鎌倉XYZの悲劇 (講談社ノベルス カB- 8)

著者 :
  • 講談社
4.00
  • (3)
  • (1)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 13
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061813694

作品紹介・あらすじ

鎌倉の旧家、里井家の長男・幸太郎が鈍器で撲殺されたのを皮切りに、銃殺、毒殺と次々に恐るべき殺人が行われる。探偵事務所を営む手島利明とその恋人、輝子の2人は、莫大な財産目当ての凶行とみて調査を進め真相に迫る。里井家の少年がもらした「宝探し」のひとことが指し示す凶悪無類の真犯人は一体、誰か?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 天国の探偵局で局長に呼び出された塩見忠良。
    自分の死の原因が分からないという彼のために、局長は真相を究明しようという。しかし天国のルールとして現世に直接介入する事は許されない。ただひとつ出来るのは古今東西現実虚構を問わず、名探偵の魂を下界の人間に照射し捜査のきっかけを与えるという事だけ。
    名探偵、普通の探偵、その他。三種類に分けられた天国のリスト。
    ホームズでもポアロでも誰でも好きに選べるというのに、塩見は同郷のよしみで鎌倉在住の若きヘタレ探偵を選んでしまう。

    すでに死んだ人間が天国で自分の死の原因を探るというなんとも面白い設定のミステリ。ユーモアミステリのようですが、そこは梶龍雄。しっかり伏線が張られた本格ミステリです。

    現世側の主人公、手島利明は夢見がちなミステリマニアで定職に就かず廃墟に『手島探偵事務所』の看板を掲げ、ひたすらミステリを読みふける変人。捜査と称した不法侵入による厳重注意一回。古本屋で手に入れたチャンドラーに挟まれていたメモがきっかけで事件に関わり始める。

    彼の行動を天国でVTR(?のようなもの)を観ながら、局長と塩見があれこれ推理を繰り広げる一風変わった作り。危なっかしい手島の推理を踏まえて、さらに天国でおさらいする。現世と天国、交互に描かれる構成が楽しい。

    梶龍雄ってこういうタイプのミステリも書くんですね。大満足でした。ラストにプラスアルファのご褒美をもらえたのが嬉しい。さて、みなさんはどうでしょうか。

    尚、この本は『Xの悲劇』に始まるエラリー・クイーンの一連のシリーズの内容に触れている部分があるので、未読の方は注意が必要です。

  • 鎌倉の旧家を舞台にした遺産相続が絡む本格ミステリーです。
    天国の局長が地上の私立探偵に指示して解決させるいう着想は面白いのですが、どうもギクシャクしていて読み辛かったです。
    トリックはやや強引ですが、なかなか凝った趣向ですし、著者の持ち味である伏線の妙も味わえます。犯人当て小説としては申し分のない出来だと思います。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1928年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部英文科卒業。出版社勤務を経て文筆活動に。52年探偵小説専門誌『宝石』に短篇「白い路」が掲載され、ミステリ界へデビュー。77年『透明な季節』で第23回江戸川乱歩賞を受賞。『海を見ないで陸を見よう』、『リア王 密室に死す』など旧制高校を舞台とした清冽な作品で注目され、『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』『葉山宝石館の惨劇』等、巧緻な作品で、本格ミステリファンの記憶に残る傑作を多数発表。90年逝去。

「2023年 『梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション2 若きウェルテルの怪死 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梶龍雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×