宿命 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061854444

作品紹介・あらすじ

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

感想・レビュー・書評

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  • 殺人事件そのものより、過去になにがあったのか、二人を繋ぐ宿命とは何なのか。そこに重点を置いたストーリー。
    読みたかった系統ではなかったが、それなりに楽しめた。最後の男性2人の会話が粋な感じで良かった。

  • ストーリー終盤でのスピード感のある展開、ラスト1行の意外性など読了後、タイトルの意味に納得。

    しかしながら主要人物のバックボーン、殺人事件の犯人やトリックが、いまいちインパクトに欠け、ドラマとして感情移入までに至れなかった。

  • すごく良かった。
    東野さんはやっぱりこういう作品がいい。
    解説によると、最後の一行のために練りに練ったとか。
    確かに意外な一文で、そしてなんか微笑ましく感じる一文。
    犯人も予想外で、あの人が見抜いていたというのも意外だった。
    脳科学も、こういうことができるのか?と夢か現実か分からないくらいの部分が面白いんだと、解説に納得。

  • 【感想】
    東野圭吾の作品って、タイトルがシンプルかつディープなものばかりだ。
    タイトルにすごく拘りを持っているんだろうなという作品が多い。
    この「宿命」もその1冊で、主人公の勇作と晃彦は勿論、須貝正清や上原先生や父の興司などそれぞれの登場人物達の「宿命」も読んでいて感じさせられた。

    また、「あとがき」に書いてあったが、東野圭吾は本作品においては特に最後の一行に特にこだわり、むしろ最後の一行を書きたいが為に、全文章を考えたんだとか。
    それぐらい素晴らしいラストだったと読んでいて感じた。

    物語は小学生の頃からの宿敵である警察官の勇作と医者の晃彦に焦点が合わされ、1つの殺人事件を絡めてストーリーが進行していく。
    勇作に何か恨みでもあるのか?というくらい嫌味でスペックの高い晃彦少年と、晃彦少年にすべてにおいていつも負けてしまう勇作少年。
    少年時代からの確執を本事件の解決によって清算しようとする勇作の気概からして、もう少し殺伐としたラストになるかと思ったが、、、

    タイトルセンスと作中の大ドンデン返し、事件そのものの完成度の高さ、そして自他ともに認めるラスト一文の構成力の素晴らしさ。
    色んな要素の詰まった名作でした。


    【あらすじ】
    高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。
    男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。
    刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。


    【引用】
    p68
    公平だな、と勇作は思った。死ぬ時は公平だ。考えてみれば、人間の世界で唯一フェアな部分かもしれない。


    p75
    自分とは何の関わりもないのに、どうにも心に引っかかる人間というのがいる。
    その人物に魅力を感じているわけでも、恨みがあるわけでもない。
    それなのにどういうわけか、その顔を見ると、心が俄かに動揺するという相手だ。
    勇作にとって、瓜生晃彦がまさにそういう存在だった。
    友人になりたいとかいう明朗な心理ではない。何となく気に入らない奴だ、という陰湿な種類のものだった。


    p82
    勇作はこれまで、人に後れをとったことなど殆どなかった。勉強にしても、運動にしても、絵や書道についてもだ。
    もちろんその陰には彼なりの努力があった。ところが彼が苦労して手に入れてきたトップの座を、瓜生は鼻歌でも歌いながら奪いとっていくのだ。


    p90
    サナエさんの死に、瓜生親子が関係しているのか?だがそれは、どういう関係だ?
    この疑問が、勇作にとって瓜生晃彦をさらに特別な存在にしたのだった。


    p192
    このノートを見て、勇作は何とか真相を確かめたいと思った。それが興司の望みでもあるように思えたからだ。
    興司は出世はしなかったが、事件のたびに全力を尽くし、常に納得できる形で処理していった。おそらく唯一の心残りが「脳外科病院怪死事件」であったはずだ。

    やってみよう、と勇作は思った。今度の事件が実際どの程度サナエ事件に関係しているのかは不明だが、とにかくやれるだけやってみよう。
    (この事件は俺の事件だ。俺の青春がかかっている。)
    ノートを握りしめ、勇作は心の中で叫んだ。


    p334
    それにしても、サナエさんも実験台にされた一人だったとは。
    覚悟したことだったが、やはり勇作の推理は的中していた。
    瓜生和晃がサナエの身元引受人になったことや、彼女がレンガ病院に入院していたこと、そして彼女の死にも、実験に関する秘密が絡んでいるに違いない。
    さらに彼女の知能に障害があったこと。
    あれはもしかすると、実験の後遺症か何かではないのか?サナエも元々は普通の大人の女性だったのではないのか?


    p357
    「須貝正清の父親も実験に加わっていた。ところが凍結された後も、密かに自分が再開させることを考えていたらしい。親子とも負けず劣らずの変人だよ。
    おそらく正清は父親から、あの計画を須貝家の手で再開させるよう命じられていたのだろう。半ば執念みたいなものさ。
    だから僕の父親が倒れて自分の天下が近づくと見ると、着々とその準備を始めたりしたんだ。」


    p366
    「サナエさんは双子を産んだんだ。そして一人は瓜生直明に、もう一人はやはり妻が不妊症の夫婦に引き取られた。二人は二卵性双生児で、ふつうの双子のように瓜二つというわけではなかった。」

    「高校二年の時、自分に兄弟がいることは知った。しかしそれが誰なのかは教わらなかった。まさか君だったとはな。」
    晃彦は嘆息し、しみじみとした調子で言った。


    p368
    晃彦は何か眩しいものでも見るように目を細めた。
    「自分にどういう血が流れているのかは関係ないんだ。重要なのは、自分にはどういう宿命が与えられているかだ。」
    その言葉は、勇作の頭の奥底に響いた。同時に、つい先ほど瓜生家に引き取られた晃彦を妬んだことを恥じた。
    その宿命のために子供らしさを失い、人生の殆どを犠牲にしなければならない立場を、どうして羨むことができるのだ。


    p371
    「全敗だ」
    勇作は呟いた。「えっ?」と晃彦が聞いたので、「何でもない」と首を振った。

    「最後にもう一つ聞いていいかな?」
    「なんだい?」
    「先に生まれたのはどっちだ?」
    すると暗闇の中で晃彦は小さく笑い、
    「君の方だ」と、少しおどけた声を送ってきた。

  • まさに宿命。
    これぞ宿命。

    ずっと負け続けていた宿敵に対して、最後の1行は勝ったと捉える事ができる。

  • 殺人事件と、幼少期からの「宿敵」である勇作と晃彦の関係性の真実、この2つの謎解きが同時進行で進んでいく。

    序盤から登場人物が多くて、相関関係を書き出そうか迷いながら読み進めましたが、ある程度流れが分かると問題なしでした。

    宿命とは生まれながらに定められた変えることのできない人間の運命。この物語のタイトルは「宿命」という言葉以外では表せないことが読み終わった今はよく分かる。

    殺人事件の真相解明よりも、悲しい宿命を背負う登場人物たちの真実が分かることの方が衝撃的だった。

  • 凄い一冊でした。

    何が凄いか、それは単なる殺人事件の謎解きミステリーではなく、そこに関わった2人の謎。

    宿命のタイトル通り、本作は明らかにその宿命を解き明かすことが主題となっているミステリー作品ということに尽きる。

    サブタイトルをつけるなら糸ということになるのだろう。

    計算し尽くされた見事の内容は迷わず☆5つであったが、今まで読んだ東野作品の中で、あくまでも私見だが登場人物が多かった^^;

    相関関係を理解しながら読み進める力がまだまだ足りない事に気づかせてくれた一冊になるが、その分だけ最初は東野作品として読み進めるのに苦労した。(結果、読み終えるのに3日もかかってしまった(苦笑))

    その分だけ☆1つマイナスをつけたが、これは作品の評価ではなく、自分に対しての戒めの意味を込めてである。

    学生時代から続く優作と晃彦の宿命とは。

    晃彦の妻であり、優作の初恋の人でもある美佐子を繋ぐ糸とは。

    単なる殺人事件の謎解きミステリーではない本作の深みはここにあり、ラスト1行の一言「君の方だ」で結ばれる。

    本作の中で重要な脳の謎。

    これが、次作となる変身へのプロットとなる。

    説明
    内容紹介
    高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に10年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの2人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
    内容(「BOOK」データベースより)
    高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

  • 今から ほぼ30年近く前の作品だけど、だから初々しいのだけど、やっぱり「らしさ」がちゃんと散見されました。なのでそれほど違和感無く楽しめました♪

  • 面白いし、題名もそのとおりと思うけど、東野作品ではもう一つ。
    売れてくると何でもかんでも「感動作!」「名作!」「傑作!」って煽ってきてそれにのる人も多いのが、ちょっとイヤ。

  • 読んでみて名作だと思いました。
    最後の方に意外な展開があり
    面白かったです。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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