変身 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061856981

感想・レビュー・書評

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  • とても面白かったです。怖さと切なさもありましたが。脳の「一部」を移植した、という点が本作の肝ですね。全移植であれば恐らく目覚めた段階で別人格となり、以前の自分の記憶は何一つ無いので、きっとこのような物語にならないかと。一部だけ移植した結果、次第にその一部の別人格が本体脳を侵食いくというのが、とても怖く切ない話しに感じられます。作中、僕という一人称が途中から俺に変わっていたり、言葉遣いや行動が徐々に荒々しくなっていく様がとても印象的です。当然フィクションではありますが、仮に脳移植というものが現実に存在するならば、こういった事態が起きてしまう可能性もある、という倫理的な観点から医学の世界でも脳移植というのはタブー化されているんだろうなと改めて感じました。いずれにしても、相変わらずの東野さんの素晴らしい文体に惹き込まれ、とても楽しくあっという間に読むことが出来ました。

  • これはミステリーというより、ある意味ホラーに近いかもしれないが、しかしそこは東野作品。しっかりのめり込ませてくれます。
    自分ではどうしようもない運命に立ち向かっていく主人公。必死に戦い抗い続ける描写がドキドキハラハラさせてくれます。

  • 感情や行動の変化の描写がリアル。
    脳移植してドナーの人格が支配していく様子は恐ろしくて非現実的な事のはずなのにそう思えず先がただただ気になってあっという間に読み切った。

    今まで読んだ東野圭吾作品とは違って刑事のいやらしさや鋭さがなくて、今回は警察の出る幕なし。バックの強力な力がはたらいていてうやむやになる事件や事故って、実際知らないだけできっとあるんだろうなって思ってそんな所まで楽しめました。

  • 記録

  • 脳を銃で撃ち抜かれた青年が、脳移植を受けて生還するが、人格に変化が現れ別人のように変身していく。

    脳移植を執刀した堂元教授の記録[堂元ノート]から始まり、[堂元ノート]で幕が閉じられます。主人公、純一の恋人である恵の[日記]や、倉田刑事の[メモ]を挟みつつ、純一の視点によって物語は進みますが、次第に人格が変化し狂暴するため一人称が「僕」から「俺」へと変化するところがおもしろいです。
    また、それらの変化をあくまで研究材料とし、最後まで宿題を課す[堂元ノート]の冷徹さも印象深い。
    唯一、最後の恵が大事にしたものだけが救いでした。

    ドラマを先に観てからの原作だったため、ドラマでの恵と純一の純愛の印象が強く、それに比較すると純一の狂暴さばかりが際立っている印象でした。
    でも、歯止めがかからない変身ぶりは最後まで一気に読んでしまいました。

  • うーん、なんとも重く深いテーマ。
    脳移植手術によって、元の人格からドナーの人格に次第に変わっていく様子が、差し迫った文体で克明につづられている。全体にみなぎる緊張感と切迫感。一気に読んでしまった。自分が自分でなくなっていく様は読んでいて恐怖を感じた。
    「生きているというのは、単に呼吸しているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。脳波が出ているってことでもない。それは足跡を残すってことなんだ。後ろにある足跡を見て、たしかに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ」

    恵の献身には救われる思いがした。最後に少しでも自分を取り戻すことができて良かったと信じたい。。

  •  強烈に覚えている作品。ラストが切なくなる。
    よりによって移植された相手が……

  • 東野圭吾さんの作品は推理ものしか読んだことがなかったんだけど、これまたおもしろかった。

    もともと気弱でおとなしい成瀬純一が強盗犯から子どもを守ったことにより頭を拳銃で撃ち抜かれる。
    負傷した脳部分を移植で補修する…
    脳の一部だけだったはずなのに、自分ではない誰かに心を乗っ取られていく恐怖。記憶そのものは自分の物なのに接する気持ちが変わってくる。周りの人が堕落して見え殺意すらわく…はじめてできた最愛の彼女への気持ちまでがかわっていく…

    自分が自分らしく生きるために純一が取った行動とは…


    うーん…怖い…命が助かったとしても「生きるとは」考えさせられました。

  • 続きが気になりあっと言う間に読み終えました。読後はなんだかとても切ない気持ちになりました。主人公は救われたのかも知れませんが、切ないです...

  • 以前読んだことがあったはずだけど
    だいぶ前で忘れていたので再読した。

    東野圭吾らしくドラマティックな展開だった。

    死の定義は興味深いテーマだと思う。
    所詮は生きている人間が決めた死の定義。

    もしかしたら、我々が認識している死は死ではないのかも。
    もしかしたら死後の世界はあるのかも。

    大切な人を亡くした経験がある者としては夢がある話だった。

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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