大いなる日・司令の休暇 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960787

作品紹介・あらすじ

父をこよなく愛した幼、少年の日々。敗戦により海軍軍人であった父の失職の帰還。失意と家庭の不幸を耐えた父のストイシズム。人間の魂の高貴を平明、粉飾なき文体で描く秀作群。惜しまれて急逝した不朽の文学者魂・阿部昭の世界。

感想・レビュー・書評

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  • この本と作者については存在はずっと知っていたけれど、これまで手が伸びることはなかった。10年ぐらい前に、とある古本屋で同じ著者の『単純な生活』を見かけたことがあって、その頃は講談社文芸文庫を見かけたらわりと買っていたのだけれど、その時はなんとなく買わなかった。奇しくも、今現在、その古本屋の近くに住むことになった。しかし古本屋自体は数年前に店じまいとなったようであるけれど。

    最近、何かであらすじをたまたま見た時に、どことなく自分が読むべき小説なのではないかと思えた。こういう「本に呼ばれる感覚」が、自分の場合まれにある。そして、事実素晴らしい小説に出会えたと読後思った。

    読んでいてずっと自分の心が慰撫されるような小説だった。「幼年詩篇」「大いなる日」「鵠沼西海岸」「司令の休暇」「明治四十二年夏」どれもよかった。

    軍人であった父の失意の日々や、兄弟に対する思い。自分以外の人のことを書くことで、見つめている自分自身の姿が浮かび上がってくる。主人公が見せる心の動きが、読んでいる私の心をなぞってもらっているようで心地よく(話の内容は心地よいものではないけれど)、終始入り込み、退屈だと思うことがなかった。感想が上手く書けない。

    これを書かねばならない、という阿部昭の思いが伝わるようだった。ひょっとすると本を手に取る前に感じた「本に呼ばれる感覚」をまた味わいたくて本を読んでいるのかもしれない。それがごくまれにしかないことだとしても。

    この本は時をおいてまた読もう。

  • ついついお父さんの立場になってしまって(笑)そういうことを書いている本じゃないんだけども。
    とてもよかったので、また再読したい本の一つとなった。

  • 表題2作を読了

  • 阿部昭の初期の5作品

    幼年詩篇
    大いなる日
    鵠沼西海岸
    司令の休暇
    明治四十二年夏

    をまとめた文庫です。

    中学生のころ学習塾で「幼年詩篇」 ”あこがれ”の一節 を読んで、それがずっと印象に残っていて、いつか通しで読みたいと思っていたのですが、10年近くたって作品名がわかり、ようやく読むことができました。

    収録された5作は独立した短編ですが、いずれの作品も作者とその家族の体験がベースになっています。

    余談ですが、阿部昭の地元藤沢のジュンク堂に彼の小説が一冊もなかったことには、少しさびしい思いがしました。

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著者プロフィール

小説家。1934年広島県に生まれ、翌年より神奈川県藤沢市鵠沼で育つ。東京大学仏文科を卒業後、ラジオ東京(現在のTBS)に入社。62年に「子供部屋」で文學界新人賞を受賞。68年に処女短編集『未成年』を刊行。その後、71年にTBSを退社し、創作活動に専念する。73年『千年』で毎日出版文化賞を受賞。76年に『人生の一日』で芸術選奨新人賞受賞。幼少より暮らした鵠沼を舞台にした作品が多く、また、短編小説の名手として知られ、数多くの作品を残している。

「2019年 『March winds and April showers bring May flowers.』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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