セイフティボックス (講談社文庫 や 12-26)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 411
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061851313

感想・レビュー・書評

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  • 1988年に『週刊現代』で連載されたエッセイをまとめた本です。

    じつは長い間、著者の作品がちょっと苦手だったのですが、最近になって林真理子や田中康夫、森瑤子といった1980年代という時代を映した小説をまとめて読むことになり、著者が彼らと同じ時代に対してどのように切り結んでいたのかということがよく見えるようになったような気持ちになることができました。

    確かに本書で語られているような著者の生き方には、「消費による革命」が実現した80年代という時代の感性と響き合うところがあったのも事実だろうと思います。しかし今から振り返ってみると、著者がそうした時代に適応するような生き方をしているのではなかったことが、むしろ明確に明確になったように感じます。同じことは、著者が中沢新一との対談『ファンダメンタルなふたり』(文春文庫)の中で、松任谷由実に対して微妙な距離の取り方をしていたことにも伺えるように思います。

    上野千鶴子でさえも、80年代の「消費による革命」の限界を見抜くことができず、後に小沢雅子に教えられて『〈私〉探しゲーム』(増補版、ちくま学芸文庫)の立場を撤回するに至ったことを思うと、「同時代の感性」を突き抜けた著者の精神の勁さには驚きを禁じ得ません。

  • セイフティボックスのなかで
    「今は、色々物事が解って来て、でも、それと同時に、ずいぶん感動する要因が少なくなってきたみたいだ(中略)昔は、そういう感受性をちゃんと引き出してくれるような人々と住んでいたのだ。」
    というところがある。
    自分に重ねて考えてみてそうだよなと思い当たる。
    空を見上げたり、足元の草花を見ることもほとんどない。
    月食とか彗星とか、すでにイベントだものね。
    動物や自然と戯れるのではなく、動物や自然に癒されるようになってしまっているよね。
    ちょっとさみしい。

  • なんと30年も前に書かれたものでした!1988年が30年近く前のことになるなんて…。

    話題になっていることはちっとも相容れないのに読んでしまうのはやっぱり文章が上手だから?ところどころ芯のところでそうだそうだと思うようなところが度々出てくるのだけれども、またすぐ何処かに離れていってしまう、きっと近くにいても友達にはならなかっただろうなと思うけれど、4年後本人がすでに「かわいかったなぁ、あたし」なんて言っているくらいだから、これが若気の至りというやつか。

    村上春樹がディスコで踊っているかも…なんて想像して顔がにやけてしまう。

  • 20年ぶりに再読。
    山田詠美のエネルギーに圧倒されて、ドキドキしながら読んだ記憶がよみがえる。当時は、きわめて個人的な日々を綴る贅沢を思ったが、今や有名人となった編集者(見城徹・石原正康・小林加津子)との信頼関係を垣間見られて、読者の贅沢を改めて実感。

  • 山田詠美が週刊現代に連載していたエッセイをまとめた一冊。

    まだ私は生まれていなかったし、バブルの匂いがする。でも山田詠美の作品から感じる思想はやはりこの本からも感じる。

    小説をほとんど書かずに、エッセイと旅行とで過ごした一年間であったらしい。各社の担当編集者との「エイミーズパーティー」や、恋の話、ニューヨークやバリやインドの話。佐世保の基地近くのバーでイージーな女と見くびられ、手厳しく反論して称賛されるエピソード。香水の話など。

    自分の中にある下品さ、イージーさをなるべく小さくするよう努めたい。

  • エッセイ本。
    話は1988年の頃であって、いまとは違うところも多々ある。
    小説家としての日常生活が日々の思いと共に書かれております。
    なるほどそうだよな、と電球を頭上に浮かべたり、なーんでしょうか、と首をかしげたり。
    山田詠美視点での、世界を見るにはいい本。

    個人的にはエッセイは苦手です。

  • 読み出し早々、私の言いたいことが書いてあって
    まさに同意見で読んでてスカッとさせてくれる~。
    考え方が同じなんだよね~。

    昔、OLしてた頃、読んだけど結構忘れてるもんね~。
    でも今読み返すと、昔よりも彼女の言ってることがわかる。
    私も年なのかしら~(苦笑)

    彼女のエッセイはパワーを貰いたいとき
    そして彼女の小説はなんだかしっとりしたいときにGOOD.

  • 「私のセイフティボックスの中味はパスポートでも、お財布でも、クレジットカードでもなく、私を取り巻く人間たちのような気がする」

    そんな言葉に惹かれて購入。
    山田詠美が奏でる文章は、基本的に好きみたい。

    「お洒落や男の子のことばかり考えていて、そのこと以外に何のポリシーも持たない私である。」

    なんてサラッと書いちゃうあたりも好きだ。
    最近、本を全部読む事がなかった私が、気付けば1日で読み終わり、また本と向き合おうなんて気持ちにさせてもらった本。感謝。

  • 日本とか全然好きでもないけど、海外至上主義の人がしんどい。

    留学したことあることをちらっとでも話すと、私も私も!海外ってサイコーだよね!私ってー日本人とは感性ちがうみたいー留学いって人生変わったよー!私のHOSTfamily最高でこんなことしてくれた!…と食いついてくる人。

    帰国子女とか長期滞在組はなぜか言わないのに、半年とか一年ぐらいの短期留学に多い。

    そりゃそんな短期間で非日常だったら楽しいわ。私も楽しかったよ。
    しかしそれをがっつりアピられると、無理にブランド物買ってしまって自慢せずにはいられない人見てるみたいな、可哀相な気分になる。

    で、その点山田詠美はレアキャラ。長いこと住んだり行ったり来たりしてるのに、そのしんどい人っぽい。

    海外、日本、みんな違ってみんないい。ほっこり。とか言うつもりはないけど、だからどっちが優れてるとかいう話じゃないと思う。

    日本を軸にやってる以上、やっていく以上、中途半端な自慢にしかなってないように思えます。

    まあでもこの人の文章は好きだ。
    2009年11月17日 14:52

  • 山田詠美を薦められてたまたま本屋で目に留まったから買ったら、 小説が読みたかったのにエッセイだった!

    エッセイ好きじゃないけど共感できるところが多々あった

    気に入ったのは

    梅雨で毎日じめじめしててやだなぁじゃなくて、
    毎日雨でロマンチックだなぁ
    って思えたら素敵なのに

    っ感じのところ
    そうだね、今日もじめじめしてベリーロマンチックだよ!

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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