墨子 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061593190

作品紹介・あらすじ

春秋時代末期に墨子が創始し、戦国末まで儒家と思想家を二分する巨大勢力を誇った墨家の学団。自己と他者を等しく愛せと説く「兼愛」の教えや、侵略戦争を否定する「非攻」の思想を唱え独自の武装集団も保有したが、秦漢帝国成立期の激動の中で突如、その姿を消す。以後二千年を経て、近代中国の幕開けとともに脚光を浴びることになった墨家の思想の全容と消長の軌跡を、斯界の第一人者が懇切に説く。

感想・レビュー・書評

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  • 中国人の考え方を…ッて感じじゃナイな。
    中国古代思想の中でも異質。

    「非攻・兼愛」をはじめとした、素人の私が考えたって受け入れられなさそうな特異な思想。
    一時は儒家に匹敵する一大学団を築きながらも、秦代に急に姿を消し、以後絶学する、ッて。
    なんてドラマチック。
    ずっと気になる人だったので、読み終えて満足。

    感想。
    真摯に当時の現実に向き合った末の思想、という気はする。
    ただ、当時の考え方、風俗習慣からしたら、受け入れられなかっただろうなあ…。
    むしろ今の方が流行りそう。
    あと決定的に精神的な部分が欠けてる。と思う。
    なのに鬼神信仰のような宗教的なトコとのギャップが酷い。
    あ、『兼愛篇』の小タイトル「愛は地球を救う」に地味に笑った。 笑
    すごいタイトル…。

    余談ですが、中国では墨子のアニメがあるらしい。
    何をどうアニメにするんだ…?

  • 墨子の思想の十論について学べる本。中には理解し難いものもあったと思いつつも、当時の時代を想像しながら考えると、例えば、節葬や非楽といった考え方も合理的な考えなのではないか、と共感できることが多かった。
    また、特に有名な兼愛、非攻という考え方には共感を覚える。自己愛が強いがために、他者を犠牲にしてでも自分の利益をとってしまい、周りの人に対する秩序や規律を乱してしまう、それが結果、非合理的で犯罪を罪と考えない戦争を引き起こしてしまうことにつながってしまう。自己と他者を比較せずに愛するという兼愛論の考え方を大事にしたい。(墨子が言っている愛は、あくまで他者を犠牲にして自分の利益をとらないぐらいの段階に留まっているらしい。)

    精神的な面での考えがないのは気になるところ。

    墨子を読んでその思想だけでなく、当時の時代背景や学団員との関係、普及活動の変遷、孔子など他の思想家との違いをよく理解して読めると良いと感じる。

  • 関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB00086816

  • 群雄割拠の春秋戦国時代、どれだけの民衆が貧困に喘ぎ、そして無惨に死んだのだろうか。そんな時代に生きたからこそ、墨子の唱える「兼愛論」「非攻論」に尊さを感じる。彼はその時代の地獄を見たのだろう。彼にとって思想はあくまでも平和を確立するための手段である。彼の思想だけでその是非を論じるべきでない。彼の生き様こそ注目すべきだ。天下救済のため諸国を遊説し、また自ら武装集団を組織し、侵略戦争を防ぐため戦禍にその身を投じた。万民救済のため奔走し、理想と現実の狭間で思い悩む墨子の生涯、その偉大さを感じられる思想であった。

  • 墨子についてけっこうわかった!かもしれない。

  • 墨子の思想が解りやすく解説されている。

    原典は散逸してしまっており、
    この本は残っている部分の抄訳であるが、
    墨子が貧困や戦争と言った社会問題の解決を真剣に考え、
    思想家としての活動を行なっていた事が分かる。

    しかし、墨子の唱えた理想主義は、
    結局のところ欲深い人間の社会に合致せず、
    多くの人間にとっては都合の悪い考え方だった
    ということも浮かび上がってくる。
    そして著者が儒教を嫌いだということも。

  • 支配の思想
    徹底している

  • 20/6/12

    世間の混乱は互いに愛し合わないとの原因から発生している

    少量の黒色を見たときには黒と言い、多量の黒色を見たときには白だと言ったとすれば、白黒の判断がつかない人だと言うだろう。一人殺して罪となり、沢山殺せば英雄だなんておかしい。戦争はおかしい。

    自己と他者とを同時に愛し合い、互いに他者に利益を与え合う結果、必ず天から賞を受ける。

  • 中国の戦国時代に活躍した墨子という人物の書物です。博愛主義・侵略戦争の否定など当時の中国としてはきわめて先進的な思想を展開しました。最近、「墨攻」という物語が映画になりましたが、その原典はこの墨子です。代表的な内容の原文・訳文と解説文が載せられていて読みやすい本といえます。

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著者プロフィール

1946年, 仙台市生まれ. 東北大学名誉教授. 中国哲学専攻. 『黄老道の成立と展開』(創文社, 1992), 『孔子神話』(岩波書店, 97), 『孫子』(講談社学術文庫, 98), 『儒教 ルサンチマンの宗教』(平凡社新書, 99), 『古代中国の言語哲学』(岩波書店, 2003), 『戦国楚簡研究』(台湾・萬巻樓, 2004), 『諸子百家』(講談社学術文庫, 2004), 『古代中国の文明観──儒家・墨家・道家の論争』(岩波新書, 2005), 『図解雑学 諸子百家』(ナツメ社, 2007), 『古代中国の宇宙論』(岩波書店, 2008), 『上博楚簡與先秦思想』(台湾・萬巻樓, 2008)ほか.

「2016年 『『甲陽軍鑑』の悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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