QED 式の密室 (講談社ノベルス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061822290

感想・レビュー・書評

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  • ※2008/2/16 ブログより転載

     薬剤師・桑原崇、通称タタルの学生時代の話。
     学食で出会った陰陽師の末裔・弓削和哉。
     昭和31年に起こった祖父の自殺を、彼は殺人だと信じている。友人・小松崎の叔父が事件を担当した刑事であったこともあり、過去の事件の真相に向かいアームチェアディテクティブを始める。

     結局このシリーズは、著者の見識の披露に終始してしまうところがねぇ。
     出てくるのは蘊蓄ばかりで、それがどれだけ事件に関係してくるのかというと・・・!?
     確かに読む人が読めば、あの蘊蓄がなければ推理のエビデンスがーという人もいるだろうけれど、わたし的には、多少は面白くても、ここまで多いとちょっと食傷気味です。ハイ。

  • 過去の事件の回想。
    いつもの店で飲みながら桑原と小松崎の出会いの事件を奈々に語ります。
    今までとは違う話の広げ方で面白かったです。
    安倍晴明の使う式が何だったのかを事件と絡めて桑原が説明しますが殿上人の傲慢さに辟易します。

  • シリーズ第5弾。ここから「他の巻と繋がり」を密接に持つようになります。さて、主人公桑原が大学時代に受けた事件を話すところから物語は幕を開けます。「陰陽師の末裔」を名乗る家の当主が密室で変死体となって発見されます。事件は自殺として処理されるのですが、被害者の孫・和哉は「目に見えない式神による殺人」説を主張。彼の相談を受けた桑原は事件(以外の何か)に興味を持ち、今回も事件はほぼそっちのけで調査に乗り出すのですが・・・ 
とまぁ、後の「Ventus」シリーズの先駆けとも言える作品です。

  • 珍しく過去の事件と桑原・小松崎の馴れ初めシーン

    高田崇史と鯨統一郎の蘊蓄はどこまで信じていいやら悩む

  • あっさり目ゆえにこの評価、
    いつもこの作品は結構読者をせめてくるので

    ただし、犯行内容は非常に考えさせられるものです。
    それと祀るものに関しての内容も
    結局言ってしまうと…なのです。
    人なんて所詮、と思うことでしょう。

    犯行に関しては割とシンプルです。
    できる人が限られてしまうが故ですね。
    ただし、そこには人の思惑がたくさん絡んでくるのです。

  • QEDシリーズ、第5弾。

    家にあったので、シリーズの途中の巻ですが、読んでみました。
    密室殺人を、安倍晴明が操ったと言われている式神を題材に解き明かしていく。
    このシリーズは、歴史に絡めたミステリーのようなので、全部読んでみようかなと思いました。

  • 安倍晴明と式神と、過去の密室殺人について。
    事件は短編ぐらいの内容ですが、見えないという証言が偽証でない理由と、平安時代からの身分制度、差別のリンクは非常に興味深い内容であった。

  • QED-5。
    死神について。括弧内の括弧内の話で時系列がいったりきたり。もともと薄い本。C0293

  • 2000.01.01

  • 日本の怨霊文化を学ぼう。鬼、河童、浦島太郎、他、物の怪の正体がわかる。「もののけ姫」の見方もだいぶ変わります。


     
     やけに薄いなぁ。と思ったけれど、とても濃かったです。なんか次回作への布石って感じで、、、嵐の前の静けさのようにも感じる。いや、過度な期待はしないでおこう。

    _____
    p11 本居長世
     『とおりゃんせ』の作曲者。作詞は不明。本居宣長の子孫。
     『とおりゃんせ』
     通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの細道じゃ
     天神様の細道じゃ ちょっと通してくだしゃんせ
     ご用の無い者通しゃせぬ この子の七つのお祝いに
     お札を納めに参ります 行きはよいよい 帰りは怖い
     こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ

     この歌のモデルは埼玉の川越にある三芳野神社である。在原業平が東下りした際に訪れた「三芳野の里」がそうであり、ここは太田道灌の建てた川越城の敷地内にあった。城の敷地内であるから警備が厳重で、神社から出る時には盗難物が無いかチェックされた。だから、行きはよいよい、帰りは恐い、と言われている。

    p14 野見宿祢
     相撲の始祖。また、天皇薨去にともなう殉死を廃止させるため、埴輪を埋めることを考え出した人物。
     菅原道真の始祖として紹介される。宿祢がこの埴輪の功績から垂仁天皇から土師氏という姓をもらい、その子孫に菅原家がある。
     野見一族が埴輪を考案したのも、必死だったからだろうと崇は言う。きっと殉死で一緒に埋葬されるのが自分たちになる可能性があるからである。
     土師というのもハニワの「ハニ」から来てるっポイ。野見氏の由来も「叩頭(ノミ)奉る」という土下座を意味する言葉から来ているのではという説。それほど身分の低い氏族だったのだろう。もはや人とはみなされていなかったのだろう。

    p17 菅原の出自
     差別的な名前である土師氏は光仁天皇のころ(781)、自分たちの住む地名に改姓を遂げた。それが菅原氏。これから四代下った道真は学問で実力を発揮して官位を得るまでになった。

    p18 天神参り
     天神参りは怨霊を恐れた朝廷が罪滅ぼしのために始めたように感じるが、差別によって辛酸をなめさせられてきた人々が、朝廷に抗した道真公の恨みを忘れないようお参りを続けてきた、このようにも解釈できる。こわい。
     朝廷も天神参りは禁じただろう。だから、天神参りに出た人は、関所で厳しく調べられる。行きはよいよい、帰りは怖い。のだ。

    p110 鬼の高位
     鬼は神という感じよりも上に来る。鬼神という言葉はあっても、神鬼という言葉はない。普通差別用語の鬼が神という言葉の上に来るとは考えにくい。ということは、深読みのし甲斐がある。

    p111 青丹(アオニ)よし
     「青丹よし 奈良の都は咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり」万葉集:小野老
     色とりどりの花がきれいだなぁというのんきな歌でもないらしい。ここに出てくる「青」は「砂鉄」、「丹」は「水銀」である。

    p112 播磨の国
     陰陽師と播磨の国はかかわりが深い。
     古事記や日本書紀では「針間」と書かれている、播磨の国は踏鞴(タタラ)との関係性がある。そもそも播磨周辺はかつて砂鉄の産地だった。
     針は一つ目、踏鞴場の工員は片目が潰れた者が多かったらしい。高熱の炉の火加減を覗く工員は職業病として片目がイカレてしまうらしい。その工員と針がリンクする。
     タタラ法師という言葉からダイダラボッチという物の怪が想像された。
     楽楽福神(ササフクジン)という神様がいる。これも踏鞴場に関連するらしい。楽楽は砂砂つまり砂鉄を吹く神様ということらしい。
     ひょっとこも火吹き男である。

     踏鞴場というのは朝廷に差し押さえられた土地である。当時の金属は兵器の原材料である。だから朝廷は踏鞴場を危険視して、差し押さえたのである。
     陰陽師はそこ(播磨)から追放された占星術師たちだったのである。という説。

    p114 素戔嗚命
     素戔嗚命でもある牛頭天王が播磨国飾磨郡の白幣山に祀られていた。素戔嗚命といえば、ヤマタノオロチを倒した武神である。
     天皇家の武神が播磨でヤマタノオロチを倒した。さてここには何が暗喩されているのだろうか…。

    p115 赤鬼、青鬼
     赤は丹(水銀)、青は砂(砂鉄)であった。つまり、水銀の産地の民は「赤鬼」、砂鉄の産地の民は「青鬼」であったのだ。彼らは朝廷に踏鞴場を追放され、さらに差別されたのだ。

    p116 てるてるぼうず
     てるてる坊主は「日知り(ヒジリ)」である。「聖」とよばれる坊主はかつて「日知り」であり、占星術や呪術を使う怪しい人々で被差別民だったといわれる。
     テルテル坊主も日を知るためのもので、軒下に吊るされる。テルテル坊主の童謡は、1番で晴れたら鈴をもらい、2番で晴れたら甘酒をもらい、3番で雨なら首を落される。この3番は隠されることが多い。実は怖い。
     きっと、かつての聖も貴族のために占いや呪術をして、うまくいけば褒美がもらえて、失敗したら殺されていたのだろう。

    p118 地名
     出雲は雲が出る土地、つまり、蜘蛛が出る土地なのである。和泉は「出づ巳」蛇が出る土地。
     「屠り苑」という誅滅の場は「羽振苑」という地名だし、追放者が逃げる際に恐怖で脱糞したと言われる土地は「楠葉」(くずは)と呼ばれる、大阪の枚方の楠葉地区のことである。
     関西の地名はいわれがすごくすごいなぁ。

    p120 八
     八という字は「末広がり」で縁起のいい数字と言われるが、裏があるそうです。
     八はもともと二つに分かれる象形の意味がある。また、八は公式に捌と書かれる。手で、物を別れさせる。「分」という漢字だって「八」を「刀」でわけている。あ、ヤマタノオロチも八つの頭を持ってるな。

    p121 きつね
     「きつね」は「鬼衆根」「怪衆根」である。また「夜の者」とか呼ばれていた。つまり黄泉の国の人である。
     日本霊異記では、きつねは「来つ寝」で遊女のことだった。
     狐もかつての被差別民の蔑称であるが、非人の行きつく先はむごいなぁ。

     安倍晴明の母親はこの狐衆だったらしい。(p117)晴明の母親は信太森の狐ー葛葉姫ーだと言われてきた。信太森は大阪の和泉市の北麗台地にあるが、かつては小竹田と書いてしのだとよばれた。そこの信太森葛葉稲荷神社というところがある。
     晴明の母はキツネだったのである。

     稲荷は踏鞴場に関連がある。ここでも!?
     稲荷は「稲成り」といわれるが、「鋳生り」「丹生り」が本来の意味ではないかという説もある。だから陰陽師の晴明の父とも関係があったのであろう。
     出づ巳の森の狐:葛葉姫の子供である晴明は式神使いだった。その彼が使う式神とはなんだったのか!!??

    p124 鬼ごっこ
     鬼ごっこは鬼が逃げ手に触れば鬼が移る。いや、感染する。これは差別民である鬼たちに対する人々の関わり方を表す姿が、無垢な子供の遊びになった、純粋な残酷遊戯なのである。

    p124 式神
     式神の「式」は「使鬼」であり、「死鬼」である。
     安倍晴明は式神使いとして、鬼を使役していたのである。

    p126 人には見えない
     当時の貴族にとって被差別民は人に非ず、だった。だから「人には見えない存在」だったのである。
     晴明は狐の子供だったから差別民とも付き合えたのである。それが「鬼の見える男」になったのである。

    p129 晴明の功績
     晴明には数々の不思議な力エピソードがある。
     花山天皇の出家を見送った際に勝手に開閉した門扉のエピソード、人ならぬ非人がやっていたのだろう。
     蔵人の少将がカラスの糞を当てられて呪いをかけられたのを救ったエピソード、カラスは「河原衆」のことで、それを晴明の鬼が退治したのだろう。
     道長が法成寺に参内しようとしたら連れていた犬がそれを拒み、晴明に占わせたところ呪詛があり、それを解いて道長を救ったエピソード、イヌは朝廷の犬のことで、出自は鋳奴(イヌ)なのであろう。

    p131 浦島太郎
     安部晴明には童たちから亀を救いだし、龍宮にいったという伝説がある。まんま浦島太郎である。
     この時、晴明が救ったのは「オカメ」のことだろう。岡目は「宇賀女」でもあり、宇賀神は蛇の神である。つまり岡目は蛇の女、被差別民なのである。
     その被差別民を助けた晴明は、龍(蛇)の城に招かれ歓待されたのであろう。

    p132 晴明は秘密警察
     晴明は被差別民を使って表沙汰にできない公安活動を司った役職だったのだろう。世の中、キレイごとだけではやっていけない。まして、陰謀渦巻く平安の貴族社会では闇の者も大活躍だったに違いない。
     
    p133 差別の主犯
     差別の主犯は誰だろう。そんな階級社会を作った特権階級の者だろうか。いいや、そうでない、主犯はマジョリティである中間層である。
     少数の特権階級の横暴もみんなが抗議すれば打ち破れる。しかし、自分より下がいるという感覚は安心感を生んでしまう。その誘惑に負けて、差別を肯定した中間層が主犯と言えよう。

    p135 騙り
     「物語り」は「物騙り」なんだろう。 そのストーリーの裏側にはどんな真実が隠されているのかわからない。
     
    _______


     いやぁ、ほんと今回良かった。

     すごい濃厚な読書時間を過ごせた。

     いや、こんなの想像でしかないんだろうけれど、想像できるってことは可能性は微レ存なわけで、むしろ、その想像したことの方が信憑性があるっていうのが良いよね。

     安倍晴明はかつての攻殻機動隊だったんだな。さしずめタチコマは鬼ってか?そういえばあいつらにも角はある。


     踏鞴場が出てきて真っ先に思ったのが、宮崎駿の「もののけ姫」であった。あそこに出てくる人々は確かに差別を受けているような人たちだった。
     それを攻めているのは産鉄能力を奪いに来た朝廷軍だったのだろう。

     あそこに登場したジコ坊もどうやら忌み嫌われた存在だよな。
     もののけ姫のサンはオオカミに育てられた蜘蛛の子供かな?? アシタカも同じく山奥に住む部落民だったのかなー。なんてね!


     これを読んだら関西地方に行きたくなりました。

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著者プロフィール




「2023年 『江ノ島奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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