キマイラの新しい城 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 400
感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061823914

感想・レビュー・書評

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  • 石動シリーズ最後の作品。
    期待して読み始めたのだけど…少しふざけた雰囲気があって戸惑いました。何となく
    シリーズ二作目の「黒い仏」を思い出す。読後はさもありなん、ですね。
    「美濃牛」で虜になり一通り読み終えました。こういう感じも嫌いじゃないけど
    美濃牛ばりを求めてしまう。真面目におどろおどろしい作品、書いて欲しかったな~

  • 石動シリーズの最終巻であり、絶筆作であると読後に知りました。
    つまり、主人公が石動と知らずに読み始めました。
    切り口が面白かったので最後まで読めましたが、個人的に西洋史などの歴史モノが得意ではないので、若干読むのが厳しかったです…。
    「トリックに驚く」という展開でなく「収まるべきとろこに収まった」という終わり方でしょうか。
    そこひっくり返してくるかーとも思いましたが、いまいちピンとこなかったのがこの評価です。

    阿呆ミステリと言われてるのか、なるほどそうかも。

  • ファンタジーミステリ。
    アントニオのハイスペックに対して、すっかり道化然としてきた石動。
    六本木ヒルズでの活劇などが新鮮で、群像劇色が強い。
    キマイラの壁画が思ったほど活きてこなかったような…?

  • オチの独白が良かった

  • おもしろい。現実的な解答を提示してからひっくり返すこの構造は『黒い仏』と似ている。バカだな〜とは思うけど、それ以上に好きが勝る作品。

    イタコの石動パートの推理で笑った。最高。思うに、私は常に作者に弄ばれたいんだろう。

    「最も初歩的な誤謬は、論理を常に日常的・現実的なものとみなすことだ。実際には、論理はどんな非日常的・非現実的な要素にも適用できる。……」
    まさに『キマイラ』のオチそのもの。名探偵、かっこいいなあ。

  • 殊能さんの最高傑作はやっぱり『ハサミ男』かもしれないけど、本作品は読んでいてワクワク感が止まらなかったし、すごくすごく楽しかった。
    個人的嗜好で☆5つにしました。

    まず設定が楽しい。
    廃墟と化した中世フランスの個人の居城「シメール城」を千葉に移築してアミューズメントテーマパークにした社長に、成仏できずにその城に取り憑いていた城主エドガー・ランペールの霊が憑依した。しかもランペール氏、城内で何者かに殺害されたらしく、犯人が分からないと成仏できないという。
    社長は仕事が嫌になって霊に取り憑かれたフリをしていると思い込む重役たち。その一人大海常務は、状況打開のために石動にその「殺人事件」の解決を依頼する。

    750年前の殺人事件の解明なんて石動も面食らう前代未聞の依頼だったのが、実際に社長秘書が殺されたりしてホントの(?)事件になってゆく。
    その上、ランペール氏の肉体であるところの江里氏は何やら険悪な別の事件に関与してるっぽいことも見えてくる。

    急に現代日本を体験することになるランペール氏だけど、取り憑いたかりそめの肉体が今直面してる状況や意味不明な外国(日本)の単語の数々を、分からないなりに想像力で補い、沈着冷静に対応するところに好感が持てる。
    時々挿入される彼が十字軍に参加してからの人生の回想から、頑固だけど信仰心の篤い純粋で高潔な人物像が浮かび上がる。
    (多分中世フランス史に詳しい人はもっと楽しめると思う)
    トキオーンのロポンギルスとか最初ホントに何のことか分からなかった(笑)。ロポンギルスのビルや彫刻やショーウインドウに驚くランペール氏も楽しかったし、そのロポンギルスで繰り広げられる痛快なアクションシーンは、映像が目に浮かんで、誰か映画化して欲しいと思った。
    でもこれはロポンギルスのシチュエーションを知ってるからこそ得られる感想だろうなぁ。

    実は大オーミはイイ人そうで有能だったり、親切な青年カゲキ殿とか、脇役陣も充実してる。
    江里氏が悪人ぽかったのは残念だったけど。

    それに引き換え石動はこれまでに輪をかけて無能!
    最後は他力本願!
    こんなに探偵が無能なミステリってあるだろうか。

    その、石動が頼った水城の推理が、シメール城90度間違って再建されてたっていう「そのパターンかい!」と思わせてからの、そんなポカやるわけないだろうってオチまでの、1人ボケツッコミみたいな流れで、どんでん返しがさらにどんでん返ったみたいなエセ感覚も堪能できる。
    そんなとっ散らかったストーリーなのに、結末でランペール氏の死の真相と、彼が人生で得た無常観を見せられて、ロポンギルスの一件なんか彼の凄惨な経験からすれば取り乱すことでもなかったんだろうなぁと、ちょっとしんみりして終わる。
    楽しいところは楽しく、締めるところは締める、エンターテイメント感満載の作品だった。

    石動シリーズは、『黒い仏』で本を床に叩きつけ、シリーズ読破を挫折した人も多いと思う(個人の感想です)。
    でも本作品は、『黒い仏』のアントニオの設定を前提に話が進むし、終盤に『鏡の中は日曜日』の水城優姫が電話出演したりして、頑張って(?)シリーズ読んできた人にだけ与えられるご褒美みたいだった(笑)。
    こんなに楽しい作品なのに、シリーズモノのひとつであるがために埋もれてしまってる気がする。このシリーズをここまで読んだ人はどのくらいいるんだろう。
    作者が故人で絶版だから更にアクセスしづらいし。
    勿体ない。
    ていうか、『黒い仏』のおかげでこのシリーズは、シリーズモノとかミステリとかを縛ってる暗黙のルールから「自由」になれたんだと思うんだ。
    もう何でもアリ、みたいな治外法権を獲得した、ミステリ史における稀有なシリーズと言っていいんじゃなかろうか。
    『黒い仏』読んだときは正直ドン引きだった私だけど、ここに来てあの作品の偉大さを思い知った(笑)。

    もう続きを決して読むことができないのは、本当に残念でならない。
    今更ながら、殊能さんのご冥福をお祈りします。

  • 過去の既読本

  • 石動シリーズ5作目。
    750年前に殺された古城の領主、エドガー・ランペールの霊がテーマパークの社長に乗り移って、その霊から自分を殺した犯人を突き止めて欲しいと依頼された石動…というトンデモ設定。エドガーの目から見た現代日本の描写がとにかく面白くて噴く。タイカレーを「地獄の泥」と呼んだり、信号待ちしている自動車を見て「獰猛そうな怪物だが従順な気性であるらしい」と思ったり、思わず六本木ヒルズで検索かけて蜘蛛のオブジェを見たりしてしまいました。
    密室殺人のオチは前作「樒/榁」以上にひどい(笑)真剣に読んでいると肩透かしを食らうこと必須ですが、石動の愛すべきおとぼけ探偵っぷりやコスプレ大会が楽しかったからよし。水城さんはかっこいいなぁ。
    このシリーズを読み始めた当初「探偵が空気過ぎたので以降探偵の活躍に期待」というレビューを書きましたが、まさかの斜め上の活躍を見せてくれた石動さんでした。もっとたくさん石動シリーズが読みたかった。

  • とても変なミステリ小説.
    探偵が密室殺人のロジックやミステリの歴史をとうとうと講義するかと思ったらかなり変な謎解きをはじめて,かと思えば十字軍騎士の目から見た現代日本の描写(六本木ヒルズのところは笑える).

    主役の騎士の最後の描写は,この小説を書いた著者がしたこととかぶって見える.

  •  久しぶりの石動戯作シリーズ。シリーズ初めから読み直したくなった。相変わらずアントニオがカッコいい。
     設定というか、話の筋が非常に面白い。七百五十年前に死んだキリスト教騎士が現代の人間に取り付いて、自分の死の真相を明らかにしようと探偵に依頼する。それを解明している途中で本当に殺人事件が起こる、と。
     石動さんはやっぱり中途半端。探偵ではあるだろうが、名探偵ではないな。そんな感じ。能力的に上の人間がいるっていうのもおもしろいね。
     騎士の目線から見た現代が非常に上手く書き込まれてた。バイクを「バイク」という名の馬だと思ってたり。すそが短い上着に、丈の長い袴、首に細長い紐の飾りって何のことかと思えばスーツじゃん。スーツにネクタイじゃん。
     物理トリックと言うか、話に仕掛けられたトリックと言うか、その辺りも十分に楽しめる。やっぱり、結末はくるくる回らないと。ミステリってのは上手いどんでん返しが入ってこそだなぁ。
     しかしこの本、一番驚いたのは巻末の参考・引用文献一覧。……この人、すっげー勉強してる。

    04.08.12

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著者プロフィール

1964年、福井県生まれ。名古屋大学理学部中退。1999年、『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞しデビュー。著書に『美濃牛』『黒い仏』『鏡の中は日曜日』『キマイラの新しい城』(いずれも講談社文庫)がある。 2013年2月、逝去。

「2022年 『殊能将之 未発表短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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