青春漂流 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061842236

作品紹介・あらすじ

一度は挫折し方向転換した若者たち。その大胆な選択が成功だったかどうかを語ることはまだ出来ない。何しろ彼らは、迷いや惑いの青春の真っただ中にいるのだから。自らも不安や悩みの放浪の旅から自己確立をしたという著者は、職業も種々な11人の若者たちと夜を徹して語り合う。鮮烈な人間ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 今から10年程前、今の夫と出会って二回目にこの本を渡された。彼のポケットから出てきた本だった。この当時、彼はなぜかこの本を何冊か買い、事あるごとに、人に渡していた。
    私はちょうどその時、大手企業で寝る間もなく働き、自分のやりたい事など忘れてしまい、なんとなく周りの人間に遜色なく生きることに精一杯で、同時にどこかに違和感を覚えながら苦しんでいたときだった。彼はなんとなく手渡した本だったのかもしれないが、私にとっては人生にとって私という人間が生きる上で何をしたいのかを気付かせてくれる本になったことは間違いない。そして彼もまた、この本と出合ったことで、自身の仕事をリスペクトし、その意義を再確認しながら突き進んでいたのだろう、と思う。

    この本の中では特に、猿回しやレコーディングミキサーという職業が印象深い。そのような職業に明るくなかった、もしくは考えたこともなかったからだ。それぞれの人生で何を極めるか、それはそれぞれの環境に影響されもちろん多種多様である。何も考えなければ私のようになんとなく大手企業に入り、なんとなく親が安心するのであろう人生を歩めば良い。それで違和感なく生きられるのならそれで良い。ただ私には、早朝に半分眠りながら始発で電車に揺られ、同じように疲弊した人間たちとずらずらと就業場所まで向かい、同じ服を着て、決められた時間に昼食を取らされ、また終電まで仕事をする、この日常は死んでいるに等しい期間だった。私である必要があるのだろうか、というような疑念がずっと私の中にはあった。

    この本と出合い、転職をした。この後、何度も転職を重ねることになる。日本の社会では転職を重ねることはあまり好ましくないとされる。あれから私は模索を続け、もがきながらも見えない何かに向かっていた。かなり遠回りをしたが、今思えば、この本と出合った時に、行き着きたいゴールは私の中ではすでに見えていたようにも思う。そのゴールは、今となってはやっと辿り着いた私のスタート地点となった。遜色なく生きることなんて、なんとも無意味なことで、シンプルに自分の気持ちの通りに生きること、ただそれだけだった。

    人生の岐路に立った時にこの本を読みたいと思う。何度読んでも良い。器用な生き方は私にはできない。だからこそ、人生の岐路に立つのは一回じゃなくて良い。一つ進んで、また新たな岐路に立ち、この本を読むとまた違う道が見えてくる、そのように思う。

    そして今またこの本を読みたいと思える。自分はこの本を読み直すことで、新たなフェーズに進めたんだなと感じることができる。

    あの時、私の状況や心境を彼が知っていたとは思えない。自分自身もまだ、気付いていなかった。ただなんとなく渡さなければならない気がしたのだろう、と思うようにしている。

    私も同じように、人にこの本を手渡すことがある。もし感じるものがあればと思った時に、同じようになんとなく手渡すようにしている。ある人は影響を受け、ある人は退屈に思う。それはその人の状況にもよるかもしれない。ただそのタイミングが一致した時に、何か見出すことができたらいいなと願う。

  • テーマは「謎の空白期間」
    著者の立花隆氏があとがきで書いているように、各分野の第一人者である彼らが、向こう見ずにも後先考えずに(と見える)大跳躍を遂げるそれまでの「謎の空白期間」を明らかにする試みのインタビュー。

    さすがに、ちょっと人とは違った生き方を選んだ剛の者たちなので、その人生観や信念はとても興味深く、面白い読み物だった。

    85年刊行だから35年も前のはなしだが、決して古臭くないし、むしろ新鮮でもある。

    しかしあのソムリエの田崎真也氏を若者、ととらえたインタビューなんだからそりゃもう、ね。

  • かっこいい。
    自分の人生を語ることが、そのまま人生論になる人生。
    情熱をかけるべき対象を追い求めるのは、素晴らしい。

  • ```
    自分の人生を自分に賭けられるようになるまでには、それにふさわしい自分を作るために、自分を鍛え抜くプロセスが必要なのだ。それは必ずしも将来の「船出」を前提としての、意識的な行為ではない。自分の求めるものをどこまでも求めようとする強い意志が存在すれば、自然に自分で自分を鍛えていくものなのだ。そしてまた、その求めんとする意思が十分に強ければ、やがて「船出」を決意する日がやってくる。
    (p227 エピローグ)
    ```


  • 非常に読み応えのある一冊で、一人一人のストーリーが面白かった。

    空海の謎の空白期間。
    それを立花隆は、『青春の謎の期間』と位置付ける。青春とは、立花隆にとって社会で活躍する前の準備期間としている。

    ガムシャラに働き、ガムシャラに悩み、それでも自分の信じる方向性を追い求める。

    空海は、無名の私度僧だったけど、結果的に今の日本の仏教の基礎を作った。

    自分も今はそんな青春の真っ只中にいるのかもしれない。だから、ガムシャラに悩んで、ガムシャラに頑張ればいい。

    恋愛も仕事も分からないから、ガムシャラにやれば良いんだ。そう思う。

  • 青春とは...?
    
    著者の言葉を借りると「あらゆるの失敗の可能性を見すえつつ大胆に生きること」
    
    それが青春であるかどうかなど考えるゆとりもなく、精一杯生きることに熱中してるうちに過ぎ去ってしまうのである。
    
    遮二無二がんばって、ある日ふと過ぎ去った青春に気づくものなのかもしれない。
    
    「恥なしの青春、失敗なしの青春など、青春の名に値しない。」
    
    この言葉が特にジーンときた。
    
    何者でもない自分という存在に苦悩し、生きる意味を必死で追い求め続けた若者達がどのような道を選んだのか。
    
    精一杯生きようとする人にとって何らかの道しるべとなってくれる本だと思う。

  • 立花隆をちょこちょこ読んでいるうちに出会った本。
    ちょっと古いですが、立花隆らしからぬわかりやすさ(笑)かつ深い。。

    当時、20歳前半~30歳代の
    青春時代まっただ中を過ごした人たちが、
    これまでの人生の道のりや
    今の仕事に対する熱い思い等を語ってくれます。

    まず、登場する人たちの職業が個性的。
    ナイフ職人やら猿まわし調教師、
    自転車のフレーム・ビルダー、鷹匠…etc。
    猿まわし調教師の村崎さんとかソムリエの田崎さんとかは、
    テレビにも出ていたこともあるので知っている人も多いと思います。

    彼らの多くに共通していることは、
    ・学校の勉強はできなかった、いわゆる落ちこぼれ。
    ・でも、自分の熱中できる分野を見つけたら、猪突猛進!
    ・そして、その分野での知識は誰にも負けないくらいのプロになる。
    ・貧乏な人もいるが、みんな自分の仕事に誇りを持っているし、
     とても幸せそう。

    誰にでも、その他のことが全く頭に入らないくらい
    何かに熱中したことがあると思うので、
    共感できる部分が多いのではないでしょうか。

    僕の青春は終わっちゃたのかなー、と思っていたけれど、
    まだまだこれからやん!と再認識(笑)
    元気の出てくる本です。

    ちなみに、ちょこちょこっとググってみたところ、
    いくつかHPを発見したので、ご参考まで。。
    僕の計算が正しければ、彼らは40歳~50歳くらいなのですが、
    現在も現役で活躍されているようです。

    オーク・ヴィレッジ塗師 稲本裕氏
    http://oakv.co.jp/index.html
    鷹匠 松原英俊氏
    http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~Takajou/
    動物カメラマン 宮崎学氏
    http://www.owlet.net/
    ソムリエ 田崎真也氏
    http://www.tasaki-shinya.com/

  • 20年以上前の本ですが、自分はどのような進路に進めばよいか悩んでいる学生に一読してもらいたいです。
    わたしも20年ぐらい前に読んで、これから先どうするか考えました。四六時中没頭できることをする。それがいいです。
    わたしはそうすることができませんでしたが。。。

    しかし、今からでも遅くないのです。
    人には様々な生き方があります。

  • ちょっと特異なキャリアの方ばかりに紹介が偏っていると思う。普通のサラリーマンにだって何かに悩みながら挑戦して道を切り拓いている人がたくさんいると思った。
    けど、紹介されている方々の挑戦事例はどれもエネルギーに満ちていて、自分も頑張ってみようと思わせてもらえた。1988年?に書かれた本だから、紹介されている方々のその後や現在はどうなのだろうと調べる楽しさがあるのも良かった。
    著者のこと、まだよく存じ上げないが、おそらく「青春」関連が主戦場の人ではなさそう。なぜこの本を著そうとされたのかについても興味を持った。

    • ニーチェさん
      特異だからこそ取材したのでは?
      特異だからこそ取材したのでは?
      2024/04/05
  • 本書に登場する人々に共通するのは、自分の仕事にとことん熱中していることだ。写真家の方の章などを読んでいると、その働き方は完全に人間の限界を超えているとしか思えない。が、仕事に対する熱意がそれを可能にしているのだろう。
     好きなことが大事だとか学歴なんか関係ないとか無理やり一般論を導こうとする議論はどうでもいいとして、彼らの仕事ぶりを一つの事実として知ることが大切だと感じた。そこからこんなのは嫌だとかかっこいいとか思うことが個々人であるだろう。
    ちなみに、私はかっこいいと思った。彼らの底知れない熱意に憧れた。
    また、筆者のあとがきが非常に秀逸である。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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