- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061597594
感想・レビュー・書評
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福沢諭吉の『学問のすゝめ』の校注,解説付き本
原文は文語体で,意味の違う言葉があることなどから,
そのままでは本来の意味やニュアンスを汲み取ることは難しい.
この本では各節において,ニュアンスの分かりにくい部分やある言葉のそこでの意味などを校注として付している.
原文もそのまま掲載されているため,福沢諭吉の書いた原文を読みつつ意味を理解することができる.
また,各章において校注でその章のバックグラウンドとなる思想や参考にしている洋本もちゃんと紹介されている.
本文のあとには解説が含まれており,福沢諭吉の生い立ちや単語のまとめ,章ごとの関係などが記載されている.
「天は人の上に人を造らず,人の下に人を造らず」
は有名な緒言だが,この本には他にもいくつもの重要なトピックがある.
最期まで読んでこそ,福沢諭吉の思想のなんたるかを知ることができるであろうと思う.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1872年という明治初期に書かれた書物にも関わらず、現代にも通じる-なんて紋切り型の言葉に違和感を覚えずにいられないのは、先に『福翁自伝』を読んだ為か。そもそも、福沢諭吉は権威や立身出世とやらに無頓着で、旧態依然とした体制や大衆とやらにとにかく「渇だ渇っ!」と言いたかっただけなのだ。
しかし、こうやって誰もが名前ぐらいは知るこの書物を読み解くと、実体は学問論というよりは当時の社会全般にたいする考察と提言といった面に主が置かれているのは意外だった。種々洋楽書物を参照しつつ、冴えた/醒めた目線で古き習慣を奮いにかけ、平易にアイロニーをまぶして語るその口調は、「学問は実学であり、実用されてなんぼのもん」という主張を見事に体言している。
個人的に圧巻なのは第八篇/第十一篇。前編では男尊女卑や一夫多妻の習慣を禽獣もので畜類の小屋だと断罪し、家父長制の理不尽さを挙げていけば、返す刀で後編では社会における人間関係というものがこのような親子の間柄のように扱われている事を看過し、そのような上下に甘んじる構造こそが専制を生み出す温床なのだ、決して権力者の悪意から生まれているものではないと喝破する。相手が親の仇の儒教道徳とだけあって、流石の切れ味でその欠点を鮮やかに論じています。
しかし…この本は今ではきっと、「自己啓発書」として読まれてしまうんだろうな。衒学的な思想/哲学を翁が無駄と切り捨てたのは、時代がそれを要請し、実学それ自体が思想として成立していたから有効なのであって、現代でそれを体言したら資本のシステムに内面を毒されて唯自分が儲ける為の手段としてしか見られないとしたら、それはそれで悲しい事だ。ここまで書いて表紙をふと眺めたら、すました顔してやがって凄い腹が立ってきた。 -
明治のベストセラー。西洋近代の精神とはなにか。(2010:清水正之先生推薦)
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一橋大第2問(近代文語文)が苦手な人へ。
短めの文章を読んでみよう。 -
やはりこれは名著だと思う。
学問のすすめの文章を原稿用紙にひたすら書きなぐって、大学受験の小論文対策をした思い出がある。
その御利益はあった。 -
「学問のすすめ」をひとつすすめるとしたらコレ。解説が充実していて、時代背景や当時の用語の意味合いを知ることができ、「学問の~ワールド」が大いに拡がる逸品。
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読んだのは青空文庫の原著版。
細切れで読む分には面白い。いろいろ気づきになるようなことも書いているので変な啓発本よりはいい気がする。結局はそれを受けてどれだけ動けるのかにかかっているということを忘れてはいけない。 -
現代語の注釈が数ページごとについている。明治初期に当時の日本社会に対して書かれた啓蒙書。現代では解決済みのイシューがあるが、かなりの論点はそのまま現在でも意味をなす。特に役人に対する徹底した不信感といか、役人が威張ることに対する辛辣な批評は、現在の高級官僚に読ませてやりたくなる。
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先行きの見えない今のような時期に、
学問のチカラをわかりやすく教えてくれる本。
あの、「天は人の上に人を造らず〜」
の部分が有名な、一万円札の人の本です。
イメージは取っつきにくそうだけど、
読みはじめたら、一気に読んじゃいました。
運営主体と運営客体の関係や
価値観が変わる時代の生きかたなど、
いま読んでも、あまり古さは感じません。
あらためて読んでみると、
いろいろと感じるところがあるかもしれませんよ。
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近代文学館名著複刻全集