法としてのみ重要視されてきた。それゆえ脚色を嫌う現代の科学的合理主義のもとで、レトリックは無意味かむしろ害悪なものとして葬られてしまった。しかし、それはレトリックの価値を大きく見誤っていると著者は嘆く。〈本当は、人を言い負かすためだけではなく、ことばを飾るためでもなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのに。〉感覚や印象をありのままに表現し伝達するための技術として、レトリックに新たな側面から光を当てる意欲的な良書。

    「言語の弾力性」という言葉が印象的。言語が確かな質感を持つ生き物のように思えてくる。言語形成の大部分が新たなレトリック表現の創造と定着そのものだということや、レトリックの構造が人間の認識の仕方と密接に繋がっているという指摘は知的にとても面白かった。レトリックという実用的技術を追求していくと、ときに哲学に行き当たるというのも興味深い。とても満足。

  • レトリック、修辞というのは近年の学校教育だと国語の中でほんの少し触れる程度か。
    そんな修辞学のテキストの一部、といった感じ。
    語り口調でたまにセルフツッコミを入れたりすらしているラフな文体。
    読み易いしためになるので、一読することを勧める。

    比喩がメインで、それ以外には列叙法と緩叙法が挙げられている。
    比喩って学校だと直喩と隠喩くらいの区分しかやらなかった気がするけど、そこに換喩や提喩といった、あまり耳慣れないものが追加されている。
    因みに換喩は赤ずきんちゃんのことを「赤ずきん」で置き換えて表現する手法(人間としての赤ずきんちゃんは別に頭巾に似てはいない)、提喩は「雪」を「白いもの」といった様に、広く、或いは狭く言い換えることなどを言う。

    印象深かったのは、直喩と隠喩の序列についての話。
    直喩はわかりきったことを言い過ぎるし、隠喩の方がスマートだから隠喩の方が優れている、といった言に対する反論で、「どちらでも対応できる例文」の場合、隠喩でもそれが示すものが明らかだから隠喩が適当な例になっているに過ぎない。というものである。
    つまり自ずから文がどちらを使うか言っている、ということだ。

    続編として『レトリック認識』がある。
    取り敢えず今回はここまでにするが、恐らくいずれ読む。

  • これは単なるレトリック事例集ではない。言語の背景にある認識の妙に触れるための一冊。

  • 20150223読了。
    生き生きとした文は、様々なレトリックに彩られている。
    レトリックとは直喩、隠喩、換喩、提喩などの比喩表現。上手く使えば洗練された文になるが、狙いすぎると野暮な文になる。
    魅力ある文とは狙っていないように見えて凝りに凝った文なのかもしれない。

  • TwitterやBlogでかんたんに言葉を書き伝えることが出来る時代だからこそ、ちょっと小洒落た言葉のしくみを知っておくとなお楽しくなる。
    そんな本。古くなることのない良書。

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