ちぎれ雲 (講談社文芸文庫 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ))

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962149

作品紹介・あらすじ

「おれが死んだら死んだとだけ思え、念仏一遍それで終る」死の惨さ厳しさに徹し、言葉を押さえて話す病床の父露伴。16歳の折りに炊事一切をやれと命じた厳しい躾の露伴を初めて書いた、処女作品「雑記」、その死をみとった「終焉」、その他「旅をおもう」「父の七回忌に」「紙」等22篇。娘の眼で明治の文豪露伴を回想した著者最初期の随筆集。

感想・レビュー・書評

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  •  高齢化社会とは、親も老い、子も老いているということ。幸田露伴も幸田文も長命の人。幸田露伴は慶応~明治~大正~昭和を生き、享年80。幸田文は明治~大正~昭和~平成を生き、享年86。父と娘と呼ぶには、少し年を取り過ぎている二人だがw、娘・幸田文が父・幸田露伴を語ったエッセイ。「ちぎれ雲」、講談社文芸文庫、現代日本のエッセイ、1993.2発行。

  • このエッセイ集は幸田文の初期のものということで、父・露伴のことがいつもどこか話の中心にある。いままで幸田文の文章を読んだことがなかったので、他と比較はできないが、ここでは、なかなか遠慮がちというか、慎ましやかな文章を書くようだという印象だ。とは言いながらも、ところどころユーモアのようなものも見られたりして、ただただ露伴の子として書かれた文章ばかり、というわけでもない。後の作品にも触れてみたく思った。

  • 著者が、父露伴について語ったエッセイなどを収録しています。

    端正な文章で、日日の暮らしに生きる露伴のことばを回想しているものもあれば、カマキリの共喰いを記す意外な文章もあります。また紙を粗末にすることを嫌う父と祖母を比較して、「おばあさんは奉書の洗濯などをやってけちくさく見えるけれども、当時の製紙業や製品に対してぶつくさ云ったことはない。鷹揚だった。それを父のほうは時によっては、ロール半紙は下等だとか、ざら紙はいつになっても進歩しない、……などと腹をたてて悪口を云いだすのである。これははたから見ていると、なんだか少しやっきになり過ぎていて独り相撲のような滑稽があるのだった」と一矢報いたりもしていて、ユーモアを感じさせる文章もあります。

    「本を読んでものがわかるというのはどういうこと?」という質問に対する、「氷の張るようなものだ」という露伴のこたえが強く印象にのこっています。

  • 幸田露伴の娘、文。
    幸田露伴は80歳で亡くなる。

    晩年出戻りの娘、文が父の面倒を一手に引き受けていた。
    濃密な父と娘の会話。
    世間から文豪の評価の大きな父を持ち、

    常に討論では、ものの見事に論破される。
    常に引け目を感じてもいる娘。

    尊敬してやまぬ父だが、その反面実の親子である。

    剥き出しの感情を薄くベールに包み、

    遠慮で包みこむ日常が、興味深い。

    幸田文の本は、一番好きなのがエッセイ「木」
    この本は晩年の本人の日常のあれやこれを

    書き綴ったものだが。
    この「木」と、自分が看取ることになる

    偉大な父との日常を描いた

    この「ちぎれ雲」は相対する立場ながら、

    生と死を見透かす様な内容に度々触れる。

  • 14/11/1、三省堂古書館で購入(古本)。

  • 幸田文凄い。こんな文章真似できひん。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    「おれが死んだら死んだとだけ思え、念仏一遍それで終る」死の惨さ厳しさに徹し、言葉を押さえて話す病床の父露伴。16歳の折りに炊事一切をやれと命じた厳しい躾の露伴を初めて書いた、処女作品「雑記」、その死をみとった「終焉」、その他「旅をおもう」「父の七回忌に」「紙」等22篇。娘の眼で明治の文豪露伴を回想した著者最初期の随筆集。

    久しぶりに旧仮名遣いの本を読んだ。漢字もね旧字体。
    でも彼女の文章はとても読みやすく、そして美しい。
    「わたし」といいだしてから自分がしっかりしていないような気がするというのは分かる気がする。
    ひょっとしたら手元に置いた方がいい作家さんな気がしてきました。

  • なんといっても本書の読みどころは、父の臨終の場面です。
    「いいかい」・・・「よろしゅうございます」・・・「じゃあおれはもう死んじゃうよ」
    この前に、おとうさんが殺されるなら私も一緒に死にたいというやりとりがあって、それは違うと諭される場面があります。死んだら死んだとだけ思え、という父。それではあまりに悲しいですと反発する娘。云いたくても云いきれない思いのやりとり。

  • 「雑記」
    「終焉」
    「すがの」
    「かけら」
    「手づまつかい」
    「造落語」
    「鴨」
    「れんず」
    「旅をおもう」
    「水仙」
    「膳」
    「父の七回忌に」
    「このごろ」
    「てんぐじょう」
    「紙」
    「結ぶこと」
    「ほん」
    「ぜに」
    「二百十日」
    「在郷うた」
    「対髑髏のこと」

    露伴の娘として見た父の姿が描かれています

  • 100305(a 100330)

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著者プロフィール

1904年東京向島生まれ。文豪幸田露伴の次女。女子学院卒。’28年結婚。10年間の結婚生活の後、娘玉を連れて離婚、幸田家に戻る。’47年父との思い出の記「雑記」「終焉」「葬送の記」を執筆。’56年『黒い裾』で読売文学賞、’57年『流れる』で日本藝術院賞、新潮社文学賞を受賞。他の作品に『おとうと』『闘』(女流文学賞)、没後刊行された『崩れ』『木』『台所のおと』(本書)『きもの』『季節のかたみ』等多数。1990年、86歳で逝去。


「2021年 『台所のおと 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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