スペイン内戦: 政治と人間の未完のドラマ (講談社学術文庫 1606)

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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061596061

作品紹介・あらすじ

ファシズム台頭への不安、共産主義革命への期待の中、一九三六年、クーデターに端を発し、勃発した内戦。国家間の貪欲なエゴ。正義と人類愛に燃える若者たち。五十五ヵ国、四万人におよぶ海外からの大量の義勇兵。苛酷極まる闘いに、彼らはなぜ身を投じたのだろうか。義勇兵で結成されたスペイン国際旅団に視点を据え、世界を震撼させた人間と政治の壮大なドラマを描き出す。

感想・レビュー・書評

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  •  一昨日から昨日にかけて、取材で名古屋へ――。
     先週にも別件の取材で名古屋に行ったばかりだが、不思議とつづくときにはつづくものなのだ。

     行き帰りの新幹線で、川成洋著『スペイン内戦――政治と人間の未完のドラマ』(講談社学術文庫)、斉藤孝著『スペイン戦争――ファシズムと人民戦線』(中公文庫)を読了。
     仕事上の必要があってスペイン内戦(スペイン戦争)について調べているので、資料として。

     このうち『スペイン戦争』のほうは、元本が1966年刊の古い本。いま読むとさすがに古臭くて、スペイン内戦の概説書としては物足りない。
     著者は、本書の執筆時点ではスペインに行ったことがなかったそうだ。日本人の海外渡航がまだ珍しかった時代の書物なのである。その意味でも時代的制約を感じさせる。

     対照的に、もう1冊の『スペイン内戦』は取材・調査の厚みが感じられ、読み応えがある。スペイン史学者の著者は、スペイン内戦を義勇兵として戦った人々と交友を結び、彼らに直接インタビューも重ねたうえで本書を書いているのだ。

     スペイン内戦の概説書として優れているし、ジャック白井(日本人で唯一、スペイン内戦に義勇兵として参戦)ら、義勇兵たち個々に光を当てた人間ドラマとしても感動的だ。

     スペイン内戦というのは不思議な戦争で、戦争であるにもかかわらず、どこかロマンティックな物語性を帯びている。ヘミングウェイやアンドレ・マルローなどの世界的文化人たちが数多く参戦したし、多くの小説・映画などに描かれた。
     この『スペイン内戦』も、死んだ兵士を悼む詩などが随所に引用されていて、全体に文学的香気を感じさせる。

     とはいえ、内実を掘り下げてみれば、多くの戦争と同様、血なまぐさくドロドロした暗部が見えてくるのだが……。

     この『スペイン内戦』は、ロマンティックな表層と内実の暗部をともに過不足なく描いており、そのバランスのよさにおいても優れた書である。

  • スペインの内戦を勉強しようと思って買った本。
    時系列でスペイン内戦の流れ、各地で起こった戦闘について書いてある。
    こういう本って活字で読むと理解が大変。
    単に頭が悪いだけなんだけど・・・。

  • 共産主義が言葉の真の意味でイデオロギーであった時代の記録。反ファシズムを掲げ世界中から集まった義勇兵の、理想に燃えた、あるいは悲惨な顛末。

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著者プロフィール

かわなり よう 1942年生まれ。法政大学名誉教授。北海道大学文学部英文科卒業、東京都立大学大学院修士課程修了。社会学博士(一橋大学)。現代スペイン学会会長。ロンドン大学客員研究員、ケンブリッジ大学客員研究員、マドリード大学客員研究員を歴任。書評家。武道家(合気道6段、居合道4段、杖道3段)。著書等に『スペイン通史  シリーズコンパクトヒストリア』(丸善出版、2020年)、『スペイン内戦〈一九三六〜三九〉と現在』(川成洋、渡辺雅哉、久保隆 編、ぱる出版、2018年)、『英国スパイ物語  中公選書』(中央公論新社、2018年)、『イギリスの歴史を知るための50章  エリア・スタディーズ ヒストリー』(川成洋 編著、明石書店、2016年)、『スペイン文化事典』(川成洋、坂東省次 編、セルバンテス文化センター東京 編集協力、丸善出版、2011年)ほか多数。



「2021年 『英米文学、多彩な文学解釈への誘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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