現代倫理学入門 (講談社学術文庫)

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著者 : 加藤尚武
  • 講談社 (1997年2月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061592674

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現代倫理学入門 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  • 倫理学については不勉強だったので入門書として読んだ。難しい問題を手際よくわかりやすくまとめていると思う。読むきっかけになったのは昨今の人工知能ブーム。その課題、そして可能性を倫理学的な切り口で考えてみたいと思ったから。倫理学でもまだ明確に答えを出せていない問題に対して人工知能がさきに答えを出す時が近づいている。それは無意識かもしれないという怖さを感じる。倫理学はもっと介入すべきだと思う。

  • 倫理学の中の“規範倫理学”と言われる分野について平易に書かれています。倫理学の代表的な立場である功利主義やカントの義務論、ロールズの正義論について説明されており、この著作の内容をある程度理解するだけでも規範倫理学の基礎的な知識を身につけることができると思います。

  • サンデル氏の討論型授業のような形式で倫理的な問題を考えることは楽しい。


    しかし、心理学もそうだが学問になると非常に取っつきにくくなる。


    この本もその例で、サンデルの著作から関心を持った人の興味レベルだと弾き飛ばされる危険性が高い。実際私も、100ページを超えるくらいになってパンク状態であった。



    この本の正しい読み方は、目次を読んで本当に微妙な問題だなと思った章を選んで読むことである。



    最初から全部を読み通そうなんて思っちゃあいけない。また、自分の中で既に結論がでてしまうお題は見なくてもよろしい。


    そのくらい自分の意識を絞って読まなければ、歴史の教科書レベルの退屈さに溺れること請け合いである。

  • サンデル、ロールズあたりがちんぷんかんぷんな方には此ぐらいから始めるほうがよいのではないかと思います。全体の見取り図がわし掴みにできます。
    元々放送大学の教材だったかと思いますので、教科書的紹介風になりますが、壺は押さえていると思います。
    ただし、げしげしと原典(邦訳含め)を読んでいる人間には、少し物足りないでしょうか。
    いずれにしても教科書としては良くできておりますし、対話型授業の教材としての活用も容易かと思います。

  • 明晰性の高いものと低いものとの差が大き過ぎるように感じた。同時に、文章表現力の低さも散見された。しかしながら、扱われるケースに少なからず触れた経験があれば行間を埋めることは容易だろう。
    また、本書は入門書というより問題集に近いように思う。ひとつひとつの問題に疑問を持った際にヒントを得るくらいの気持ちで読むべき。あくまで考えるための道筋を提示するにとどまる本書に「入門書」としての過度な期待はしない方が良いかもしれない。

  • 読んでいくうちに、結局どうだっていいじゃねぇかと思った。
    でも、得るものはあったと思う。
    試行してみて違うと言えるようになるのは進歩だと思う。

  • 何が正しい判断なのか。公平とは何かを考えさせられる。

  • [ 内容 ]
    本書の狙いは、昔の話をすることではない。
    現代世界の倫理構造を明らかにして、21世紀の文化の骨格を示すこと、21世紀で有効となるような倫理学の輪郭を描き出すことである。

    [ 目次 ]
    人を助けるために嘘をつくことは許されるか
    10人の命を救うために1人の人を殺すことは許されるか
    10人のエイズ患者に対して特効薬が1人分しかない時、誰に渡すか
    エゴイズムに基づく行為はすべて道徳に反するか
    どうすれば幸福の計算ができるか
    判断能力の判断は誰がするか
    「…である」から「…べかである」を導き出すことはできないか
    正義の原理は純粋な形式で決まるのか、共同の利益で決まるのか
    思いやりだけで道徳の原則ができるか
    正直者が損をすることはどうしたら防げるか〔ほか〕

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 内容は「最大多数の最大幸福」を原則とする功利主義に批判的検討を加えつつその代案を探っていくというもの。
    章ごとに「10人の命を救うために1人の人を殺すことは許されるか」などのテーマが設定されており読みやすい。ただ、必ずしもテーマの問いに答えが与えられるわけではない。判断は読者に半分委ねられている。

    「囚人のジレンマ」が示唆するのは民主主義の欠陥である(個々人の欲望に従った選択は本人にも他人にも不利益をもたらす可能性がある)と指摘しているのは興味深い。が、本当にそうだろうか。囚人のジレンマの仮定に登場する囚人たちは互いにコミュニケーションを禁止されている。しかし現実社会の民衆は自由にコミュニケーションをとることができる。まして今はインターネットの時代である。みんなで何か重大な決定をする際には、十分な議論を尽くして合意を形成しておくことはできるはずだ(少なくとも論理的には可能だ)。現代人は社会から独立したアトムではないし、であるべきでもない。

    終わりに近い章では、「正義は時代や場所によって変わるもの」という相対主義のもっともらしい言説の矛盾を説いている。相対主義のレトリックは、過去の事件(戦争など)を評価するときに使いがちなので注意しなければならない。

  • 現代日本を代表する哲学者、加藤尚武先生の若かりし頃の一冊。
    まず初めに現代における倫理学が功利主義のもとでしか成り立たないと一刀両断する。ドイツ哲学やフランス哲学ではなく、現代の最先端はアメリカの哲学・倫理学にあると。カントを専攻している私としては反論したいところだが、社会契約から抜けきれない近代哲学は、確かに現代には適応しにくいのかもしれない。
    その後は現代における倫理学の必要なパターンを挙げて、一つ一つ考察していく。この段階が非常に楽しい。研究や勉強という枠を超えて楽しめる学術書だと思う。

  • 新書サイズながら常に問いかけられているような感覚で、非常に読みつかれた。しかし、その問いは自分にとって新鮮だったり懐かしかったりするものばかりで、新たな視野が身に付いたと思う。

  • 放送大学のテキストを編集したせいか、かなり硬い。倫理の説明に終始している。倫理学101問のように、カントが溺れる人を救うために飛び込んで、ソクラテスが枝を投げて寄越し、ルソーがただわめくだけ、というような面白いたとえはない。

  • 「10人の命を救うために1人の人を殺すことは許されるか」

    良識のある人は、この第2章の命題の議論の土俵に乗るべきではありません。
    サバイバル・ロッタリーという、この章で紹介されているたとえ話に違和感を感じるなら、その人は健全な精神のもち主だといえるでしょう。

    サバイバル・ロッタリーとは、空想実験上の架空の国で、この国では生存率を最大にすることが正義となります。
    すなわち、生存率の増大と死亡率の減少が善であり、死亡率の増大と生存率の減少が悪ということです。
    この国では、最大多数の最大生存を実現するために、くじで選ばれた一人の健康な人間から臓器を摘出し、十人の患者に移植することが認められています。

    この制度に違和感を覚えるのが普通で、そうであるならばこの章の中核が理解できていると考えてよいと思います。
    善悪を測るものさしは、最大多数の最大幸福という一つの原則ではないということです。
    この耳触りがよく魅力的な原則は、善悪の判断基準の重要な一つではありますが、それだけでは不健全な結論を導いてしまうということが、サバイバル・ロッタリーのたとえ話で明確になります。

  • マイケルサンデルが流行らずとも、こういった素敵な本があるのになとずっと思っていました。

  • 15章までをほぼ3章毎にあるテーマ別に区分けされた形で倫理について語られています。加藤氏のこの本を知ったのは、マイケルサンデル氏が日本には倫理学のすばらしい本があるといったのは、この本だったこと。手にしてよんでみると、いままで呼んだ倫理学の本とはちょっと違う感覚がした。また、この本の中の紹介で、のちに読了した唐木順三氏の著作の話もでてくる。何度も読み返してよみたい一冊である。
    ミルとカントの倫理学の違いをあらためて知ることになりました。

  • 150
    生活科学の先生オススメ図書
    (哲学の先生も薦めていらっしゃったので、レポートの参考に)

  • 手ごろにまとまった倫理学の入門書。著者があとがきで、「どの章も論争の材料になるように書かれている」と記したように、テーマごとに興味あるものから読んでいくのが望ましいと思われる。

    そのテーマは次のとおり。

    1.人をたすけるために嘘をつくことは許されるか。

    2.10人の命をすくうために一人の人を殺すことは許されるか。

    3.10人のエイズ患者に対して特効薬が一人分しかない時、誰に渡すか。

    4.エゴイズムに基づく行為はすべて道徳に反するか。

    5.どうすれば幸福の計算ができるか。

    6.判断能力の判断は誰がするか。

    7.<…である>から<…べきである>を導き出すことはできないか。

    8.正義の原理は純粋な形式で決まるのか、共同の利益で決まるのか。

    9.思いやりだけで道徳の原則ができるか。

    10.正直者が損をすることはどうしたら防げるか。

    11.他人に迷惑をかけなければ何をしてもよいか。

    12.貧しい人を助けるのは豊かな人の義務であるか。

    13.現在の人間には未来の人間い対する義務があるか。

    14.正義は時代によって変わるか。

    15.科学の発達に限界を定めることができるか。

  • 倫理学は数式を使わない数学でしょう.命題の解答は複数あっても良いですが,解答に至るまでは緻密な論証が必要です.堅い議論と思う人もいるでしょうが,数式を使わないことと話題が具体的であるため,数学よりとっつきやすいかもしれません.
    ただし,あとがきに「(前略)現代の倫理学者が議論していることの中身に入って貰いたいという気持で書いた。何よりもまず、読み物として面白く通読できるようにと心がけた。」とあり,本書のタイトルにも入門とありますが,それをつけるほど難易度は低くないです.また,図表がないため論理展開を追いづらいところも散見されます.

  • 倫理学の概要をさらうにはちょうど良い量です。
    内容もわかりやすい。
    もともと課題のために買った本で時間に追われながら読みましたが、いま読み返すと興味深い事も書いてありました。

  • 現代の倫理学についての入門書。以下、理解の及ぶ範囲で要約を試みてみる。

    倫理的決定とは「AよりもBの方がよい」という判断を下すことである。
    現代倫理の主流はJ.S.ミル『自由論』に見られる功利主義的自由主義である。
    自由主義の5つの条件として、
    ①判断能力のある大人なら
    ②自分の生命、身体、財産などあらゆる【自分のもの】に関して
    ③他人に危害を及ぼさない限り
    ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも
    ⑤自己決定の権限を持つ
    が挙げられる。
    ただここから、実際上の様々な問題も提起されることになる。
    ①子ども、呆けた老人、障がい者にどこまで判断能力を認めるか
    ②どこまでが自分のものか。例えば自分の生命を自由に扱っていいのか。
    ③他者に危害を与えなければなにをやってもいいのか。
    ④愚行を行う権利を与えていいのか。
    ⑤個人は負荷なき自己か、負荷を負った自己か。

    一方カントは厳格な倫理を提示する。
    「君の格律が普遍的な立法の原理となるように行為しなさい」という定言命法だ。
    例えばある人が「約束を破る」と心に決めたとする。もし皆が同じように「約束を破る」と心に決めたとしたら(普遍化)、誰も約束をしなくなる。これでは最初に決めた格律と矛盾してしまう。よってこの格律は倫理的に間違いだということになる。

    しかし人間はカントの考えるような理性的な人間であるとは限らない。カント倫理学が最高線の倫理だとするならば(厳密にはさらにストア派の完全主義があるが)、功利主義は最低線の倫理を提示すると著者は述べる。

    「最大多数の最大幸福」を掲げる功利主義は「規制しなければならない最低限の行為に抑止効果を持つ最小限の刑罰」を与えることとする。こうすることで例えば、盗みをしただけで死刑になることはないし、違法駐輪は迷惑行為だが刑罰を貸すほどではない等の判断で人々の幸福度が最大になることを目指す。

    こうした数々の理論は一長一短があり、細かい所で対立している。そういった対立を、「人を助ける為に嘘をつくことは許されるか」「10人の命を救う為に1人を殺すことは許されるか」「現代の人間に未来の人間に対する義務があるか」など具体的な問を想定しつつ、分かりやすく紐解いてくれる。

  • 倫理学は、人が社会的存在として生きていく上での様々な問題につて、それをどのような規範に基づいて考え、解決していくかを考究する学問である。本書は現代社会にある多くの道徳的な問題やジレンマについて、多くの例を挙げながら解説している。

    本書の基になっているのは放送大学の教材として著されたものである。15章それぞれの内容は現代社会の倫理構造の解明を試みており、さらに最も現代的な問題を扱う生命倫理学、環境倫理学についても考察されている。
    第1章「人を助けるために嘘をつくことは許されるか」では、倫理主義であるカントの「誠実の義務は絶対的である」とういう主張を紹介し、我々には常に決断、比較、選好の機会があり、「より大いなる善」または「最小の悪」を選んだつもりになるが、誠実、正義、人命などに共通の尺度がない以上、実際は比較不可能なのであると述べる。
    第2章「10人の命を救うために1人の人を殺すことは許されるか」では、生存率最大の原則という単純な功利性の原理だけで生命の問題を扱うと、個人の生存権の絶対性が成り立たなくなることを示す。
    第3章「10人のエイズ患者に対して特効薬が1人分しかない…」では、「最大多数の最大幸福」こそ、あらゆる立法の原理であるとするベンサムとミルの「功利主義」について述べ、「最大幸福原理」と「平等原理」は調和しないことを示している。
    第6章「判断能力の判断は誰がするか」では、妊娠中絶、臓器移植、安楽死などの現代社会が直面する問題について、「人格の範囲を定める」事の困難さと生命倫理学の葛藤を述べている。著者は、バイオエシックス(生命倫理学)を日本に導入した主要人物である。
    第11章「他人に迷惑をかけなければ何をしてもよいか」では、最も現実的な倫理基準であるとされている「自由主義」の原則「①判断能力のある大人なら、②自分の生命、身体、財産に関して、③他人に危害を及ぼさない限り、④たとえその決定が当人に不利益な事でも、⑤自己決定権を持つ」という5つの条件と、その問題点が要約されている。また、人間を個体とみなす「自由主義」に対して、人間をどこかの共同体に帰属するものとみなす「共同体主義」の主張についても述べている。『これからの正義の話をしよう』の著作で人気のサンデルは代表的な共同体主義者の一人である。
    第13章「現代の人間には未来の人間に対する義務があるか」では、地球を守ることは、資源や環境に関して一方的な利害関係はあるが共時的相互関係はない未来の世代に対して現代の世代が負う責務であると断言している。
    それぞれの章で述べられている身近な問題とそれに対する倫理学的考察は、どれも大変興味深いものであり、読み物としても面白い。「倫理学」などと身構えずに読んでみて欲しい。

  • この本は、応用倫理学では有名な加藤尚武教授が放送大学のテキストとして書かれたものに、本人により加筆されたものである。テキストらしく、古典的な倫理学から応用倫理学までの重要な論点がざっと解説してある。

    語り口はやさしく、それぞれの論点が、簡潔ながらとても分かりやすく説明してある。カント、ヒューム、ロールズなどの考え方が端的に示されると共に、新しい論点である生命倫理学や環境倫理学についても触れられており、倫理学の鳥瞰図を示す形を取っている。

    また、この本は文庫サイズで、正味250ページを割るというボリュームから推察される通り、個々の論点の詳述に関しては当然期待すべくも無いだろう。分かりやすく鳥瞰図を示し、必要に応じ何を調べれば良いか、何が倫理学の論点として議論されてきたのかを学習者に伝えることができれば良いわけだ。

    その点、確実にこの本は目的を達成している。自由主義と共同体主義、愚行権についてなど、一般に倫理学の論点として語られるものはほぼ網羅してあり、次のステップに入ることがこの本を読むことによりとても容易になる。こういう書物は倫理学の分野には以外と無かったのである。

    また、それぞれの章(全15章)が「人を助けるために嘘をつくことは許されるか」のように、設問形式になっており、興味を喚起しやすいのも特徴だ。

    著者の結論はかなり唐突に示されることがあるが、気にすることはない。哲学系の世界では、そもそも結論は自分で考えるものだし、きちんと自分なりの結論を見いだすためにはにはもう少し詳しい本を読まなければならない。それはこの本の範疇を超える部分なのである。

  • 応用倫理学当代第一人者が、われわれ一般生活者のために、学の見識を保ちながら、わかりやすく書かれた本である。
    現代の倫理学で議論される原理的な問題と応用倫理学で取り扱われる内容を、明確に描き出したいという著者の思いが充分伝わっていると思う。

    松岡正剛風に言うと、何と行っても目次がいい。実に素晴らしい編集がなされている。「人を助けるために嘘は許されるか」とか、「どうすれば幸福の計算ができるか」、「現在の人間には未来の人間に対する義務があるか」など、目次を見たらその解を知りたくなる項目が何と15項目も並んでいるのである。いずれも「なるほどなぁ!」とうなずかされてばかりだった。

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