自然哲学序説: 人間と自然 (講談社学術文庫 1067)

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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061590670

作品紹介・あらすじ

自然の本質を探究し、生命の意味を問う。

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  • 自然を私たちの認識の対象と捉える自然科学に対して、自然を私たちの生命の営みそのものとして、あるいは生命の営みの場所として捉える「自然哲学」の復権を語っている。

    現代の哲学者の中で「自然哲学」と呼ぶべき思索をおこなった者と言えば、バシュラールやメルロ=ポンティの名前が思い浮かぶ。後期ハイデガーも、ソクラテス以前の哲学者による「自然」についての思索を手がかりに、「四方界」についての議論を展開している。また、そうしたハイデガーの思索を継承する宗教哲学的自然哲学の試みもある。

    これに対して著者の議論は、少なくともそのアプローチに関して言うならば、哲学的人間学に近いと言えるように思う。たとえば「夜」について著者は、昼の認識は視覚的であるのに対して夜の認識は聴覚的であり、明晰ではないが生命の律動を直接的に知らせてくれると述べている。このほか、「大地」「水と生」「火と光」「森林」などについて、太古以来の人類と自然との関わりの中から、それらの人間学的な意義を明らかにしようとしているように読める。

    上で触れた後期ハイデガーの思索を基準に取るとき、著者の議論の人間主義的な偏りが問題になるのではないかという気がする。著者は西洋哲学に広く通じている碩学なので、できることならば歴史的アプローチに基づく議論を聞きたかった。

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著者プロフィール

1922年東京に生まれる。東京大学文学部哲学科卒業。パリ大学、ヴュルツブルク大学講師を経て、東京大学名誉教授、聖トマス大学客員教授。哲学美学比較研究国際センター所長、国際形而上学会会長、国際美学会終身委員、エコエティカ国際学会会長。1996年より1999年まで哲学国際研究所(IIP、パリ)所長。著書『同一性の自己塑性』(東京大学出版会、1971)、『美の位相と芸術』(東京大学出版会、1971)、『東西の哲学』(TBSブリタニカ、1988)『エコエティカ』(講談社学術文庫、1990)、『知の光を求めて』(中央公論新社、2000)、『愛について』(中公文庫、2001)、『ダンテ『神曲』講義』(第25回マルコ・ポーロ賞受賞、みすず書房、2002、改訂普及版2004)。編著に『講座・美学』全5巻(東京大学出版会、1984-85)などがある。

「2017年 『ダンテ『神曲』講義 改訂普及版【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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