ケインズ (講談社学術文庫)

  • 31人登録
  • 3.62評価
    • (3)
    • (2)
    • (8)
    • (0)
    • (0)
  • 3レビュー
著者 : 伊東光晴
  • 講談社 (1993年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061591059

ケインズ (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  • ケインズの経済や思考法が分かりやすく書いてあって、読みやすかった。
    ケインズの良いところは、大掛かりな哲学や経済思想を構築したりするんじゃなくて、その時々の経済に対する適切な処方箋を書いて、状況に合わなくなれば、すぐにそれを捨て去って、また新しい対策を練っていくという、現実主義なところ。

  • ケインズは一般理論を書くにあたって見たものは1920年代のイギリスに過ぎなかった。イギリスを頂点をする経済体制は崩れていくにも拘らず、イギリスは三つの階級に分かれていたとみていた。すなわちロンドンシティに集まり海外投資を行う「投資家階級」、企業・工場を運営する「企業家階級」、そして「労働者階級」である。19世紀ならば植民地への投資(例えば鉄道)は、イギリスの需要となったが、当時はもはや海外投資=アメリカへの需要となり、イギリスの需要とはならず、ポンド安を生み輸入品の高騰が企業家・労働者階級への負担となる。第一次世界大戦以後では国内の資金を海外に流出させることなく、国内産業への投資がなされるならば対外競争力が生まれるというのがケインズの時論であった。

    新古典派経済学は縦軸に価格、横軸に需要量・供給量を取り、財市場・労働市場・金融市場の三つの市場を基にパイの最適配分を分析するのであって大きさを分析するのではない。これはリカード体系を代表とし、セー法則を暗黙の間に組み込んだ理論であった。しかし、ケインズは古典派理論を間違ったものとしては考えず、現実と大きく異なった特殊な状況下におかれたときに成立する理論としてとらえた。
    新古典派経済学では均衡点付近においては新興産業・衰退産業の下で解雇・新規雇用が生まれる。それは経済においては至って普通であり、これらを”摩擦的失業”と呼び、ケインズはこれ自体を問題視しなかった。なぜならすぐに雇用されると考えたからである。
    自発的失業はより高い賃金を求めて発生する失業である。自然に存在する失業率を越えてくると労働市場に圧力が生じ、それが社会問題となる。これをケインズは中止したのである。これに対してケインズは職業紹介所など充実、労働環境の充実、賃金財産業における労働の物的限界生産力の向上(物理的生産力が向上すれば賃金財が安くなり、実質賃金が低下することで労働市場がシフトし、雇用が増す。ただし、社会全体ではなく部分的にという意味である)を挙げた。

    ケインズが問題視したのは摩擦的失業でも自発的失業でもない、”非自発的失業”である。古典派では大量失業の原因を労働者が高すぎる賃金にあり、これを引き下げることによって雇用問題は解決できると求めたが、大量失業者があふれている状況下にあって労働者が求めるのは”実質賃金”ではなく”貨幣賃金”であると見たのである。なるほど、我々は物価の変動を加味して賃金を考えない。あくまでも表面上の賃金を見ていることからもそのように言えるであろう。また古典派経済学では物価水準も労働者が決められるようになるが、現実では労働者が決められるのは貨幣賃金だけであり、物価水準は労使関係の範囲外であると説いたのである。新古典派理論では労働市場を二つの曲線で雇用量・実質賃金を決定しようとしているが、実質賃金は前述の通り労使間で決められる問題ではなく、物価水準と貨幣賃金が決まらなければならないのである。
    古典派経済学ではMV=PTというフィッシャー方程式をとる。PT(物価水準と取引量)財の取引総額と支払われた貨幣の額は等しく、同じ貨幣が何度も回転するからMV(貨幣量と流通速度)と等しくなる、という貨幣数量説をとっていたのである。ここから物価水準P=(V/T)Mで示されるが、これは貨幣数量に依存するものであるということになる。つまり貨幣においては限界効用逓減の法則は当てはまらないことを前提としているのである。
    貨幣賃金の切り下げは物価水準に影響を与えないという新古典派体系に対して、ケインズは完全雇用の場合にのみ適用されると主張した。
    古典派がセー法則を採用した理由は、貨幣を「交換の仲立ち」「価格を測る尺度」においてのみ成立するのであり、これこそまさにMV=PTのフィッシャーの貨幣数量説となる。しかし... 続きを読む

全3件中 1 - 3件を表示

ケインズ (講談社学術文庫)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

ケインズ (講談社学術文庫)の作品紹介

1930年代の世界恐慌下、大量失業を救うために低金利政策と積極的な公共投資を主張して、伝統的理論を一新したケインズ。その経済思想と彼の代表的学説『雇用・利用および貨幣の一般理論』の骨格を、豊富な図表を用いて平易に説き、ケインズ経済学の真髄を論究。欧米など先進各国の経済運営に画期的変革をもたらし、いま再び世界的な長期不況の下で注目される大経済学者の理論と影響力を描く力作。

ケインズ (講談社学術文庫)はこんな本です

ツイートする