時計館の殺人 (講談社文庫)

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著者 : 綾辻行人
制作 : 皆川 博子 
  • 講談社 (1995年6月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (626ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061857063

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時計館の殺人 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 館シリーズ第5作目にして日本推理作家協会賞受賞作である本書は当時全10巻と想定されていた館シリーズの折り返し地点でもあり、それまでの集大成的な趣を備えている。従って前4作を凌ぐ厚さで、内容も濃い。
    まず時計館のデザインからして過剰だ。私は文庫で読んだが、文庫表紙の絵では単純に聳え立つ時計塔が描かれているのみで、学校のような感じを受けた。単に時計塔があるから時計館かと思っていたら、そうではなく、時計をモチーフにした円形の館を取り巻くように階段と廊下があり、「おおっ、やるではないか!」と胸躍ったものだ。さらに館には古今東西から集められたアンティーククロックが設えられているという装飾も物語に異様さを与え、私の本格ミステリ熱を掻き立ててくれた。

    そしてその内容も前作の不満を一気に解消する面白さだった。第1作で登場した江南くんが中村青司が建てた時計館を訪れ、そこで次々と起こる連続殺人に巻き込まれる。そしてなぜか犯人は犯行と同時に館内のアンティーククロックをことごとく壊していく。そしてシリーズで探偵役を務める島田潔は鹿谷門実と名を変え登場するが、なんと彼は時計館ではなく、その外側にて行動しているのだ。

    そして最後に明かされる犯人の動機と時計を壊した意味は、正に私にカタルシスを存分に感じさせる内容だった。「ああっ、そうだったのか!」とこれほど気持ちよく騙される快感もそう味わえない。
    やはり読者が綾辻作品に求めるのは、この過剰さにあると思う。現実の日本とはちょっと位相が違った世界のように感じられる館にて、常識で考えると滑稽だと思われる一風変わった主たちとそれを取り巻く一癖も二癖もある反社会的な人物たち。彼ら彼女らが抱く過剰さと特異な館という異世界の過剰さが読者を異界へといざない、大伽藍を描いてみせる。そんな世界で最後に繰り広げられるのはあくまで地球上の法則・論法に則った謎解き。異界が決して魔法とか奇跡とかで解かれるのではなく、凡人が納得できる一般知識で解かれるところにこの気持ちよさがあるのではないだろうか。そしてそれは世界が過剰であればあるほど、ロジックの美しさを描く、そんな気がする。

    特に本作で印象的だったのは、犠牲者の一人が館を逃げ出そうとして出口を開けたときに遭遇する、ありえない光景を見るシーンだ。このありえない光景は最後で明らかになるのだが、そのとき犠牲者が目の当たりにしたのは正に狂気の世界なのだ。この現実世界で気が狂わんばかりの光景というのはどういうものか、それを実に鮮やかに納得のいく常識的論理で解き明かす。ここに私は綾辻マジックの真髄を見た。
    そしてこの館を覆う大きな仕掛け、つまり館内の時計を次々に壊す理由を知った時、綾辻氏は神ではないかとまで思ってしまった。ネタバレになるので詳しくは書けないが、当時学生だった私は色々世の中について考えを凝らしており、その中で至ったある真理というのがあった。しかしその真理を綾辻氏は操ってしまったのだ。あとがきで作者もこのアイデアの核を思いついたのは正に天啓だったと述べている。天啓という言葉を使うほど、このトリックは神の支配をも超えるすさまじいものだし、私もこのアイデアには恐れ入ってしまった。

    いささか散文的で熱くなってしまったが、当時私が本書を読んで抱いた感慨を文章にするとどうしてもそうならざるを得なかった。『十角館~』という処女作の呪縛を私はこれで氏は超え、更なる高みへ行ったと思ったが、意外と世間の本書に対する評価は冷ややかであるのが不思議だ。しかし私は怖気づくことなく、本書は傑作であると声を高くしてここに断言する次第である。

  • 大慌てで読み、その後バタバタしてたのであまり記憶がないのですが、印象が強かったことをメモっときます。
    時計館の時間についてのからくりは、そのアイデアも動機もロマンチックで夢がある。こういうどこか現実っぽくないところが気にいった。
    ただし、殺人犯の動機はやたら現実的だった。まあ殺人をするほどだから当然だが・・・
    推理小説を読みこんでいるうちに思ったのは、犯行が行われたトリックや手がかりは数あれど、動機というものは少ないのかもしれないということ。
    動機ももちろん気になるけれど、私は「まさか!」とびっくりさせられたいので、今後もぼちぼち推理小説を読んでいこう。

  • 館シリーズ5作目。
    登場人物皆殺しの勢いでばったばったと人が死にます。江南君頑張ったね…!と言いたくなる一冊。島田さんが助けに来てくれたシーンは何度読んでもじーんと来てしまう。所々江南君が十角館を思い出すのが切ない。瓜生君がエラリィとキャラ被りすぎてるのがいけないんだ…。
    時計館は舞台設定が幻想的でいいですね。ラストのシーンも美しい。シリーズいち大掛かりなからくりではないでしょうか。この話を読むとどうして谷山浩子さんの「王国」をイメージしてしまう。

  •  他のかたのレビューを見ると、最初のほうは特に何も起こらない、退屈、てあるんだけど、意外と私はそうも感じなかった。
     最近読んだ法月綸太郎さんの「生首に聞いてみろ」は、まさに前半に展開が少なすぎて退屈…て感じだったんだけど、そういう感じにはならなかった。

     どんでん返しがあると思って読んでたし、いろいろと分かった時点でまだページ数があったから、それによって犯人は分かったけどね。
     いや、殺人事件が起こる、ということが分かっている神の視点たる読者の立場だから言えるけど、最初から行動がちょっとアレだったよね、犯人。

     それにしても、特にその行動が犯行や推理に全然関係ないにも拘らず、やたら喫煙シーンが出てくることに時代を感じる…。

  • この年(60オーバー)だと和洋話題作有名作その他コミック含めて大抵は作家名や作品名は見覚えがある。10年チョイ前一番多忙なのと精神世界系の本に興味があったのでエンタメ系の話題作品に触れる機会が少なかった。本のオビに「絶賛のトリック」とか「驚くべきラスト」とかのキャッチと作者のプロフィールに惹かれて購入した。
    その時はこの作家については初読だった。
    殆ど出尽くしたと思ってたのでとにかくこれはビックリ。
    まだストーリーも知らず未読の方はプレヴュー等観ずに一読をおススメする。
    勿論結末が分かっても作品自体のクオリティーには何の影響も与えないが、
    ネエ・・・やっぱり本格モノは最後のドンデン返しで「あっ」やられたってのほうがイイに決まってる。ジックリとお時間のある時に活字好きミステリー好きの方の至福のお時間を。
    この後この作者の館シリーズを全部購入一気読み。

  • 綾辻さんの最高傑作とも名高い時計館を漸く読了しました。

    分厚い本なのに全然それを感じないくらい、惹きこまれました。
    描写に臨場感があって何が起こっているっていう事を自分の頭で想像しやすい。
    特にラスト、時計塔での出来事は圧巻でしたね。出来れば映画で見たいくらいの神々しさでした。

    時計塔って言えばミステリィの王道じゃないですか。嵐の夜、出られない館、一人づつ殺されていく恐怖。
    そんな王道要素を取り入れながらもまったく新しい形のトリックを見せられた気がします。
    二転三転する犯人像にドキドキし、いつ殺されてもおかしくないシーンにハラハラし、
    なるほど、そこに落ち着くのか…と納得しかけた後の、えええっ!!という驚き。

    最近軽めの本を手に取ってしまうことが多かったので、ガツンッ!と”本を読んだ”という気持ちになりました。
    ミステリィ好きの方、一度は読むべき本だと思います。大変面白かったです。

  • 2014.11.4
    「館」シリーズ第5弾

    素晴らしい!
    個人的に 十角館、水車館、時計館を絶賛します!

    幻想推理小説 ですね

    トリックは早々に当てたけど、犯人が最後まで分かりませんでした>_<
    最後まで 何故?本当に?どうして?をぐるぐるして…でも、最後の最期の描景が美しすぎて どうでも良くなった
    これは…映像化できる!
    全体的に 絵になる!

    読み終わった時に ほわぁとなりました。

    霧越邸から 幻想的になってきたな〜
    美しい

    あとエラリイがまた死んだ…

    以下 ネタバレーツッコミ










    登場人物 全滅はないわ〜(涙
    エラリイ(瓜生)は残してよ〜

  • 中村青司の作った時計館に少女の幽霊が出ると噂を聞き、訪れた霊能力者と河南含む取材班とある大学のオカルト研究部の面々。そして、閉じ込められた密室でまたも殺人事件が起きた。この時計館から生きて出ることができるのか、過去と今が入り乱れる心の芯が震えるような作品。

    最後の方に大量殺人とも記述があるようにたくさんの人物が殺される。残虐ではあるが、過去に起きた憎しみという人間誰もがもつものが引き起こしている。それにより、何人かの登場人物が犯人候補に上げられ、さらに特殊なトリックによって黒幕が中々見えてこない。島田が最後に暴いたトリックと犯人には驚いた。

  • 映像でみたいなー。建築筋の人に可能なのかを聞いてもみたい。消防法には引っかかってる気がする…

  • 伏線が張り巡らされているのでなんとなく犯人とか 動機とかそのあと何かあるんだろうな…が、なんとなくわかりました。
    イヤホンとか怪しかったもんね!
    でも、面白かった!長かったけど続きが読みたくて私にしては早く読めました。

  • 時計館と呼ばれる館の周りで出る幽霊の検証のために集まった9人の男女。しかし彼らに無差別殺人の恐怖が襲い掛かる。

    館シリーズの中でも特にこれでもかこれでもかというくらいにどんどん人が死んでいく作品。情景を想像するとかなりスプラッターかつホラー。
    けれどとにかく面白い。時間というものの存在や人の狂気について考えさせられる。
    シリーズ第1作で登場した江南と島田ペアが見られるのもいい。

  • 十角館の殺人から続く「○○の殺人」シリーズ。個人的に一番面白いと思った作品(次点は十角館の殺人かな)。読者と探偵役の島田潔とでは、入手できる情報やシリーズの特徴(館の特徴)の点でフェアでないとは思うけど、物語を楽しめればいい派なので問題ないです。未読の暗黒館やその他の著書についても今後読みたいと思う。

  • 文句なしの面白さ。
    綾辻行人という作家がこれほどまでに注目されている理由がわかる一作。

    綾辻さんの作品は三段階の構成があると私は思う。
    まず、事件が起こりその解決が行われる。
    次にその館のギミックが明らかになり、
    最後に真の解決が明らかになる。

    後二つは前後するかもしれないが、本来ならそれぞれで一本ずつ書ける、というか書いてしまう。
    それを一本の小説に凝縮することでこれほど魅力的な小説が生まれるのだと思う。

    ミステリというジャンルの都合上詳しい話はいえないのだが、とりあえず読んで欲しい。
    そこには十画館で味わったあの驚きがもう一度待っている。

  • ただ今、時計館に閉じ込められているところです。
    彼らの運命は・・・。

    やっと館から開放されてところです。
    ミステリー小説といううよりも
    冒険小説のようでした

  • 館シリーズ5作目の舞台は、百八もの時計が怪しげに時を刻む時計館。

    超常現象研究会の学生と霊能者を率いて、江南ら出版社の人間が館に現れる少女の霊に会うべく交霊会を主催するというのが物語の始まりである。
    遅刻した学生1名と本編の探偵役である島田潔が動く「新館」での動きと江南ら「旧館」組の中で巻き起こる殺人劇とが交互に展開される本作は、中々読みでがあった。

    正統派ミステリィ、という印象を受けた。
    クローズドサークルに不思議な館、隠し扉に10年前に亡くなった薄幸の美少女、永遠。思わずにんまりとしてしまうくらいに、たまらない設定だった。

    事件にしても、事件を解く楽しみがあったのは好印象。
    何だか、考えれば分かりそうな気がするのに分からないという非常に難しい塩梅をよく心得ていたと思う。
    殺人が続く館内部で続々と減っていく容疑者候補たちの中から犯人を割り出す過程が何とも言えず面白い。

    ラストで犯人やトリックをバシッと提示してくるだけのミステリィよりも、ここらへんは面白い所である。

    そう、そして感動したのはトリックである。
    決して目新しいわけではなく、むしろ王道と言ってもお釣りがくるほどに王道なのであるが、巧かったと思う。

    真犯人の動機と永遠の自殺の真相にも完敗である。
    私は、むしろ情緒的な部分を綺麗に回収してくれる方が好印象なので、「ホラ、こうしたら淀みなく殺人が行なえるだろう、キミが犯人だ」というミステリィよりも動機まで作りこまれているミステリィが好みである。
    その意味でも、時計館は素敵だった。
    10年前の出来事にもきっちりとケリをつけたラストは素晴らしいと思った。

    どの角度から切っても素晴らしかった。
    久しぶりに納得して満点を差し上げられる作品である。

  • 館シリーズ最長の作品。一般の評価はかなり高いのだが、自分は序盤の展開がのんべんだらりとしていて、長さを実感してしまった。トリックもなんとなくだが想像がつき、さしたる衝撃はなかった。いわゆる「中」と「外」でシーンが別れる綾辻作品を続けざまに読みすぎたせいかも?

  • 館シリーズ4作め。
    殺される人数が相変わらず多い。怖かった。
    正しいと信じている概念が揺らいだり覆ったりしたときはさぞかし恐怖だろうなぁ。

  • 館シリーズでは結構好き。

    綾辻さんってホラー調になるよね〜
    どんどん死ぬけど、どんどん読めます。

  • 大手出版社・稀譚社の新米編集者である江南孝明は、友人であり駆け出しの推理作家でもある鹿谷門実を訪ねる。そこで彼は担当している超常現象を取り扱うオカルト雑誌『CHAOS』の取材のため、2人と因縁のある中村青司の建築した通称「時計館」に行くことを伝える。その館には10年前に死亡した少女の霊が出るという。江南はその霊について取材するため、3日間泊まり込みで霊との交信を行うこととなった。『CHAOS』の副編集長、稀譚社のカメラマン、霊能者、W✽✽大学の超常現象研究会のメンバーらとチームを組み、彼らは「時計館」を訪れる。しかしそこで凄惨な殺人事件が幕を開ける。

  • 久しぶりに館シリーズ。伏線の回収が鮮やかで気持ち良い。

  • 期待しすぎた。けど、面白かった。
    途中オカルトっぽさがちょっと怖い。

  • これまで読んだ綾辻作品の中でも1番好きです。クライマックスシーンの情景が非常に美しい。作中の疑問点も綺麗に説明されています。

  • 108個の時計が置かれた時計館。W大学の超常現象<ミステリ>研究会と江南を含めたCHAOS編集者たちは取材のため時計館を訪れる。しかし、そこで次々と人が殺されていく…。

    殺人が行われた理由、時計館を作った理由、自分のアリバイを証明するためのトリックなど、とにかくすごいの一言。「外」の人がからくり仕掛けを使って内部に気づかれないように入ったのかなとかは思っていたけど犯人はわからなかったなあ。娘・永遠への想いが大きすぎてびっくり。そこまでするか…という感想。

  • 読み応え十分。
    この建物に込められた思いが熱い。
    希望を言えばもう少しページ数削減。

  • 2015.10/27〜11/2。館シリーズ5作目。評判通りの傑作。一気に読みたかった。登場人物表を見たときは少々戸惑ったが。時計館の怪しくも美しい雰囲気がとても良い。そしてトリックが大がかりすぎる。

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時計館の殺人 (講談社文庫)の作品紹介

館を埋める百八個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で十年前一人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが時計館を訪れた九人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは。第45回日本推理作家協会賞受賞。

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