生きている心臓〈上〉 (講談社文庫)

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著者 : 加賀乙彦
  • 講談社 (1994年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061857360

生きている心臓〈上〉 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 43歳で医科大学の精神科の教授を務める天木有作(あまき・ゆうさく)は、ジャンムージャン神父にある患者を紹介されます。40歳の名和田憲(なわだ・けん)というその患者は、重い心臓の病を患い、まもなくやってくる死に直面していました。絶望に陥っていた名和田は、同じキリスト教を信仰する有作によって勇気づけられます。一方勇作は、妻と2人の子どもを残して死ななければならない名和田の運命に深く同情し、自分が脳死の判定を受けたときは、臓器を提供することを決意します。

    ところがその直後、有作は交通事故で頭に大きなケガを負うことになります。病院スタッフの努力にも関わらず、有作は脳死状態に陥り、彼の妻である天木蝶子(あまき・ちょうこ)と2人の子どもは悲しみのどん底に突き落とされます。が、蝶子はやがて有作が残した「尊厳死の宣言書」(リヴィング・ウィル)を発見し、助かる見込みがないのであれば、延命措置を取りやめて欲しいという希望を医者に伝えます。

    有作の親友であり、海外で数多くの移植手術を成功させてきた助教授の蒲生英吉(がもう・えいきち)は、有作の希望を知り、彼の心臓を名和田に移植することが医者の務めではないかと考えます。蝶子も彼の意向を受け入れますが、有作の母親や姉は、心臓の動いている彼の身体から臓器を摘出することに抵抗を覚え、反対します。さらに、有作のもう一人の親友である大鈴純一(おおすず・じゅんいち)は、脳死者からの臓器移植に強硬に反対し、新聞記者の宇津井を伴って、蒲生が執り行おうとする手術に対する反対運動を組織し始めます。

    脳死を死と認める立場と認めない立場の対峙を縦軸に、キリスト教と仏教の立場の違いを横軸にして、脳死に陥った有作の臓器移植をめぐる倫理的・宗教的な問いが戦わされていきます。脳死に関しては、日本ではとくに活発に議論が戦わされ、立花隆、梅原猛、森岡正博、池田清彦、小松美彦、宮台真司らの論者によってさまざまな論点が示されてきました。本書はそうした論点を網羅しているわけではなく、それぞれの立場からなお掘り下げるべき問題が残されているという批判が寄せられるかもしれませんが、小説という枠組みの中でこの問題を扱った意義は認められるべきかと思います。

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