贅沢貧乏 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

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著者 : 森茉莉
  • 講談社 (1992年7月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061961845

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贅沢貧乏 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)の感想・レビュー・書評

  •  森鴎外の長女と聞くだけでも「贅沢」してきた人なんだろうなと思いつつ読み始めてみると、驚くべきことにその正反対。

     彼女は、一見すると粗末な住まいに住んでいたといいます。かつては髪を洗うことさえ女中に任せていたというお嬢様っぷりだったそうですが、そんな生い立ちもあって何ひとつ自力でできない自分に対して面白おかしく(じつに客観的に)描き出すのは見事の一言に尽きるように思います。

     彼女が大切にしていたのは、自分の価値観に従って生きることであり、美しく生きることだったのではないでしょうか。彼女にいわせれば、誰もがまったく同じような生活を送るような生活空間は空虚なものでしかない。
    決して裕福ではないなかでも、チョコレートや少しの酒・タバコは欠かさない。部屋の様相にしても、周りの人にはわからなくても自分が贅沢だと思えればそれでいい。それが「贅沢貧乏」だということなのではないかという印象を抱きました。

     反対に、品のない下らぬ贅沢を見せつけることや、「わたしは特別な人間だ」などということは嫌っていたに違いありません。そんな茉莉さんの考え方が、僕にはとてもしっくりきました。

     長すぎるカッコ書き、文章の微妙なつながり、気になることもあるかもしれませんが、これはいかにも思ったことをそのまま書き連ねているような印象を受けます。決して緻密に構成されたものではないにしても、そこには彼女の思考の流れが生き生きと表れているのではないでしょうか(あれこれ飛び火することからは、彼女がおしゃべり好きだったことがわかります)。

    こんな生き方をしてみたいものです。

  • この作家の著書には高校の頃から親しんでおり、このエッセイのことも知っていましたが、独特の世界を築き上げた彼女の小説の、現実離れした硬質デカダンなイメージを、作者の現実を知ることで壊したくなかったため、読まないままに今まできました。

    主人公である自分を客観的視線から善も悪もなく描いており、かなり小説的コーティングがされていると感じつつも、その質素な生活ぶりは凄味を感じるほどに徹底しているため、現実ベースに描いているということがじかに伝わってきます。

    年に1冊小説を書き、その原稿料でつましく生きているという、昭和30年代の著者。
    森鷗外の娘であり、かなりの耽溺文学の著者であるため、お金持ちの道楽趣味として、てなぐさみに物語を書いているかと思っていましたが、実際には生活のためにイヤイヤ小説を執筆していると知って驚きました。

    どんなに困窮していても、生まれついての裕福な生活スタイルを崩しきることはできないようで、貧しい中にも惨めさにどっぷりとつかりきらない、良家の子女の凛とした矜持のようなものが、常に彼女の中に存在しています。
    1日300円の食費の中で、100円を舶来のチョコレエトに使っているというところが、やはり見事に現実離れしたお嬢様。

    想像と妄想のつたが深く絡まった深い森の中のお城で暮らす永遠の姫だなあと思うことしきりです。
    夢見がちの少女が、そのままのピュアな心で、ハードボイルドな現実を生き抜いていく方法が記されているような一冊。

    彼女のような夢見ながらも腹を据えた生き方は到底無理ですが、ぼんやりと物思いに耽って過ごすところなど、私もそれなりに彼女に近い面があるため、完全に他人ごとに思えないまま、はらはらしながら読みました。

    とても貧しい生活様子を書き連ねてありながら、その徹底ぶりと妄想の素晴らしさ、揺るぎない誇りの高さに、哀れさや嫌悪感は抱きません。
    他人の目を気にしない強さと妄想力の完璧さが、彼女の生活と小説を作り上げ、まさに『贅沢貧乏』を生み出しているというわけですね。

    『桜の園』を追われた『斜陽』族の彼女が、その妄想力を一本刀として、世間の荒波をやりすごしていく様子に、誰も真似のできない非力の強さを見ることができる、独特の牽引力のあるエッセイとなっています。

  • 森茉莉の本はほぼ全部永久ループで読み続けてしまう。表現の勉強にもなるし、なにより書き出しがどれも美しすぎてこの人の頭の中は一体どうなっていたんだろうと思う。この本のなかでは「3つの嗜好品」が特に好き。
     感覚が大和撫子ではなくフランス女。憧れてそうなったのではなく最初からそうだったかのよう。

  • この人が好きな人には楽しいと思う。

  • 森茉莉さんの「贅沢貧乏」の思想、大いに共鳴いたします。心の贅沢、自分の贅沢なんですよね!森茉莉さんが雑誌「新潮」昭和35年6月号にのせた「贅沢貧乏」、群ようこさんの「れんげ荘」に出てくるので、どんなものか興味が湧きました。(笑) 牟礼魔利(むれ まりあ)の部屋、彼女の生き方がそうで、部屋にある物象は最新の注意が払われ、絶対にこうでなくてはならぬという鉄則によって選ばれています。貧乏臭さを追放し豪華な雰囲気を取り入れて・・・(彼女の目だけに映る・・・)!

  • 経歴と併せて読むと、なんかすごく納得がいった。
    部屋を見た室生犀星が、その日は眠れなかった、という程の(どんなだ)貧乏ぐらし。
    でも、彼女の姫目線では全てこだわりの欧羅巴の貴族の部屋。
    ここで彼女が貧乏で若くなくて生活力のないのをすごく自覚的に書いてるのが面白いと思った。自分の作品のことなめくじ小説とか言ってるし。
    文章は一文がだらだらと長くあっちこっちに飛んだりして読みづらい。

  • 夢の中のような、おとぎ話のような生活。というか人生。

  • 森茉莉の有名エッセイ集。これと『父の帽子』が知名度では双璧ではなかろうか。
    エッセイ集とは言うものの、小説ともエッセイともつかない不思議な散文だった。作中には実在の人物も登場するが、微妙に名前が変わっていて、その改名のセンスが面白い。

  • 黒猫ジュリエットのはなしがとても好き。存在とはどういうことなのか。
    時間は一瞬一瞬飛び去っていくものだから現在という時間はないのだというのが印象的。

    魔利の、最低限のお金で大すきなものだけに囲まれた自分にだけ贅沢なくらしにあこがれざるを得ない…

  • 共感できることが多過ぎて、自分の将来が怖くなりました。

  • 斬新。ある角度からするとだいぶ好き。

  • 図書館で借りたときは読みきれず、今回購入。前半は、最近の軽めのお話ばかりを読んでいた身には読み進めるのに時間がかかったが、次第にその文体にも慣れて独特の世界に引き込まれ面白くなってくる。ほかの作品も読みたい。でもこの作品も読み返したい。もう一度読めたら★5つつける思う。

  • 独自の世界観・価値観・美意識を持って時には皮肉まじりに俗世を生きる。気に入ったものだけに囲まれた自分基準の贅沢な暮らしを送った著者は、永遠の少女とでも言えるんじゃないだろうかと思うくらい浮世離れした印象。著者のことを何も知らず、ふと手にとって読み始めたら、独特の語り口に魅了されて一気に読みきってしまった。気になって関連書籍も読んでみたけれど、この一冊で十分だったかもしれない。

  • ほんと最近、こういうの読めない。これはエッセイだけど、日本人作家の私小説風や、作家の私生活なんてのは本当にこれでもかってくらいどうでもいい。

    それでも話に聞いていて、どんなにぶっとんだ私生活なのだろうと少しく興味はあったが、うーん……そうでも。

    後から三作、「三つの嗜好品」「道徳の栄え」「ほんものの贅沢」といった小品のほうが読みやすくおもしろかったな。

  • これは、ときたまつまみ食いするのが好き。

  • 森鴎外の娘、森茉莉のエッセイ。独自の美学とスタイルをもった視点から綴る日常。

  • 文章が豪華で以外にも読みやすかったです。
    昔の作家の文章は豪華でいいですね。
    室生犀星についての所がとくに良かった。

  • こんな言葉を思いだしました。

    『襤褸を纏えど心は錦』

    ガラクタを宝石に変えちゃう希有な人

  • 親の縁が薄かった犀星と濃すぎた茉莉。その交流がなんとも興味深い。

  • 予備知識なしに読み始めたので、小説なのかエッセイなのか不思議な感じがした。三島由紀夫も登場するし、この人はいったいどういう人なの・・と思っていたら、父親は森鴎外。
    そう思って読むと、昭和30年代という時代も随所に感じられて、興味がわいてくる。

  • つまらない。
    ぐちゃぐちゃな状況説明ばかり。

  • ふわふわして見えて意外とシビアな、森茉莉のエッセイ。永遠の乙女のような老女の様子が眼前に浮かんでくる。

  • 現実と妄想の狭間になかなか入っていくことができず読破するのに時間がかかってしまった。
    とりあえず私、この人好きじゃないです。ふんっ。自分がこよなく愛するものが次々否定されてとっても悲しかったんだから!
    つまらなかったってことは全くないのだけれど、「私は特別」とめいっぱい主張してるあたり、どうにも受け付けませんでした。好きな人はとことん、嫌いな人もとことんって感じの人かも。
    やたらと一文が長くて、わき道にそれた挙句、主語と述語がちぐはぐになったりしてたのも気になって仕方がなかったです。

    なんていいつつ、その観察眼の鋭さはさすがというか何と言うか。
    妄想を多分に含んではいるけれど、それでも時々ハッとする場面も。
    室生犀星についての文章は、素直にただ、感動しました。

    あ、いや、でもこの人嫌いですけど!

  • やな感じーって言葉が似合う。可愛らしいし、可笑しいしでほんま。

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贅沢貧乏 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)の作品紹介

華麗な想像力、並はずれた直感力と洞察力。現実世界から脱却して、豊饒奔放に生きた著者が全存在で示した時代への辛辣な批評。表題作「贅沢貧乏」「紅い空の朝から…」「黒猫ジュリエットの話」「気違いマリア」「マリアはマリア」「降誕祭パアティー」「文壇紳士たちと魔利」など豪奢な精神生活が支える美の世界。エッセイ12篇を収録。

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