果てしなく美しい日本 (講談社学術文庫)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061595620

作品紹介・あらすじ

豊かな水と緑に満ちた山並み連なる美しい国、日本。来日間もない若き日の著者が、瑞々しい感覚で、日本とはどのような国かを論じ、母国の人々に紹介する。近代化による大変貌にもかかわらず依然として変わらない日本人の本質を見つめ、著しい美的趣向、豊かな感受性、比類のない多様性など日本文化の特性を刳り出す。日本への愛情溢れる日本論。

感想・レビュー・書評

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  • ドナルドキーンといえば三島由紀夫ら昭和日本の文豪との交流、東日本大震災後の帰化などが有名だが、これは1958年にアメリカで刊行された日本論である。
    さすがに昭和30年代の日本を描写しているため、現代(2017年5月)の私たちから見るとかなりの隔たりがあるように感じる。それは著者自身も感じているようで、学術文庫版序文(2002年)にも時代の変化を感じている旨書かれている。
    ただし、本書の主要部分を占める「生きている日本(living in japan)」の内容は、「文明人」アメリカ人から見た「野蛮人」日本人という意識が透けてみえるようで、いまいち首肯できない部分もあり、本書書名「果てしなく美しい日本」は著者自らが命名したそうだが、適切な題名だったのかどうか、若干疑問である。読んでいながら「うるせえバカ」と言いたい気分にもなった。第九章「楽しみの世界」で芸者遊びが取り上げられているが、まったくもってつまらなさそうで、なるほど著者は芸者遊びに全く意味を見出さない人なのだということが分かった。
    評者が触れた新しい情報は、第二部の「日葡辞書」と「日本文典」において、日葡辞書がなぜあれほどまでに引用されるのかという点。

  • 2011/8月
    外から見た日本を分野を絞らずに全体像を書いたら偏ってしまうのは当たり前。日本が好きで、細かい所まで見てるのはよく分かったが、、、ちょいと焦点が広すぎて偏ってるように思えてしまう

  • 日本の文化や文学、芸術の歴史やその質の高さについて、また日本という国や国民性について色々教えていただきました。
    キーン先生がいかに日本を愛し、日本についてものすごく研究されている事がわかります。
    この本が書かれた頃は日本人は外国と言えばアメリカみたいな時代だった様な気がします。戦後日本の良さを忘れ、むしろ恥ずかしがる様な日本人が多くいたであろう中、ずっと日本を愛し続けその魅力を伝えて続けてくれたキーン先生に感謝しても仕切れない気持ちになります。

  • 本書は3つの独立した箇所からなっています。第1部が「生きている日本」ということで本書の大半を占めていますが、1973年に日本語版が出版されたもので、もともとは外国人に日本を紹介する本でした。第2部、3部は分量が少ないが、これは比較的最近の日本での講演録です。

    このような外国人(キーンさんは日本に帰化されましたが)が書く日本ものとなると、表面的な記述であることが多いと思うのですが、キーン氏の本は不思議と深いです。「不思議と」というのはどういう事かというと、キーン氏は限られた紙面でかなり幅広いトピックを取り上げているので、日本人専門家でも浅い記述になりがちだと思うのですが、本書は読んでいると、不思議と深さを感じるのです。もちろんキーン氏の極めて深い経験・知識・洞察が背後にあって、字数は限られている中でもそれがにじみ出ているのだろうとは思うのですが、読み終わった後に、「かなり広い範囲についてカバーされていたな」という印象と同時に「深い」という印象も得られる本でした。

    個人的には日本に影響を及ぼした4つの信仰(神道、仏教、儒教、キリスト教)と文化の関係についての記述が面白かったです。本書でも指摘されているように、多くの日本人は無意識のうちにこの4つの影響を多かれ少なかれ受けているのですが、それを外部有識者に明示的に指摘されると、なるほどと思わされます。またキーン氏の良いところは(そして翻訳者の功績でもありますが)、日本人学者よりもむしろわかりやすい(読みやすい)ところでしょうか。日本人でこの手の専門家(大学教授)が同じテーマで本を書いたら、極めて読みづらい本になっているのだろうなと想像できます。
    第2部と3部の講演録は、第1部との重複記述もありますが、それはそれで記憶を確かにするのに役立ちますので良かったかと思いますし、あっという間に読めました。

  • 先年日本国籍を取得したアメリカの本文学研究者による1958年に書かれた日本の描写と
    世界の中の日本という主題の講演を合わせたもの
    60年前の風景なので時代ものかのような趣きあり
    変わっていたり変わっていなかったりで興味深い
    著者の姿勢は外からみた日本であり
    日本人にとってみれば特殊に捉え過ぎている感も受ける

  • ドナルド・キーン氏による、元々は外国人に向けて書かれた日本論。文学だけでなく、政治、宗教、習俗、教育など多岐に亘るトピックについて、慈愛の念豊かに論じている。

  • 日本人よりも日本を愛しているキーンさん。キーンさんは日本語を話せるのにこの本は訳者がいる。キーンさんも日本語の訳文に目を通しているはずで、少し難しそうな内容であるにも関わらず、分かりやすく美しい文章だった。

    日本人の思考、風習や慣習について宗教的・歴史的観点から丁寧に解説していて、外国人だから見える日本の面白さをユーモラスに書きつつも、全体に深い愛情や尊敬の心がこもっている。

    電車の中で少しずつ読み進めていると、自分が外国人になって車内の日本人をまじまじと観察しているような面白い気持ちになれた。また、純粋に知識を得られる本としても面白かったが、しばらく経つとその深遠な内容はすっかり忘れている自分がいた。

  • 外国人の目から見た日本人。神道、仏教、儒教、キリスト教の四つの信仰を持つ複雑な国。神社の祭では、日ごろひと気のない神社の境内も人々でいっぱいになる。ただ南無阿弥陀仏を唱して阿弥陀に祈願する他力本願の浄土宗。自力本願の禅宗。日本人にとって神道と仏教の二つを同時に信仰することはごく自然な成り行き。現世の神道と死後の仏教。儒教は宗教ではなく孝、忠、義理などを主張するものであった。

  • 著者の少し古くなった論文が多く、73年「生きている日本」93年「世界のなかの日本文化」99年「東洋と西洋」の3つの論文。今では完全な日本人になったように感じる著者ではありますが、特に初めの論文では「日本人の一生」など、少し古く実態は違うのではないかと思いました。「美しい」という表現でありながら、芸者や遊興などについての外国からの眼の生々しい表現には少し違和感がありました。その後、段々日本になじんで来られたということなのでしょうか?「4つの信仰」は同じ時期に書いていながら、今でもその通りだと思うのは、恐らく日本人の信仰の姿勢が大きく変化していないのかも知れません。一方、19世紀の後半に欧州でジャポニズムがブームになった背景などは非常に理解できるものがあります。外国人があまりにも清潔な日本家屋に驚き、当時は清潔な文化の発達した国、「クール・ジャパン」だったのでしょうね。

  • 外国人が外国人のために日本について書いた本の日本語訳。
    細部にわたる日本の歴史・文化について述べられていて、完全に講義とか授業を受けている感じ。
    当初期待していた、外国人の目から見た日本という切り口はほとんど述べられていなかった。
    しかし、外国人に改めて日本の歴史を教えてもらった感がいっぱい。
    とても勉強になりました。

    第2部、第3部は著者の講演を起こしたものなので、それなりに飽きずに、また、外国人から見た日本、という観点も少しあって良かった。

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著者プロフィール

1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学名誉教授。日本文学研究者、文芸評論家。2011年3月の東日本大震災後に日本永住・日本国籍取得を決意し、翌年3月に日本国籍を取得。主な著書に『百代の過客』『日本文学の歴史』(全十八巻)『明治天皇』『正岡子規』『ドナルド・キーン著作集』(全十五巻)など。また、古典の『徒然草』や『奥の細道』、近松門左衛門から現代作家の三島由紀夫や安部公房などの著作まで英訳書も多数。

「2014年 『日本の俳句はなぜ世界文学なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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