星と月は天の穴 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 110
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960497

作品紹介・あらすじ

結婚生活に失敗した独り暮しの作家矢添と画廊で知り合った女子大生紀子との奇妙な交渉。矢添の部屋の窓下に展がる小公園、二台の揺れるブランコ。過去から軋み上る苦い思い出…。明晰・繊細な文体と鮮やかな心象風景で、一組の男女の次第に深まる愛のを冷徹に描きあげ人間存在の根本を追求する芸術選奨受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 七夕にこうしたレビューを書くのもなんですが(笑)、表題は、純粋恋愛とは無縁に生きようとし情事において女を道具としてしかみなさい主人公の中年小説家が、女に言われた素敵な夜空ねという発言に対し、「あんなものは、空のあなぼこだよ」と象徴的に言い放った言葉に由来している。
    小説家である主人公が、同名小説を自身をその小説の主人公のイメージで執筆している話とパラレルに、心情を先取りする形で物語が進行する構成をとる。
    心の底では純愛を求めながら原体験によりそれを憎んでいる象徴を、アパートの窓から見える公園とブランコに巧みに絡ませながら、若い商売女と行きずりに知り合った女子大生との度重なる情事と対比させて、主人公の心象を面白く描き出していると思う。また、総入れ歯にしている主人公の老と若い女体との対比も象徴的で、対称となる欲情を存分に盛り上げていたのではないか。
    女子大生との関係では純愛の可能性を秘めているが故に、精神的なSM世界にも止揚されていて、微妙な男女間の距離感のもどかしさが面白い。本作は、その女子大生の車の中でのおしっこから始まった(逆説的だが)恋愛小説?ということで知られた小説であるようだが(笑)、2人の関係性の成り行きを暗示する出会いが、最後に、レントゲンでみえた総入れ歯によって現実に立ち返るという後味の残し方が、奇抜なシーンとともに妙に余韻として残る。

  • 芸術選奨、解説:川村二郎・荻久保泰幸・青山毅

  • 入れ歯 牝犬 失禁 ブランコ 瘤 私小説

  • わからなかった。
    私が恋愛したことないせいかも。
    そしてまだまだ若いせいかも。

  • 初めて読んだ吉行淳之介の小説。
    私にはこの主人公の男性くらいの年齢の男性の考えていることがやっぱりわからない

  • 入れ歯にこだわる主人公(小説家)と「噛んで!」と男の人に頼む女子高校生。最初から最後まで、おお・・・と圧倒されっぱなしだった。他の作品も読まなくちゃと思った。

  • タイトルが好き。いればの主人公の性愛模様ってところがイイ。

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著者プロフィール

大正十三年(一九二四)、岡山市に生まれ、二歳のとき東京に移る。麻布中学から旧制静岡高校に入学。昭和十九年(一九四四)九月、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため四日で帰郷。二十年東大英文科に入学。大学時代より「新思潮」「世代」等の同人となり小説を書く。大学を中退してしばらく「モダン日本」の記者となる。 二十九年に「驟雨」で第三十一回芥川賞を受賞。四十五年には『暗室』で第六回谷崎潤一郎賞を受賞する。主な作品に『娼婦の部屋』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』『夕暮まで』など。平成六年(一九九四)死去。

「2022年 『ネコ・ロマンチスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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