あした天気にしておくれ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.53
  • (30)
  • (67)
  • (107)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 558
感想 : 52
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061838093

作品紹介・あらすじ

競馬界を舞台にしたミステリーの最高傑作。北海道で3億2千万円のサラブレッド「セシア」が盗まれた。脅迫状が届き、「我々はセシアを誘拐した」で始まる文面は、身代金として2億円を要求してきていた。衆人環視のなかで、思いもかけぬ見事な方法で大金が奪われる。鮮やかなトリックが冴える長編会心作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とてつもなく高価なサラブレッドを輸送中に起きた、アクシデント。
    事故を隠蔽すべく、ある計画を実行したところ、謎の脅迫者があらわれる。

    江戸川乱歩賞最終候補作を修正した作品。

    完璧だったはずの狂言誘拐が、さまざまな要因で、歯車を狂わせていく。

    秘密の計画は、なぜばれたのか。
    脅迫者は、誰なのか。
    そして、もっとも難易度の高い身代金の受け渡しは成功するのか。

    不可解で、はらはらさせる展開が、おもしろかった。

    競馬の知識がなくてもたのしめるけれど、知っているともっとおもしろいんだろうな、と思う。

  • はじめは馬の取り替えでホームズの銀星号事件かと思ったが全く違ってました。
    二重に重なる流れは一気読みです。
    最後に〇〇さんのその後が気になります。


    なぜか江戸川乱歩賞を落選した、競馬界を舞台にしたミステリの最高傑作。北海道で3億2千万円のサラブレッド「セシア」が盗まれた。脅迫状が届き、「我々はセシアを誘拐した」で始まる文面は、身代金として2億円を要求してきていた。衆人環視のなかで、思いもかけぬ見事な方法で大金が奪われる。犯人たちの「裏の意図」とは。そして、「裏の裏」の出来事が! 『焦茶色のパステル』の前年に江戸川乱歩賞に応募、刊行はデビューの翌年1983年に刊行となった。(講談社文庫)

  • まさしくノンストップ。次々と変化していく展開には一寸の隙もなく、読者を全く飽きさせない。

    前半は倒叙モノ、そして犯人の計画外の事件が起こり、もう1人の犯人が捕まったら自分も捕まってしまうという動機により中盤からは犯人=探偵役の構図へとすり替わる。
    徐々に朝倉に感情移入していき、気づいたときには"バレるな"と思っている自分がいる。
    倒叙モノはあまり読んでいないのだが、やはりこれが倒叙モノの醍醐味だろう。

    だがやはり本書の見どころは身代金の受け渡しのトリックだと思う。
    犯人が馬券を買うことを指定してきたときにようやく気づいたが、このトリックにはかなり驚いた。
    直接お金を受け取るというわけではなく、間接的に得をする。複合馬券の引き換えという問題は残るが、かなり安全性の高いトリックであることは間違いない。
    岡嶋二人の良さが非常によく出た作品。

  • ほのぼのした雰囲気ではあるけれど
    立派なミステリーです。

    人が死なないミステリー。
    素敵です。

  • 岡嶋二人、2冊目。前に読んだかどうかも忘れているが、多分これは初読み。

    3億2千万円の2歳馬(今でいう1歳)が輸送中の事故で骨折し、共有する他の馬主にそれを隠すために、馬の誘拐事件をでっちあげる。

    20世紀にセリで3億円以上した高馬というとサンゼウス(3億6050万円)を思い出すが、サンゼウスは1988年生まれなのでこの本が書かれたよりもずっと後。
    時代的にイメージに近い馬というと1979年生まれのハギノカムイオーだけども、カムイオーは1億8500万円だもんな。まあ、いいけど。

    どんな計画かも知らされていないながら、こちらも主人公になった感じで読み進め、警察の捜査に加えて謎のスカGの女が絡んで、結構キリキリする展開。

    馬の誘拐というとシャーガー事件(1983年2月)を思い出すが、馬を誘拐してもレースに出したり種付けしたり出来るわけでもないし、飼っておくだけでも大変だし、あまりメリットはなさそうな。
    まあ、本作は狂言だからあまり関係ないけど。

    それにしてもこの本が書かれた頃は丁度私が本格的に馬券を買い始めた頃だが、青色のゲートなんて懐かしいね。東京に右回りのレースがあったことは知らなかった。
    ユニット馬券やオッズ表示のことなど今から考えると隔世の感だが、それをうまいことトリックに利用していて、、、このトリックを見て、この本を読んだことあるのに気がついた…。
    私の記憶には、このトリックと該当のレースが終わった後の寒々しい競馬場の風景しか残っていなかったのだが、一頭の馬に対する多くの人の思惑が二重三重に蠢いて事件を形作っていたことが明らかになる作りこそが、本作の値打ちだったのを改めて思い知った。

  • 本作は競馬場と北海道の牧場が舞台背景です。北海道の牧場で起きたほんの小さな事故が発端になり東京~北海道でエリートサラブレッドの行方を廻って馬主・警察が犯人を追う物語です。

     まず、感心するのは今回誘拐?盗難?された素材が「馬」である事、普通?(犯罪に普通も常識もないでしょうが)盗むなら現金や換金性の高い物を選びますが犯人が盗んだのは転売も出来ない登録が必要な馬主となってレース出場も叶わない事がはっきりしている素材を扱った小説であると事です。

     著者は競馬好きとの事で本ミステリーを執筆したとの事ですが盗難に至る真の理由や2重に張られた犯罪トリックと身代金の行方等が新鮮な上に本ミステリーは他とは違い人が殺されないので陰湿な感じが無いのも1つの特徴です。

     競馬場や競走馬が舞台ではありますが、競馬素人でも全く問題なく楽しめる内容で一風変わったプロットに衝撃と感動を受けること間違いありません。。。

  • 「焦茶色のパステル」に勝るとも劣らない傑作。別の作品にあるのかもしれないが、オッズの仕組みを利用した身代金の受け取りなどは本当に鮮やかで、何か爽快な気分になった。終わり方が少し気に入らないが、そんなことは些末に思える素晴らしい快作。

  • この作家さんは誘拐ものが得意なのだろうか。
    99パーセントの誘拐も興味深かったが
    意表をつくトリックでひきつけて次々と巻き起こっていく事態に目が離せない。
    伏線の回収が少し曖昧だったのか、読後感がすっきりしないのが☆みっつ。

  • 高額の競走馬が移送中に事故で骨折し、それを隠ぺいするために競走馬の身代金誘拐事件を偽装。倒叙形式で1日ごとにその様子が描かれ、その中に意表を突く出来事を2つ盛り込み、クライマックスである身代金引き渡し当日の土曜日へと突き進んでいく展開は無駄がなく、引き込まれる内容であった。
    「第6章 金曜日」が終わった時点で、犯人がどうやって、安全に身代金を詐取するのかを考えてみて、ひとつの方法が思い浮かんだ。ヤマ勘にすぎないが、結果的にほぼそのとおりの方法であった(細かい計算はしていないし、詳しいシステム上のことまではわからなかったが)。映画「スティング」のような、意表を突く、鮮やかな手際だ。
    主人公がその事実に気づいた後、さらにいくつかの疑問点が示されるが、そちらの真相の方は伏線があちこちに散らばっていて、わかりにくい。
    主人公の朝倉は、事件のからくりを見抜いたり、犯人がこれから取る行為の危険性に気づくなど、鋭いところもあれば、北海道に行った際に尾行のことすっかり忘れていたり、ある人物の正体を勘違いするなど、迂闊なところもある。

  • 2017年5冊目。
    競馬三部作の中でもダントツに面白かった!!!他の2作品に比べるとやっぱり競馬の知識がないともしかしたらイマイチ入り込めないかなーとは思うけど、昔競馬をかじっていたおかげでより楽しめたと思う。
    いやー、早く続きが読みたくて読みたくて。朝倉に同調してなんだかあたしまで胃が痛くなるような思いをしながら一気に読んでしまった。
    これが事実上の処女作かー。やっぱり岡嶋二人はすごい。
    あたしは、ホント去年初めて名前を知ってハマったばかりなので、作品がかなり前に書かれたことを承知で読んでいるから、このトリックが今実現可能かどうかというところはあまり重要視していない。それよりもどんでん返しが続くこのストーリーそのものに魅力を感じてる。うん。これもう一度読み直したい。

全52件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

岡嶋 二人(おかじま・ふたり)
徳山諄一(とくやま・じゅんいち 1943年生まれ)と井上泉(いのうえ・いずみ 1950年生まれ。現在は井上夢人)の共作ペンネーム。
1982年『焦茶色のパステル』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。86年『チョコレートゲーム』で日本推理作家協会賞を受賞。89年『99%の誘拐』で吉川英治文学新人賞を受賞。同年『クラインの壺』が刊行された際、共作を解消する。井上夢人氏の著作に『魔法使いの弟子たち(上・下)』『ラバー・ソウル』などがある。

「2021年 『そして扉が閉ざされた  新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡嶋二人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×