現代政治学入門 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061596047

作品紹介・あらすじ

政治学とは、社会において利害と価値をめぐって起きる紛争と、その紛争を調停する方法を探る学問である。それは現在の生活を改善するための、非常に有効な事柄を学ぶことにほかならない。政治は何をなしうるか。我々は政治に何をなしうるか。そして政治とは何か。現代人の基本教養・政治学の最良の入門書として英国で定評を得る一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、政治学の科目、政治学教育のさまざまな方法、学ぶにあたっての留意点を述べています。

    ■政治学の構成分野
      ・政治思想
      ・政治制度論
      ・関連する個別トピックス

    ■政治学のシラバス、読み方 ようは政治学の別名、いろいろな大学での政治学の呼び名
      ・政治学
      ・政治研究
      ・政府論
      ・政治科学
      ・政治理論
      ・政治制度論
      ・国際関係論
     ※政治学と同時に履修することが望ましいもの 経済学、歴史学

    ■政治学の本質
     ・現実主義と理想主義
      暴力・権力は政治の反面
      権威・尊敬が政治のもう一面
     ・生存と正義に先行する秩序
      統治と同意の二元性

    ■政治の起源
     ・古代ギリシア 
      プラトン、理想国家論 対話篇「国家」、「法律」
      アリストテレス ①人間は社会的動物、②社会とはさまざまな要素からなっている、③最善の政体は君主政、貴族政、民主政の3者の混合政体である
     ・古代ローマ 
      ローマ法 共和政ローマ
     ・中世キリスト教的伝統
      聖アウグスティヌス
      マキアヴェリ 君主的支配と共和的支配
     ・国家と市場
      マルクス主義 マルクス主義経済と自由主義経済は、コインの裏と表
      政治と経済は補完し合っている
     ・ヨーロッパの政治的伝統の二面性 ①保守的なもの、②ラジカルなもの 
     ・共和主義、自由主義

    ■近代代議制
     ・政党政治、政党と圧力団体
     ・全体主義
     ・議会は民衆の意見を代表するだけでなく、同意を調達する必要がある
     ・近代社会において、経済・社会政策は命令によって強制できるものではなく、あくまでも説得の上に納得させるものである
     ・政治と医学の類似性 与えられた課題(subject)ではなく、問題(problem)を研究せよ 結末で誤ることよりも、はじまりで誤ることのほうが多い

    ■政治思想の諸類型
     ・汝自身と同じように、汝の敵を知れ 
     ・自分が属する陣営について語る際には、その陣営に耳障りなこともあえて口にする頑固な潔癖さと客観性をもちあわせる
     ・私たちは、観察者であると同時に、批判者たらざるを得ない
     ・言葉の概念の混乱
      政治思想
      政治理論 証拠事実を経験的に観察収集してそれを理念のもつ意味解明へと結びつけたもの
      政治哲学 分析的であるか、実質的であるかのどちらからである
      政治理念 ①何が事実か、②何が事実と考えられているか、③何が事実であるべきかという3つの問いに対する探求である
      政治的意見 自分の意見に固執している ①証拠事実をもっていないか、証拠事実を重視していない ②自分の意見を整理しないままに自分が慣れ親しんでいる意見を発言している、一貫性に欠けている

    ■政治制度と政策研究
     ・政治制度とは、政治というビジネスを営むためのルールを定義しようとする試み
     ・制度というものは、すべて公式および非公式なルールの集合体にすぎない
     ・制度というものは、時の産物であって、伝統にもとづいた歴史的な実体である。だから急には変えられない
     ・どんな制度でも、基本となるルールの解釈や、再解釈をめぐっていくつかの再考が生じることとなる
     ・カール・マルクスいわく、「世界を変革したいと望むなら、まずそれを理解することである」
     ・制度と過程(システムアプローチ)を分離することなどできない
     ・行政学:政府行政機構と公共機関に関連する実務上の慣行、運用方法、法律、行政官に関する研究をいう
     ・政治それ自体は、生じてくる問題と紛争を処理するにあたっては、単にそれに反応し和解させるようにふるまえばそれでよい。
     ・同様に行政も既存のシステムに応えて、それを維持するだけでよい。
     ・すぐれた行政というものは、いわば、目にみえる必要がないのである。
     ・政策研究とは、政策の形成(政策作成)と、政策の実施の双方を対象範囲としている
     ・国際関係論 ①諸国家間の関係、②国際的な諸制度の性格、③2つの構成要素を結合すること

    目次

    序文
    第1章 政治学を学ぶ
    第2章 政治的活動の本性
    第3章 政治的生活の起源
    第4章 近代代議制の政治
    第5章 政治思想の諸類型
    第6章 政治制度
    第7章 理想的な組み合わせ
    訳者あとがき
    解説


    ISBN:9784061596047
    出版社:講談社
    判型:文庫
    ページ数:176ページ
    定価:880円(本体)
    発売日:2003年07月10日第1刷
    発売日:2005年09月20日第5刷

  • 政治学入門として定評のある本らしいが、これから政治学を学ぼうとする高校生に「響く」かと言えばやや疑問だ。政治学が何を対象にどんなアプローチで研究を行うのか、また隣接する学問分野とどういう関係にあるのかを大掴みに理解するには便利な本ではある。ただ一通り政治学を学んだ上でないと著者が本書にこめた意図を正確に掴みにくいのではないか。むしろ政治学を教える教師に向けて書かれた(話された)本と言った方がいい。

    評者は歴史や理念を重んじる傾向の強い大学の法学部で政治学を学び(本書が書かれた80年代後半)、理論と実証を重んじるアメリカの大学院で公共政策を学んだ(90年代前半)。今は実業の世界に身を置いているが、科学的装いのもとに説明モデルが「洗練」されていく一方のアメリカ政治学に対する著者のシニカルなスタンスには共感するところが多い。

    政治学が学問である以上普遍化を目指すのは当然であり理論を軽視すべきではない。だが理論を構成する概念をどれだけ細分化し精緻に練り上げたとしても、それが言葉である以上価値が紛れ込むのは避けられない。ましてや政治が価値の分配に関わる営為である以上、政治を研究するという行為自体に一定の規範的態度が要請される。その自覚を欠いた理論は研究者の価値観の押し付けになりかねないことを銘記すべきだ。自然科学のような実験ができない社会科学にとって比較は有効なツールだが、比較のための類型化の中に政治はいかにあるべきかという価値意識が含まれている。例えば「発展途上国」という類型があらゆる国が西洋的な発展をたどる(あるいはそれが望ましい)という見方を暗に想定しているように。

    であればこそ理論に埋め込まれた価値観やその母体となる理念、文化、歴史についての関心が政治学には不可欠なのだ。だから政治学は必然的に学際的な学問たらざるを得ない。評者は本書のメッセージをそう受け取った。いい意味でのディレッタント、或いはアマチュアリズムとも言うべきか、社会科学が専門分化していく中にあって、古き良きイギリスの伝統を感じさせる渋味のある一冊だ。

  •  本書は、英国における「政治学」の初学者へ向けた入門書である。

     本書の特徴は、訳者あとがき(p.179~)にもあるように、「政治学」について、アメリカ流の「政治科学」ではなく、英国流の「政治研究」に力点を置きながら平易な文章で説明している点にある。そのため、英国スタイルの政治学を知るための入門書としての側面もある。

     端的にいえば、本書は「政治学」という掴みどころのない学問について、読者がイメージ(相場観)を持つための一助となるだろう。

    ---
     なお、本学の図書館には新書版の蔵書がないため、図書館で借りる際は次の図書を参照のこと。
    バーナード・クリック『現代政治学入門』(新評論、1990年)、311//C92。
    https://opac.lib.niigata-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN0554646X?hit=4&caller=xc-search

  • 必要に迫られてではなく、教養のために手に取った一冊。テレビで見る政治のニュース以外に接して来なかった私にとっては正直難しかったです。入門の入門が必要です

  • 450円購入2013-01-10

  • 邦題の『現代政治学入門』でもよいが、原題の『What is Politics?』のほうが的確に内容を表している。
    「政治とは何か?」というよりは「政治学とは何か?」という内容である。
    本書はあくまでアメリカ式の「政治科学」ではなく、イギリス式の「政治研究」について述べているが、個人的にはこのイギリス式の方が親しみやすい。
    読者想定を大学の新入生としているが、政治学を学ぶとはどういうことなのか、どういうアプローチをしていくべきなのかということを様々な角度から説明してくれている。
    なので、手っ取り早く今の政治について知りたい人には向かない。
    本書でも述べているとおり政治学は、「方向性」をもったり、「プログラム性」をもった学問ではなく、例えば、「哲学」「理論」「歴史」「経済」等の多くの事象と相互関係にある学問かつそれを自由に放浪する学問だからであるということがよくわかる。
    これは丸山眞男が行っていた研究スタイルに近いというかほぼそのものであろう。
    初版が1990年と多少内容的に古い事柄もあるが、政治学入門書としては十二分に耐える作品だと思う。

  • 途中で断念。直訳調。

  • 日本の視点でなくイギリス視点の論説。
    イギリスの大学の教養レベルは非常に高いことがうかがえる。
    日本の政治学書籍を多読する方に新たな側面を示してくれる。

  • 本書は政治学の概論である。個人的にはものすごく勉強になったし、同時に政治学に対しての興味が増した。本書を読んで、政治学は社会科学の諸学問の中でも特に洞察が鋭い学問だなと感じた。これを足がかりに、もっと政治学を構成する各論について学んでいきたい。

  • 英国流の政治学のガイドブック。政治学とは何かということと、政治学の全体像を俯瞰する内容。政治学とは何かを知りたい人、政治学部に在学している学生はぜひオススメしたい。
    ただ、飽くまでもガイドブックであるので、内容に面白味はない。しかしながら、ここまで政治学の全体像をうまくまとめている本は少ないので、読む価値は十分ある。

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著者プロフィール

英国の政治学者:シェフィールド大学教授を経て,ロンドン大学名誉教授。ブレア政権時に,シティズンシップ教育に関する諮問委員会の委員長を務めた。この諮問委員会の報告書「シティズンシップのための教育と学校で民主主義を学ぶために」は,通称クリック・レポートと呼ばれている。邦訳に,『現代政治学の系譜-アメリカの政治科学』(時潮社),『デモクラシー』(岩波書店),『ジョージ・オーウェル-ひとつの生き方』(岩波書店)などがある。

「2012年 『社会を変える教育 Citizenship Education』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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