- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061594401
作品紹介・あらすじ
著者はM・ウェーバーと並び称された経済史家である。ウェーバーが資本主義成立の要因をプロテスタンティズムの禁欲的倫理に求めたのに対し、著者は贅沢こそそのひとつと結論づけた。贅沢の背景には女性がいて、贅沢は姦通や蓄妾、売春と深く結びついていたというのである。かくて著者は断ずる。「非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は、資本主義を生み落とすことになった」と。
感想・レビュー・書評
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初期の資本主義経済の拡大に当たって、「贅沢」志向および、女性の社会的進出が重要な役割を果たしたとする説を展開したゾンバルトの本。Kindleで読んだ。
一見男尊女卑の社会態勢が根強いようでいて、実は女性の欲動が裏で社会を動かしており、男性はむしろ支配されているという、トルストイの『クロイツェル・ソナタ』を連想させる逆説であるが、ゾンバルトの主張は、よく読むと、「推測」でしかなくて根拠が弱いように思った。また、ゾンバルトは、上層階級の「贅沢」志向が資本主義の発展に強く作用したとする点において力強い説得力を示しているものの、その「贅沢」文化を支えた諸要素の「一つ」として、女性の地位の向上があったと言っているに過ぎない。
贅沢=奢侈すなわち過剰な消費は、ゾンバルトの生きた時代(本書は1922)より後に、20世紀後半からの高度資本主義(超消費社会)は、企業側がいかに消費者の欲望を喚起するか・消費者という獣的な集合体がいかに欲望を放出していくかという面を露骨に・野蛮に呈示していくのだが、その原型として初期資本主義の動向を振り返るという意味で本書を捉えると、なかなかに興味深いものがある。
論説に弱いところもあるが、資本主義というものを考える上で有益な本の一つであるとは言えるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
野心や華やかさを求める気持ちなどがら贅沢を発展させた。人を贅沢に向かわせる原動力に女性の存在があった。資本主義発展の要因に禁欲や勤勉ではなく、「感覚的な喜び」とするあたりが異色で魅力的だった。
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資本主義発展の原動力のひとつが奢侈、突き詰めていけば色欲であったとする考え。第四章にある「奢侈の一般的発展の傾向」が興味深い。
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浪費や散財を加速させるものはなにかというお話。
細かい内容はともかくどこかで見たことのある内容が書かれているから、自分はどの階層に属しているかはともかく今その尾に連なる歴史の上で生活をしているということだろう。 -
ゾンバルト 恋愛と贅沢と資本主義
贅沢消費から資本主義成立の現象を説明した本。
資本主義の成立を説明するために用いた人間モデルが ステイタスのために 贅沢をする貴族や王であり、経済学の人間モデル(経済合理性や効用最大化の行動をとる人間)より人間臭い。ただ この経済モデルでは、平均的な人物からかけ離れていて、現在の資本主義を説明できない
富裕者の贅沢消費が 労働者の労働機会となり、富裕者から労働者へお金が移転している経路から 資本主義が成立したことを説明しているが
王や貴族が贅沢をつくしていた 社会主義国家もあるはずなのに、資本主義が成立しなかった理由については論じていないし
富裕者の財産状況も上限があり、贅沢消費が終わったら資本主義がどうなるかも論じていないことから考えると
富裕者の贅沢消費と資本主義成立の因果関係は 限定的なのではないだろうか?
そもそも 十分満たされている 富裕者が 贅沢に 新たな需要を刺激されるだろうか -
資本主義の成立について。
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原題:Liebe, Luxus und Kapztalismus 1912
著者:Werner Sombart (1863-1941)
訳者:金森誠也 (1927-)
【書誌情報】
発売日:2000年08月09日
価格:本体1,180円(税別)
ISBN:978-4-06-159440-1
通巻番号:1440
判型:A6
頁数:368頁
シリーズ:講談社学術文庫
初出:1987年、論創社から刊行された同名の書を文庫化した。
著者はM・ウェーバーと並び称された経済史家である。ウェーバーが資本主義成立の要因をプロテスタンティズムの禁欲的倫理に求めたのに対し、著者は贅沢こそそのひとつと結論づけた。贅沢の背景には女性がいて、贅沢は姦通や蓄妾、売春と深く結びついていたというのである。かくて著者は断ずる。「非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は、資本主義を生み落とすことになった」と。
〈http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000151040〉
【目次】
訳者まえがき(二〇〇〇年五月 金森誠也) [003-005]
著者まえがき(一九一ニ年十一月十ニ日 リーゼンゲビルゲのミッテルシュライバーハウにて ヴェルナー・ゾンバルト) [006-007]
目次 [008-011]
第一章 新しい社会 015
一 宮廷 015
ニ 市民の富 021
三 新貴族 029
資料と文献 050
注 052
第ニ章 大都市 055
一 十六、七、八世紀の大都市 055
二 大都市の発生と内部構成 059
三 十八世紀の都市学説 080
資料と文献 086
注 087
第三章 愛の世俗化 090
一 恋愛における違法原則の勝利 090
ニ 高等娼婦 108
資料と文献 123
注 129
第四章 贅沢の展開 131
一 奢侈の概念と本質 131
ニ 王侯の宮廷 140
三 騎士と成り上り者の第二ラウンド 169
四 女の勝利 196
1 奢侈の一般的発展の傾向 196
(a) 屋内的になってゆく傾向/(b) 即物的になってゆく傾向/(c) 感性化、繊細化の傾向/(d) 圧縮される傾向
2 屋内の奢侈 202
(a) 飲食の奢侈/(b) 住居の奢侈
3 都会のなかの奢侈 220
(a) 劇場/(b) 一般向きミュージック・ホールならびにダンス・ホール/(c) 高級感レストラン/(d) ホテル/(e) 商店
資料と文献 229
注 232
第五章 奢侈からの資本主義 238
一 問題の正しいとらえ方と誤ったとらえ方 238
二 奢侈と商業 250
1 卸売業 250
2 小売業 268
三 奢侈と農業 281
1 ヨーロッパ 281
2 植民地 291
四 奢侈と工業 296
1 奢侈工業の意味 296
2 純粋な奢侈工業 302
(a) 絹織物工業/(b) レース工業/(c) 鏡の製造/(d) 陶器製造/(e) 各種の工業
3 混合せる工業 314
(a) 毛織物工業/(b) リネン工業/(c) 仕立業/(d) 皮革業/(e) 帽子製造/(f) 建築業/(g) 車工、経師屋、馬具工/(h) 指物師
4 奢侈消費の革命的な力 340
注 346
訳者あとがき(金森誠也) [355-361] -
<blockquote>*「非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は、資本主義を生み落とすことになった」</blockquote>
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ウェーバーにならぶドイツの経済学者による一冊。18-19世紀の風俗史としても秀逸といえる。
某関西圏の勘違いしっぱなしな市長が、大通りに居住用建物の建築許可を緩和するに当たり『社長の皆さんには、愛人を囲ってもらって当該市の景気回復に当てて頂きたい』みたいな話をしたのは、この御本でもお読みになられたからか。
経済の一側面、ということなんでしょうな。 -
世の中は、男が女性に高価な贈り物をしたり、贅沢をしないと、うまくいかなくなる。
中世の貴族たちの恋愛と贅沢三昧がなければ、資本主義は生まれなかった。 貴族が愛妾に貢いだり、豪華絢爛な宮廷生活、祝祭の贅沢があったから、音楽家や画家、馬具や装飾品の職人、大工などの市民が潤った。 最高の贅沢品だった香辛料や香水、医薬、染料、極上の絹、象牙、陶器などを求めたから、植民地貿易が発達した。
今の日本も、ステータスやゆとりを感じられる高級品をもっとつくって、海外で売らなければ。 新興国で安物を売ったり、日本へ逆輸入している場合ではない。いろんな意味で、恋愛と贅沢は的を得ている。