聖女の島 (講談社文庫 み 11-6)

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061857964

感想・レビュー・書評

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  • とうとう、読みました。
    じわじわと、何かが進行していて、今にも爆発しそうな不穏な空気に惹き込まれて巻き込まれて流されていきました。
    マ・スールは、(ネタバレゆえ伏せます)でありながらも、主人公・藍子の姉に似ているのも含めて、藍子が「こうありたい」と望む姿なんだろうな。もしかしたら、梗子が「マ・スールが好き」と言うのも(この梗子はあれだし…)。

    願いが、届いてしまった。
    淡江色の封書が届いたなら未来永劫マ・スールは、愚かさと狂気への蔑みと憐れみと慈しみと諦念を密かに抱えて、軍艦のような聖女の島を訪ね続けるのでしょう。


    それにしても素敵な装丁。物語にぴったり。

  • 『恐るべき子供たち』の物語かと思いきや...

    長崎の軍艦島を想わせる孤島。そこにはさまざまな背徳行為によって矯正を余儀なくされた少女たちが集められている。そして施設の秩序が崩壊しつつある今、ひとりの修道女(マ・スール)が召喚された。

    妖しい香りが匂っています。しかし幻想的という訳ではなく、妙に生々しく泥臭く、土埃を感じさせるリアルさがあります。
    矯正施設を束ねようとするどこか愚かな大人たちと、頭の切れるリーダー格の二人を中心とした少女たちの攻防。その中で修道女(マ・スール)はどういう役割を演じるのか。
    読み進めていくうちにめまいに似た感覚が起こり、しだいに幻惑されていきます。

    果たしてそれは『狂気』の物語でした。

  • 【祝・H27文化功労者】軍艦島を思わせる孤島にある、修道会が作った子どもたちの矯正施設で起こる“事件”というものを想像して読み初めましたが、ほぼ女性園長の独白で進められる構成に、園長の狂気の迷路に迷い込み絡め取られたかのような錯覚に陥りました。綾辻さんの解説にあるとおり「幻想ミステリ」という言葉がふさわしい小説です。

  • これ、すごく好き。すごく、好き。解説にあった「幻想ミステリ」という分類はすごく良いな。幻想と現実と狂気と正気の分かれ目が曖昧で(いや、無いのか)気持ち良い。気持ち良いけど怖い。そう、そう、こうじゃなきゃ。表紙も好み。

  • 破弾に砕かれて坐礁し、そのまま化石となった巨大な軍艦のように見える孤島に、修道会のつくった矯正施設がある。売春、盗み、恐喝等の非行を重ね、幼くして性の悦楽を知った放恣な少女たちが、惨劇の幻影におびえる聖女の下に集められている。そして、ある悪夢が…。謎と官能に満ちた、甘美な長編恐怖小説。 (「BOOK」データベースより)

    うーん……これってミステリじゃなかったんだねえ、恐怖小説って感じでもなかったし。
    有栖川氏のエッセイで紹介されていたので読んでみたのですが……想像と全然違っていて、びっくり。
    私には結局どんなストーリーだったのかよくわかりませんでした。
    なんていうか読んでいる最中も後味もあまりよくない。
    舞台となった軍艦島にはとても興味があるんですけど。
    まあ紹介されていなかったら読むこともなかったと思うので、そういった本を読んでみるのも出会いです。

  • 解説、綾辻行人の好みどストライクだろうなとは思いましたとも。
    じわ怖ホラーとして楽しく読めた。
    それにしても、書き方上手いなぁと感心。

  •  で、最高の1作。
     これを知らなければ皆川作品にはまることはなかった。それも書店で呼ばれるように買った運命。
     崩壊するラストシーンの禍々しさ。救いのなさ。何度読んでもぞくぞくします。
    この文庫版の表紙が一番作品のイメージに合ってると思う。ブックオフで見つけると必ず買ってます。

  • <b>しかし、何も変わったようには思えなかった。良心の痛みが訪れぬことに、私は絶望的な苦痛を覚えるのみであった。</b><br>
    (P.165)

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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