経済学の歴史 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597006

作品紹介・あらすじ

『経済表』を考案したケネーはルイ十五世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る十二人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    文庫化された経済思想史の本。ちなみに、文章は(学術文庫にしては)読みやすい。

    ・カバー写真の人物:
    上段 ケインズ、マルクス、ミル
    中段 ケネー、スミス、シュンペーター
    下段 ガルブレイス


    【書誌情報】
     ISBN:978-4-06-159700-6
     判型/頁数:A6/400ページ
     底本:“本書は筑摩書房刊『経済学の歴史』(98年10月)を底本とした。”
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784061597006
    旧版→〈http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480867032/

    出版社PR
     スミス以降、経済学を築いた人と思想の全貌創始者のケネー、スミスからマルクスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の生涯と理論を解説。/『経済表』を考案したケネーはルイ15世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。

     “経済学の歴史を学ぶ理由の1つは、現代理論を盲信する危険性を防ぐことにあると思われる。例えば、スミスは、本来、絶妙なるバランス感覚の持ち主であり、決して極端な自由放任主義者ではなかったが、いつの間にか自由放任主義哲学の元祖として「自由至上主義者」たちに学問的にも政治的にも利用されるようになった。だが、それがわかるには、そもそもスミスが何を考えていたのか正確に知っておかなければならない。経済学史の効用の1つがここにある。”
     ―― 本書「プロローグ」より
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784061597006

    【簡易目次】
    なぜ経済学の歴史を学ぶのか 015
    第一章 フランソワ・ケネー ――「エコノミスト」の誕生 020
    第二章 アダム・スミス――資本主義の発見 051
    第三章 デイヴィッド・リカード――古典派経済学の完成 088
    第四章 ジョン・ステュアート・ミル――過渡期の経済学 120
    第五章 カール・マルクス――「資本」の運動法則 150
    第六章 カール・メンガー ――主観主義の経済学 188
    第七章 レオン・ワルラス――もう1つの「科学的社会主義」 210
    第八章 アルフレッド・マーシャル――「自然は飛躍せず」 239
    第九章 ジョン・メイナード・ケインズ――有効需要の原理 267
    第十章 ヨゼフ・アロイス・シュンペーター  ――「創造的破壊」の世界 304
    第十一章 ピエロ・スラッファ――「商品による商品の生産」 338
    第十二章 ジョン・ケネス・ガルブレイス――「制度的真実」への挑戦 362


    【目次】
    学術文庫版への序(二〇〇五年一月 根井雅弘) [003-005]
    目次 [006-011]

    なぜ経済学の歴史を学ぶのか 015

    第一章 フランソワ・ケネー ――「エコノミスト」の誕生 020
    1 ケネー小伝 020
    2 コルベルティスム批判 025
    3 『経済表』の分析 032
    4 ケネーの経済政策 038
    補論 菱山モデルについて 042
    注 047

    第二章 アダム・スミス ――資本主義の発見 051
    1 スミス小伝 052
    2 『国富論』の経済学 059
    3 重商主義批判 072
    4 自由主義とは何か 079
    注 083

    第三章 デイヴィッド・リカード ――古典派経済学の完成 088
    1 リカード小伝 088
    2 価値と分配の理論 097
    3 セーの販路法則をめぐって 105
    4 外国貿易と租税 109
    注 116

    第四章 ジョン・ステュアート・ミル ――過渡期の経済学 120
    1 ミル小伝 121
    2 社会科学方法論 132
    3 『経済学原理』 134
      生産・分配峻別論/「停止状態」(「定常状態」)への異端の評価/労働者階級の将来
    4 比較経済体制論への視角 142
    注 146

    第五章 カール・マルクス ――「資本」の運動法則 150
    1 マルクス小伝 151
    2 疎外された労働と史的唯物論 160
    3 資本論 168
      下向法と上向法/価値と余剰価値/資本の蓄積過程
    補論 再生産表式と生産価格論について 181
      再生産表式/生産価格論
    注 184

    第六章 カール・メンガー ――主観主義の経済学 188
    1 メンガー小伝 189
    2 『経済学の方法』 193
    3 『国民経済学原理』 197
    補論 オーストリア学派の人々 204
    注 206

    第七章 レオン・ワルラス ――もう1つの「科学的社会主義」 210
    1 ワルラス小伝 211
    2 『純粋経済学要論』 220
    3 ワルラス体系とは何か 229
    注 234

    第八章 アルフレッド・マーシャル ――「自然は飛躍せず」 239
    1 マーシャル小伝 240
    2 需要と供給のシンメトリー 245
    3 有機的成長の理論 253
    4 ケンブリッジ学派の人々 257
    注 263

    第九章 ジョン・メイナード・ケインズ ――有効需要の原理 267
    1 ケインズ小伝 268
    2 乗数理論と流動性選好選好 273
      乗数理論/投資の決定流動性選好説
    3 ケインズ体系とは何か 285
    4 ケインズ経済学の栄枯盛衰 290
    注 300

    第十章 ヨゼフ・アロイス・シュンペーター ――「創造的破壊」の世界 304
    1 シュンペーター小伝 305
    2 静態から動態へ 316
    3 マーシャル経済学への挑戦 325
    4 資本主義の将来 328
    注 333

    第十一章 ピエロ・スラッファ ――「商品による商品の生産」 338
    1 スラッファ小伝 339
    2 マーシャル経済学批判 344
    3 『商品による商品の生産』 349
    補論 古典派の「競争」および「均衡」について 358
    注 360

    第十二章 ジョン・ケネス・ガルブレイス ――「制度的真実」への挑戦 362
    1 ガルブレイス小伝 363
    2 依存効果と社会的アンバランス 370
    3 「新しい産業国家」とは何か 374
    4 「満足の文化」への警告 385
    注 389

    人名索引 [392-395]

  • 経済学の大きな考え方を産み出した人物12人を、短い伝記と共にその産み出された考え方について紹介している本。
    取り上げらえている偉人はケネー、アダム・スミス、リカード、ミル、マルクス、メンガー、ワルラス、マーシャル、ケインズ、シュンペーター、スラッファ、ガルブレイスの12人。それぞれがどういう過程を経てどういう理論をどういう目的で産み出したかが示されている。

    経済学で使われている考え方は多種多様でありいろんな人がいろんなところで利用しているけれど、その多くは歪められて使われているように感じる。そんな歪みが無いように偉人の生きた時代背景や生い立ちなどを抑えたうえでわかりやすく理論解説をしている本で、とても読みやすくかつ整理されててわかりやすいものだった。

    単なる理論の紹介や解説でなく伝記も含めて考えることでどういうモノを考えてきたのか、どういう考え方をしていたのかといったことが読み取りやすく、巷で溢れているような”歪んだ”理論にならないように配慮されているように感じとても好感が持てた。彼らの求めたものは基本的には真理の探究であって発見ではないと思われるが世の中には彼らが真理を発見したものとして捉えてる人が多すぎなんだろうと思う。
    全体の感想としては、かつては食糧生産が圧倒的に足りず必然的に経済は土地に縛られていたので、求めるべき真理もあるべき理想も比較的単純であったがゆえに生み出された理論も追い求めるべき理想も”身近”であったが、時代が立つにつれて経済を取り巻く環境は複雑化した結果、経済学者はいかに現実と理想とを近づけるかといった事よりも「完全」な理論を追い求める姿勢が強くなっていったのかなと思え、結果、理論と現実とが乖離しているのが現代の経済学なんだろうなと感じた。今の時代に必要なモノは彼らが生み出した「理論」ではなくその理論を作り出した「考え方」でもって現代社会を分析して解決策を新たに作り出すことなんだろう。

  • P28でギブアップ
    経済学のバックボーンがないので難しかった

  • 経済学史において最も重要な学者を12人を選び抜き、
    彼らの人物史と時代背景、思想、理論を解説した類のない名著
    歴史の話はともかく理論の話は初学者には理解が難しい水準

  • 経済学とはつねにつかず離れつの関係でいたいと思っていることから挑戦した本。
    各学者の学説の説明は、正直少し難しかった。他方、各学者の人生がコンパクトにまとめられていること、(他者からの評価ではなく)書いてあることから忠実に学者の思想を読み解こうとする著者の姿勢は、少なくともこの本が初学者の挑戦も受け入れうることを示している。再読の必要あり。

  • 「経済」と聞いて、眉をしかめる人は多いでしょう。
    なんか難しそう。
    よくわかんない。
    そんな感じで。

    しかし、現代社会において、経済は避けては通れないものです。
    本書はそんな経済の歴史を、易しく面白く書いた傑作だと思います。

    大学でのテキストとして使われていたこともある本なので、難しいところもありました。
    アタマが良くないので、だいぶ難解に感じましたが、それだけの価値はあったと思います。
    経済というものの本質が、おぼろげながらつかめた気がするので。

    まだ、自分の言葉では上手く語れそうもないです。
    本書の中のいくつかの言葉を引用しておきます。
    時間があれば、本書を一読してみて下さい。<blockquote>・John Stuart Mill
     「事実、経済学はいまだかつて人類に、自分だけの見地から忠言を与えようなどと大それたことを実行したことはない。もっとも、経済学だけしか知らぬもの(従って、実は経済学をロクに知らぬもの)が、あえて世に忠言を与えようと分不相応な大望を起したためしはあり、そのばあいその連中は、本当に自分の持つ知識だけでそうするよりほかなかったのだが。」

     「実地の目的からすれば、経済学は社会哲学の多くの部門と密接に絡み合っている。およそ実問題にして、もっぱら経済学的前提のみから解決しうるというものは、純粋の経済問題に最も近い性質をもっているものですら、単なる些細な事柄を除けば、おそらくあるまい。アダム・スミスはこの真理を決して見失わず、経済学の応用に当たっては、純粋の経済学が与えるところの考察とは異なれる考察、それよりもはるかに広大な考察に訴えているのであって、それであるから、彼は、経済学の諸原理を実地の目的に対して駆使しているという、充分な根拠のある感じを人に与え、それによって『諸国民の富』は、数々の経済学に関する著作の中にあって、ひとり一般の読者に親しまれたばかりでなく、世事に通じた人々や国会議員の人たちにも深い感銘を与えた、唯一の著書となったのである」</blockquote><blockquote>・Joan Violet Robinson
     「ある経済学者のイデオロギーを好まないからといって、その理論から学ぶことを拒否するのは愚かなことである。また同時に、そのイデオロギーに賛成するからというのでその人の理論に信をおくことも、賢明ではない」</blockquote><blockquote>・Marie Esprit L&#233;on Walras
     「条件の平等と地位の不平等」という有名な正義の原理。
     個人は自由に行動して、その才能と努力に応じた不平等な地位を獲得する権利を持っている。しかし、個人がその才能や努力に応じた不平等な地位を獲得することが許されるためには、まず、国家が個人に条件の平等を保証しなければならない。</blockquote><blockquote>・Alfred Marshall
     「自由企業の下にある世界は、経済騎士道が発展するまでは、完全な理想から程遠いだろう。しかし、それが発展するまでは、集産主義の方向へのどんな大きなステップも、現代の程よい進歩率の維持にとってさえ由々しい脅威である」</blockquote>先日の選挙での焦点だった「郵政民営化」。
    これだって、経済的な見地からの選択肢の一つでした。
    今、何が起こっているのか、起ころうとしているのかは、知っておいた方が良いです。
    それは、決して優雅なものではないのですけれどね。はは。

    経済は、もっとも身近であり、具体的な哲学です。
    たまには、こういうことを考えてみるのも良いと思いますですよ。

  • 1134円購入2011-06-28

  • 20170809読了。
    根井さんの経済学史は、人物像にまで迫るのでとても興味深い。基本的にはケインジアンなのかな?ガルブレイスの評伝が、今のアメリカ政治経済の現状を予言しているみたい。

  • 経済学史の入門書はロバート・ハイエルブローナーの『入門経済思想史』が個人的に最高傑作だと思うが、日本人が書いたものが読みたいならオススメ。

  • 12人の経済思想史の偉人の思想を400ページ近くの文庫版で説明しようとする本。著者は、経済思想史の本が多い根井氏。

    フランソワ・ケネー、アダム・スミス、リカード、J.S.ミル、マルクス、メンガー、ワルラス、マーシャル、ケインズ、シュンペーター、スラッファー、ガルブレイスの12人。個人的にはこの後の著作を見ても、根井氏らしい人選だとも思う。

    1人の人物の思想に平均30~40Pとなるが、人物の略史があるので思想に入る前にわかりやすい。機会あれば、また読み直したいと思った。

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著者プロフィール

1962年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。著作に、『今こそ読みたいガルブレイス』(集英社インターナショナル新書)、『英語原典で読むシュンペーター』(白水社)、『現代経済思想史講義』、『経済学者の勉強術』、『来るべき経済学のために』(橘木俊詔との共著)、『ブックガイド基本の30冊 経済学』(編著、以上四冊は人文書院)など多数。

「2021年 『16歳からの経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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