- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061598850
感想・レビュー・書評
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海外ドラマ「ザ・パシフィック」の原作の一つだが、戦記ものというより、優れたルポルタージュのように感じられた。精鋭とされる、米海兵隊員であっても、悩み多い、多感な若者であるという、当たり前のことに気付かされる。詳細な情景、心理描写は非常に説得力がある。
勝者の米兵ですらこうなのだから、孤立無援の中で玉砕して散った日本兵の苦悩はいかばかりであったかと思う。戦争は死と虚無をまき散らすだけである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでいて厳粛な気持ちになる一冊。
戦争の最前線が、どんな地獄になるのかを克明に描写していく。
おびただしい死と、だんだんと理性と正常な感覚が擦り切れていく様子が心胆を寒からしめる。
日米両軍の兵士に哀悼を。 -
米海兵隊の一員として太平洋戦争の激戦地に従軍した回想記。火力、物量で圧倒した米軍の一員にしてこの地獄を見ているのだから、対する日本軍兵士の見たものたるや想像も及ばない。戦場にのぞむ一兵士の心理が率直に描かれて貴重である。加える言葉もない。
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アメリカドラマ「パシフィック」を観てその原作とも言えるコレを読む。パシフィックの主人公の1人、ユージーン・スレッジハンマーが著者。彼は医者の息子で、愛国心はあるもののどちらかといえばひ弱に見られがちな若者だったようだが、工科大学を中途でやめ、陸軍海兵隊に志願して入り込む。そして体験したのが、ペリリュー島と硫黄島、そして沖縄における日本軍との苛烈な戦いである。ペリリューはNHKでも特集があったが、戦闘中にアメリカ軍にとって戦略的に無意味になったにもかかわらず攻防が続き、日本軍がほぼ壊滅、勝ったアメリカ兵も多くの死傷者と精神崩壊者を出した激闘の場になった。正直私は、太平洋の多くの島で日本軍が玉砕したことを考えると、アメリカは一方的に、そして楽に勝ったかのように認識していた。が、パシフィックを観、本書を読めば、決してそんなことはなく、前線のアメリカ軍兵士にとっては余裕などかけらもない、苦しい戦いの連続であったことがわかる。
沖縄での民間人を交えたいくつかのエピソードは特に印象的で、人間性を失わないと敵側を殺せなかった兵士たちが、民間人を極力犠牲を払わないように、人道的に扱おうとしていた部分と、民間人に対してさえ人間性を失う一部兵士によって様々な被害があったこともわかる。
さて、苛烈な戦争を体験して帰国した彼らを母国は英雄として称賛したものの、スレッジたち兵士はあの戦いを理解してもらえず、また兵士たちからすればのうのうと過ごしていた母国の人間との間の気持ちのすれ違いは大きかったようだ。
第一次大戦に従軍したイギリス人の詩がまさに気持ちを表しているという。
あなたたち 乙に澄ました 燃ゆる瞳の群衆よ
若き兵士の行軍を 歓呼で見送る人々よ
家に帰って 祈るがいい あなたたちにはわからない
若さと笑いの行くところ それが地獄だということが
スレッジは随分苦しんだ後、生物学の教授になったという。良い人生を送ったと感じてくれたのなら嬉しいのだが。帰国後日本をどう思っていたのか、気になる。 -
「戦争は野蛮で、下劣で、恐るべき無駄である」
彼のその一言が、戦争の全てを物語っていると強烈に感じる内容でした。 -
日本で太平洋戦記に関わる本を読むと、戦争の無意味さが語られることが多い。しかし、この本で、米兵の死に怒りつつ日本兵を憎む著者の姿を目にすると、日本兵は恐ろしくも勇敢で、確かにそこに生きていたのだと気付かされる。後ろ暗い部分を苦しみながらも活字にした著者に敬服。
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広島の原爆資料館を見て、被爆者は必ず言う。「こんなもんじゃなかった…」と。おそらくペリリューや沖縄の戦いも筆舌につくせぬ地獄だったのだろう。本書で、その片鱗をのぞくことができる。
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作者がペリリュー島と沖縄で経験した第二次世界大戦を綴られています。士官になるべく志願したが前線の兵士となる海兵隊の訓練へと進んでいき、ペリリュー・沖縄の前線で経験する日本兵との死闘がリアルに表現されます。バンドオブブラザーズの様にアメリカでTVドラマ化されており小説を手にしました。
この本は、ドラマ化の原作というか原案で、別のスティーブンアンブローズの息子による小説がザ.パシフィックとして刊行されています。バンドオブブラザーズの原作者はスティーブンアンブローズで、親子二代で第二次世界大戦に関わる書籍を出しています。TVドラマは、バンドオブブラザーズ同様にトムハンクスとスティーブンスピルバーグが監修です。
訳者あとがきにもありますが、日本人による関連書籍が出ないのが残念です。 -
戦場は暗く、臭く、汚く、えげつない。死体があちこちで腐っている。
生きている人間も、人間でなくなっていく。
悲しいとか辛いとか、これまではぼんやりと捉えていたのだ、ときづかされた。ようやく、戦争が物語ではなく愚かな歴史なんだと実感した。いかに無意味か、も痛感した。