風流尸解記 (講談社文芸文庫)

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著者 : 金子光晴
  • 講談社 (1990年9月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960947

風流尸解記 (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

  • 表題作は、湿気とか生ぬるい空気とかべたべたした畳とかを背景に、きれいな女の子が茫然としている幻想的な短編。春のむわむわとした空気がページから立ち上ってくるようで、詩人の言葉遣いに舌を巻いた。自分には好きな人に殺されたいとか殺したいとかいう気持ちがまったくないし、『どくろ杯』の金子光晴からもそういう負の波動を感じなかったので、どうしてこんなに破壊的なんだろうといぶかしんでいたのだが、巻末の解説に敗戦直後の空気を書き留めておくというねらいがあったとあり、腑に落ちたところはある。ある程度詩を読んでから読み直すべきか。

    それでも自分にはちょっと刺激が強すぎたので、「樹懶」のややあそびのある各編のほうがおもしろく読めた。中年の摩耗しつつもぜんぜん死にたくないふてぶてしい感じ、あーわかるわーとしみじみしてしまった。

  • 金子光晴の全小説7編を収録。戦後間もない東京の風土を舞台に、身を持ち崩した人間の刹那的感情と、死へと棚引く霧靄の如きロマンチシズムがねっとりと絡む。知っての通り金子の日本語は超絶に美しい。特に表題作においてはこの世のものとは思えぬ妖艶色めく言葉が寸断なく連なり、魔物に魂抜かれたような気怠さが残った。辞書によると「尸解」とは《人がいったん死んだ後に生返り離れた土地で仙人になること/死体を残して霊魂のみが抜け去るものと死体が生返って棺より抜け出るものとがある》とあり、いかにも金子は仙人の風体だと得心した次第。

    戦後の国民の、手の平を返した民主主義の流行をユーモア散りばめ揶揄しているのがまた金子らしい。

  • 金子氏の日本語を自在に操り、妖艶な世界や幻想的な世界を描き出す手腕にいつも感服する次第です。日本語の持つ美しさや表現の可能性を自覚させられます。「赦免状が三分おくれたために 胴から首が離れた例もある。 ましてや、七日間と言えば なにごとがあっても不思議はない。」このようなフレーズを私も吐いてみたい。

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風流尸解記 (講談社文芸文庫)の作品紹介

まだ焼け跡の残る敗戦直後の東京の町の片すみで男は恋を知りそめたばかりの盲目の少女と出会い、抱いた少女の裸身の背後に、朽ち果てた無惨な女たちの尸(しかばね)の幻影を見る。恋の道ゆき、地獄廻りのものがたりに、人間の哀しさ、愛しさと残酷さを容赦ない筆致で剔出する『風流尸解記』。芸術選奨受賞。『蛾』『手』『心猿』『姫鬼』『獲麟』『樹懶』の六短篇を併せて優れた現代詩人金子光晴の遺した全小説7篇を集成。

風流尸解記 (講談社文芸文庫)はこんな本です

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