ブラジル蝶の謎 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061819108

感想・レビュー・書評

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  • 作家アリスシリーズ6作目であると同時に、国名シリーズの3作目。

    この本は短編集ということで、6本の短編が収録されている。
    私はこのシリーズの火村とアリスの掛け合いが好きなので、最初の方は事件ばかりがクローズアップされ、二人の掛け合いがないのを少々残念に思いながら読み進めていた。
    というのも、収録作がどれも内容を詰め込みすぎて、事件を解決させるのに精一杯という印象を受けたからだ。ミステリーは文章中にどうしても情報量が多くなりがちだが、この本の収録作にもそういう印象を受けたのである。つまり、言ってしまえば事件を無理やり短い枚数に収めようと、駆け足になっているように感じたのだ。

    しかし、最終話の「蝶々がはばたく」ではその印象を受けなかった。話のまくらからして非常に掴みがよく、そのあとの展開も無理がなかった。
    ささいな謎ながら、その解決も鮮やか。そして締め。私はここで、ああ、やっぱり有栖川さんだなぁ、と思ったのである。
    このささやかな祈り、人間に対する愛情。題材としたものがものだけに、そして何より発表時期が時期だけに、相当気を配ったのだろう。しかし、その気配り加減の書き方、表し方が私にとってまさに「有栖川さんだなぁ」だったのだ。
    これは一読者としての単なる感想だけど、有栖川さんの良さは、こういうところだよなぁと、今回のこの短編を読んで改めてそう思ったのだ。

    というわけで、この短編集自体というより、最後の短編が☆4、というかんじです。全体では☆3,5くらいかな。

  • そんなん火村じゃなくてもわかるわ! という話から、そんなん火村じゃなけりゃわからんわ! という話まで、バラエティ豊か。

  • ミステリ好きでよく読むけど犯人やトリックは当てられない私でも当てられた話がちらほら。
    この人のは結構当てられるというか、トリックが複雑すぎないのがいいな。ちゃんと読めば解るって最近あんまない気がする(私が頭悪いだけかな)

    ただ短編なのでちょっと☆少なめで。

  • ひとつひとつの短編が、濃い!はずれがなく、しかも作者が短編ごとにいろいろなアプローチの仕方を試みているので、新鮮な感じで読み進めることができました。私的に「鍵」がおもしろかった。

  • 表題作の現場の情景とかが浮かんですごくきれいだなぁと思ったり。このひとの作品、事件自体のトリックとかよりもそういうとこが記憶に残ってること多いです・・。

  • 2023/1/20読了(再読)
    収載の『蝶々がはばたく』は、阪神淡路大地震に触れた作品。読んでいる内に、発生から28年目の日を通り過ぎた。

  •  表題作は犯人像と華麗なトリックが結びつかない気がした。引き際を心得た犯人と往生際の悪い犯人がいるが、今回は後者。
     「妄想日記」の新作文字が面白かった。
     「彼女か彼か」の入れ替りトリックは見抜けた。手掛かりが多かったせいもある。たまには勝たせてもらわないと、読む意欲が減退する。
     「鍵」はタイトルからして同名の谷崎作品のように艶っぽい話なのだろうと予期しながら読むと、犯人も鍵の用途も見抜けた。
     「人喰いの滝」は解決部分を読んだ後も、犯人が面倒な策を弄する意味が解りにくかった。
     巻末「蝶々がはばたく」、足跡が消えた理由の見当はついたが、チリ大地震と関係があるとまでは思い至らなかった。タイトルでバタフライ効果に触れているのに、気づけよ、自分。

  • 国名シリーズ第三作目。
    ブラジル蝶の謎、天井に貼り付けられた色とりどりのアグリアスを想像して、確かに死体に目がいかないから偽装工作はできるなと感心しました。ロビンソン・クルーソーが電話を電話だと思わないのも納得。折角兄弟が和解しあえてシャバまで出てきたのに殺されるって...悲しい。これは終わり方も綺麗で、しばらく余韻にひたって続きが読めなかったほどです。ただの化け物だと罵られた火村先生の心中を察すると苦しくなる。
    「こうするしかないんだ」
    あまりにも悲しい。

    他の短編も面白かったです。彼女か彼かの、様々な視点から見る事件像も新鮮で、何よりキャラクターがよかったな。人喰いの滝は長靴を利用した足跡トリックが奇抜で、ようやったなと笑ってしまいました。

    最後の蝶々がはばたく、が一番好きです。構成がとても綺麗。伝聞だからあくまでも推測の域を出ないけど、消えた二人が幸せに暮らしていると思うと嬉しいし西松氏の語り口もとても優しくて好感が持てる。
    短編集の最後は割とホンワカした話で終わる印象が強かったので、その最後の最後八行でまた全体の印象が変わりました。あとがきで書こうか迷ったと先生が仰ったけど、私はこの話を読んでよかったと思いました。ここ数年は更に様々な場所で災害が発生していますが、悪いことばかりではない、幸福をのせてたくさんの蝶々かはばたいているのだと私も信じています。

  • 普通に読みやすいし面白い。
    けれどなんか何故か自分は入り込めなかった!
    なんでかは謎w
    火村さん好きよ。

  • 有栖川有栖の国名シリーズ第3弾。火村とアリスの掛け合いが楽しい短編集。大昔に読んだことがあるのに気づかずに再読。犯人もトリックもストーリーも覚えてなくて二度楽しめた。「車用の電話」という表現に昔の作品なんだなあとしんみりする。このシリーズ、まだ読んでない作品もまだまだあるからこれからが楽しみ。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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