火蛾 (講談社ノベルス)

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著者 : 古泉迦十
  • 講談社 (2000年9月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061821491

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火蛾 (講談社ノベルス)の感想・レビュー・書評

  • イスラム教の殺人ミステリとか普通無いから新鮮だった。
    表紙とか凝ってる。

  • 12世紀の中東、イスラム世界を舞台に展開する、宗教的・観念的なやり取りがなんとも神秘的です。一応閉ざされた山での殺人というミステリーはありますが、イスラムの宗教問答がメインで、独自の世界を創り出しています。ひじょうに個性的な作品で、一読の価値ありです。

  • 穹廬内の密室は謎解きに必要な要素を提示していますが、一部状況を後付けしていることもあり、推理するにはやや不親切かなと思います。
    ただ、メインはそこではなく終盤にあります。怒濤の追い込みと意外な形で収束するラストは圧巻です。一読の価値は十分にあると思います。
    個人的にイスラムに関する蘊蓄や補足が足りないと思いました。日本人には馴染みがないですし、動機に絡む要素でもあるのでもっと詳しく書き込んで欲しかったです。

  • 「もはや気づいていることだろうが、おまえの言葉は言葉ばかりなのだ。おまえはすべての言葉と教説を背負って、虚無の淵に堕ちてゆくつもりか。言葉とは眼前の蠟燭のようなもの。意味という炎を燈し、傲慢にも世界を照らそうとするが、所詮は玄穹の星芒。真実の光のまえでは、偽りの光にすぎぬ。表層の意味にたよるな。意味はすぐに剥落する。よいか、ものが意味を喪うのではない、意味がものから剥落するのだ。ちょうど、下手な騎士が馬から落ちるようにな。言葉とは、騎士を失った空しい馬にすぎぬ。」あまりに宗教的過ぎるが、面白い。だからこそ面白いと言うべきか。

  • 2000年発行のイスラムミステリ(?)、そして語り手の舞台は12世紀。

    解決編(残り30ページ)までは宗教観などが右から左でしたが、
    ラストの、ファリードによる解釈が素晴らしい。

    この手の文体は私にとってわかりづらく苦手で残念。
    あと5回は読まないと物語世界が理解できないような、雲を掴む状況。
    も少しイスラムの説明や蘊蓄をわかりやすく描いていたらもっと面白かったかも(私にとっては)。
    何故ならイスラム教に、信仰関係なく興味を持っているから。


    自分とは?世界とは?偶像とは?生きるとは?
    それは敬虔なイスラム教徒でなくとも考える事柄。少しだけ考えよ。

  •  なかなか手を出せなかった積ん読本。第十七回メフィスト賞受賞作。
     まぁ、内容がね、イスラム教関係だし。宗教色満載だし。
     はじめをちょっと読んで、なかなか続きを読む気になれなかったけど。
     ところがどっこい(古)結構面白かったんだ、これ。
     登場人物の宗教観に関する薀蓄は辛かったが。
     推理に関しては特に妙な部分も見つからず。むしろ理に適ってて、良。
     ラストのオチも非常に好みだ。気付いたときに「ああ」と思わず声を上げてしまう、そんなオチ。
    「――言葉とは、騎士を失った空しい馬にすぎぬ」
     偶像崇拝を厭うイスラム教。「言葉」も突き詰めれば偶像の一つである。
     ……これってネタバレ?

    03.12.22

  • 神、言葉、信仰、生と死。ミステリというより、観念小説、といえばいいのか。神を巡る、静謐で美しい論理の羅列。信仰を淡々と紡ぐ論理の流麗さは、本当に美しい。

    神について、言葉について。偶像崇拝を否定するならば、言葉を用いた祈りも書物も否定されねばならない。言葉は、本来あるべきものの本質の、偽りの表象でしかあらず、そのもの、ではない。
    だが、人は言葉でしかものを捉えることができず、言葉として顕れた本質を、本質として信じることしかできない。
    そして言葉を介した時点で、ものの本質は失われ、言葉がものの本質を顕すという逆説を受け入れることしかできない。
    それは言葉を用いた人間の業であり、人は言葉なくして世界を捉えることはできないのだ。
    だが、言葉を受け入れれば、世界の本質を、知ることはできなくなる。
    だから言葉を空しいものと断定し、それに追従するならば、宗教はウワイス派の作り上げた信仰体系を取らざるを得なくなるのだろう。もともと「神」という概念は、言葉が作り上げたものなのだから。

    ある種の、推理小説、ではあるかのかな。幻想で決着をつけようとすれば簡単なのに、あくまで無理のない論理に収斂させた構図の美しさは肌に合う。

  • イスラム教のスーフィズムの世界観を前提にしたミステリ小説。日本人とはほぼ縁のない世界を舞台にしながら、専門的で小難しい小説ではなく、分かりやすい独特のエンタメ小説になっているのが凄い。絶対にこの作者にしか書けない、文字通り「誰も目にしたことがない」小説。内容紹介に偽りなし。

    著者の作品はこれ一作のみで、一時は死亡説や出家説も流れたらしいが、去年くらいにメフィスト賞同窓会で復活宣言があったそうな。次回作を気長に待ちたい。

  • これは傑作です。日本ではほとんどテーマとされないイスラーム世界を舞台にしています。簡潔な文体の中に凝縮されたアリーたちの物語は、読む者を引き込みます。どうか混乱してしまわないように。作品がこの一作だけであるというのが、実に惜しまれます。

  • イスラム世界が舞台の異色ミステリ。端正で上質な仕上がり。

  • 「可憐なイスラーム」
    未知なる世界で殺人事件。
    コーランにおける聖言とは。
    飛んで火にいる夏の虫。

  • 「二度と会うことがないならば、離別と死別は等価である」
    byマロイ・キャンベル

    ボクにとっては天啓の一冊。
    だが万人にはすすめない。
    表面的にはイスラム神秘主義とミステリの融合なのだが、
    ボクはここから1つの信仰すべく宗教観を見出した。

    ボクは自分の死に方を考えている。
    同時になぜ死は悲しいのかという疑問もずっと持ち続けている。
    生物には等価に生死が訪れるにも関わらず
    なぜ生は喜びで死は悲しみなのだろうか。
    なぜ反対であってはいけないのだろうか。
    ボクはそれが幼少からの教育や道徳ですりこまれた
    結果誰も疑問を持たず同じ感情を共有しているのだと思う。

    ただ単に別れるということが悲しいならば、
    遠くへ旅し2度と会うことがない人との別れも
    同じではなかろうか。むごたらしい死体や
    正視できない苦痛が悲しみを誘うのだろうか。
    喜びや祝福に囲まれた死というものがあっても
    よいのではないだろうか。

    ボクは、近い将来に死を求めている。
    現在の状況が苦しく生きていてもつらいことが多いから
    というのではない。喜びに満ち足りた仕事に出会い
    すでに十分幸せであり、これ以上何も望むことがないからだ。
    いつ死のうとも全く後悔のない人生であった。
    そこで考えるのが死に方である。
    周りの人に迷惑をかけることなく、
    むしろ喜んでもらえるような
    そんな死というのはありえるのだろうか。
    特攻隊や自爆テロのように玉砕したいというのではない。
    それでは一方の側が多いに悲しむことになる。

    1つ考えたのは、全ての知人友人との縁を絶ち、
    1人静かにこっそりガンジス河に流れるというものである。
    天涯孤独なら誰も悲しむものはいない。
    死体処理にわずらわせる手間もない。
    がしかしこれではあまりにも後ろ向き過ぎる。

    誰か、もしくは何かの生物の食料になるというのは
    どうだろうか。
    藤子F不二雄のSF短編「カンビュセスの籤」に
    あるように、全く腐臭や死肉をともなわず
    オートメーションで、人体からカロリーメイトのような
    食品を製造する機械があったとしたらどうだろう。
    さらにそれが、世界の貧しい子どもたちのその日を
    生きる食料になるというのなら、
    墓よりも進んでその機械に入りたい
    という人は多いのではないだろうか。
    ただ残念ながらそんな機械はまだ開発されていない。
    倫理的にも法律的にも合法となるのは遠い未来のことだろう。

    そして3つ目の死に方を提示してくれたのがこの本であった
    前置き長くてすいません。
    偶像崇拝を禁じたイスラム教の中で、
    コーランの文字や師の存在さえも
    偶像と考え排斥する超異端である
    スワイフ派について語られている。
    (実在しているかどうかは不明)
    詳細は説明しづらいが、
    スワイフ派の考える究極の掟というのが、
    師を殺し、また自らも弟子によって殺される
    というものである。
    自分が師の命を絶つことで教義を達成し、
    また自分も命を奪われることで、
    弟子と自分の至福となり悟りを得るというものだ。

    もしそんな信仰が本当に実在するのだとしたら、
    覗いてみたい
    そしてそこで死ぬのもありかもしれない。

    とこの本を読んで考える人はまずいないだろうと
    思うので他の方々にはおすすめはしない。

    ちなみに冒頭の一句はボクの造語

  • 言葉は本質の偶像。

  • 不思議な小説だ。
    舞台が中世中東というのも不思議。
    が、こういうテンポの小説はやや不得意だ。

  • [ 内容 ]
    十二世紀の中東。
    聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のため、アリーと名乗る男を訪ねる。
    男が語ったのは、姿を顕わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山の、閉ざされた穹廬の中で起きた殺人だった。
    未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する。
    第十七回メフィスト賞受賞作。

    [ 目次 ]


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    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • メフィスト賞(17回)
    本格ミステリ大賞候補(2001/1回)

  • 民俗学とか、歴史とか、神話とか…日本のモノを絡めた
    ミステリって良く読むけどイスラームってはじめてだ。

    そもそも。文芸全般でなじみなかったイスラム教。
    世界史じゃなく日本史選択者の私は浅い知識しかない。
    ムハンマド、アッラー位は知ってますが、
    スーフィーだのタウヒィードだの神秘家だの
    専門(?)用語の数々に引くかと思いきや、
    どんどん手繰っていってしまいそうな不思議な引力がありました。


    だけど、説教臭くならないのは秀麗な言葉たちのせい。
    文学性より娯楽性と思われがちなミステリにしては珍しく、
    アイテム(例えば見立て殺人とか)・設定に頼らず、
    "語り"の言葉と風景描写による荘重な空気を出している。
    ジャンルをいっそ、幻想小説といっていいくらい。

    森厳な雰囲気にのまれて事件の顛末も
    夢か現実かわからないような不思議な読後感でした。
    気になる作者さんだけどこの作品のみしか出版されていないよう。
    本業は研究者なのでしょうか、もったいない気もする。

  • これは凄い。
    読者をトランス状態に引き込ませるかのような
    圧倒的な文章力。
    イスラムの難しい単語がバンバン出てきますが
    慣れればそれ程苦にはなりません。
    日本にこんな作品を書ける人間がいたとは。

  • 第17回メフィスト賞受賞作。
    イスラーム教文化における話であり、やや独特な雰囲気ではあるが、明快な論理展開で推理がなされる点、知識(この本ではイスラーム教に関するもの)が多く得られる点等において、ミステリのお手本ともいうべき作品である。
    しかし、最後はメタ的な回収がなされており、読後感が不思議なものとなる。

  • メフィスト賞受賞作。
    あまり馴染みのないイスラム世界を取り上げているのが面白い。言葉での伝達が必須である本という場において、このテーマを扱うのは私には刺激的で目眩めく爽快感があったのだが…。作者の次回作が読んでみたい。(2007/07/26)

  • メフィスト賞だっつーから読んだのですが、なんつーか、うーん、コレって何?何気に評価が高いのですが、端的に言えばイスラム教という馴染みの薄い題材が功を奏したのかもしれないですね。その思想に価値は無いし、ミステリとしても不十分と思いました。作者のその後の方が興味がある。むしろ何故この後作品を発表しないのか、その辺りが気になります。

  • スーフィーを題材にしたミステリー。幻想小説っぽい。

  • 第17回メフィスト賞受賞作。イスラムの世界をテーマにした幻想的な雰囲気が漂う作品で非常に面白かったです。でも舞台はイスラムなんだけど、どこか禅的な感じをうけましたね。

  • ▼見事です。痺れます。▼京極風に言うと「見事な領解也(<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062732475/ashitaba-22/ref%3Dnosim/249-9999259-2418747">鉄鼠の檻</a>)」です!京極夏彦氏の作品で「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062732475/ashitaba-22/ref%3Dnosim/249-9999259-2418747">鉄鼠の檻</a>」が一番好き、っていう人はきっと気に入ってくれると思います。▼中近東のエキゾチックな匂いがします。蠱惑的でファナティックで浪漫。▼密室そのものがテーマを内包し切っている作品は大好きです。「火蛾」もその内の一つですね。素晴らしい勢いで、密室が宇宙として完結しています。

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火蛾 (講談社ノベルス)の作品紹介

十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のため、アリーと名乗る男を訪ねる。男が語ったのは、姿を顕わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山の、閉ざされた穹廬の中で起きた殺人だった。未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する。第十七回メフィスト賞受賞作。

火蛾 (講談社ノベルス)のKindle版

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