原罪の庭: 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス シI- 5)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061819610

感想・レビュー・書評

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  • これは一気に読まなきゃダメなやつだ、と思って機を伺っていたけど、やっと読んだ。
    今回は、神代教授視点。前作の深春と同様で、色々ちゃんと説明してくれて分かりやすい。

    PTSDとか、今なら一般的な気がするけど、当時はそうじゃなかったのか、いわゆる「問題行動児」(この言葉、今も使われてるのかな?)がなぜそうなるのか、も、かなりの言葉を使って説明されていて、今との認識の差を感じる…けど、今でもあまり変わらないのかも、という気もしたり。
    言葉を尽くす必要はいつでもあるのだな、と本筋と関係ないことをつらつら考えた。

    香澄の置かれた状況は過酷で、でも過去形で第三者視点で語られるのでなんとか読める。
    家族、という単位について久しぶりに考えた。

    建築のはなしはあまりないけれど、ガラスの温室というのは、もうそれだけで美しく思える。
    そこで繰り広げられる凄惨な殺人事件と、無邪気にわらう子ども。
    思わずうっとりしてしまったのは、私だけではないはず…

  • 今まで読んだミステリーで良かったものは?と聞かれたら絶対上げるであろう作品。
    初めて読んだときは号泣。
    その次も号泣、という泣きっぷり(笑)
    過去の殺人事件を追う話なので、途中引き延ばし感がなきにしもあらずだが、でもやっぱりラストは圧巻。
    この原罪の庭だけでも皆に読んで欲しいと思う。
    私自身子どもを今再読すると、子どもをいとおしく思える作品。大事にしたいと思う。
    どんなに時がたってもラストの展開が忘れられない作品。

  • 読んでてかなしくなるなー…。

  • 再読。建築探偵シリーズ5作目第一部完結編。
    20歳の京介の蒼との出会いと蒼の隠された過去が明かされる。
    初読はまだ学生の頃でした。
    それでもここで描かれる物語は胸に深く刻まれていたのですが、子供を持った今は尚更胸が苦しくなりました。
    幼い蒼が閉じこもらざるを得なかった緘黙の殻。
    彼を縛って封じ込めている最後の檻を打ち砕くために、残酷な仕打ちだと判りながらも目を逸らさずに向き合う京介。
    内に多くの不吉なものを隠したパンドラの箱の様な『硝子の棺』の底にも、希望が残されていた事に深く安堵する。
    ラストは涙せずにはいられない。

    教授が香澄の住んでいた部屋のその異常性を目の当りにして、心の内で思った言葉が重い。
    「人間という極めて特殊な種が、他の生き物たちが遂に獲得することのなかった過剰な知的能力の代償のように、持たざるを得なかった罪。原罪。」

  • シリーズ第一部終了。前作から気になっていた蒼の過去がようやく解かれる一冊(=^ェ^=)犯人探しはそこまで難易度高くない。WHY DONE IT、動機探しに重点を置いていて丁寧に描かれている。涙なしには語れないファンなら必見。ミステリーとしても面白かった。シリーズとして安定した傑作。

  • 前回に引き続き過去編。犯人は大体見当がついてしまう。

  • 大好きなシリーズ。
    建築探偵シリーズを読むなら、これから読んで欲しいです。

  • ガラスの柩を思わせる巨大な温室の中で惨殺された病院長一家。その血塗られた密室に置かれたチェストで、天使のようにまどろむ七歳の少年。ただ一人生き残った彼は、しかし言葉を失っていた。闇に閉ざされた魂を救うため、最大の謎「薬師寺家事件」に挑む桜井京介。建築探偵シリーズ第一部の掉尾を飾る傑作。

  •  シリーズから複数を読み、若干構えて臨んだ本作は、京介と蒼の始まりであり、第一部の完結編。
     降り注ぐ陽差しと壊れた硝子に漂う、陰陽の透明感。
     眩い景色と芳しい香り、陰惨な酸鼻の匂い。
     愛憎と、母子の涙。
     幾つもの両面性が垣間見える世界は、美しくて哀しい。
     しかし、正直な手応えとしては痒い所に手が届かないというか、心の表面を撫でられただけのように物足りなかった。
     前提も他作品も知らずにいきなり読むかもしれない相手に対しては、少々不親切でフォローが及ばない。
     諸々の巻が前置きとなる背景を承知の上で、敢えて言う。
     底力のある物語は、一冊抜き出しただけでも全体を凝縮し、不足無しの感を抱かせられるのではないか。
     京介の香澄(蒼)への介入と投影、少年から彼への胸襟の開き。
     諸要素が根底からなぞられるのでなく、当然の事柄として流され進行する。
     著者にしてもファンにとっても自明の現象かもしれない。
     だがそれ故に、前知識のない読者の観点からも咀嚼し吟味し、共感なり反発なり喚起させる材料を提示すべきではなかったかと思う。
     読み手側の視点と重なる役を、神代教授に振ったのは悪くない。
     配置も思考力も一番の適任。
     だから余計に惜しい。
     教授のアングルなら、両者に対し、充分な読み取りと解釈が可能だった筈。
     分量制限の所為か、野暮を避けたい配慮かは不明だし、決して面白くなかったわけではないのだけれど。

  • 蒼ってこんなにややこしい子供だったのか……! 作者の気合の入り具合も半端じゃない、と思ってみたり。

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著者プロフィール

東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。1991年、ミステリ作家としてのデビュー作『琥珀の城の殺人』が第二回鮎川哲也賞の最終候補となる。著書に、『建築探偵桜井京介の事件簿』『龍の黙示録』『黎明の書』『レディ・ヴィクトリア』『イヴルズ・ゲート』シリーズなどがある。

「2022年 『レディ・ヴィクトリア完全版1〜セイレーンは翼を連ねて飛ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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