バース: または子どもの遊び (講談社X文庫 11-1)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061900172

感想・レビュー・書評

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  • 1984年のOVA『BIRTH』を著名なアニメ脚本家・首藤剛志がノベライズ。誕生日に読むと幸せになれる。

    アニメ版は美少女がフローターバイクで疾走するアクションが魅力の作品。キャラクターや世界観もよくできていて、見どころはそれなりにあるが、いかんせんストーリーの大枠が意味不明で、どうにもスッキリしないまま終わる。
    「結局どういうことだったんだ?」
    このモヤモヤを見事に解消してくれただけでなく、さらに面白い展開をみせてくれたのが本小説である。自分はアニメやゲームのノベライズがもとの作品を超えることなどそうそうないと考えているため、普段はあまり手を出さないのだが、こういったとんでもない良作がときどき発掘されるから侮れないものだ。

    主人公たちの行動はアニメ版の流れを踏襲するが、小説版は二層構造となっており、もう一つの物語が別で進行するあたりはアニメにはなかった(匂わせはあったがちゃんと描かれていなかった)ところである。80年代半ばの古い作品であるにも関わらず、最近流行りのメタバースやシミュレーション仮説を思わせるような奥深いSF設定があり、終盤ですべてが明かされるときにはその巧みさに舌を巻いた。文体が昭和のラノベ風?な独特の軽いタッチなので、そのノリにいい意味でダマされたと思う。

    『BIRTH』というタイトルの意味について、アニメ版ではさっぱりわからなかったのだが、この小説ですべて解消するし、そこに込められたドラマには強く引きつけられるものがある。もちろんいっぽうでは活劇アクションなどアニメだけの魅力もあるので、やはりアニメ→小説の順で触れていただくのが正解だと思う。ストーリーとしての感動は最後までとっておこう。SFラノベとして、個人的には人生ベストのリストに加えてもいいほどお気に入りの小説となった。あまりに古い作品なので誰の目にも止まらないかもしれないが……いちおう2022年12月現在は入手可能である。

    人は何度でも生まれ変わる。
    これを誕生日に読めた自分は幸せだ。
    きっと何度も読み返すだろう。(2022/12/19)

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