近江山河抄 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962644

作品紹介・あらすじ

遥坂、大津、比良山、竹生島、沖の島、鈴鹿、伊吹等の琵琶湖を中心とした日本文化の発生の地、近江。かつて"えたいの知れぬ魅力"にとりつかれた近江の地を、深々と自らの足で訪ね歩き、古代からの息吹を感得する。王朝の盛衰、世阿弥の能の源流、神仏混淆のパターン等々、日本文化の姿、歴史観、自然観の源泉への想いを飛翔させ、鮮やかに現代から古代への山河を巡る紀前エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読んで
    能の知識はおろか、日本史の知識の足りなさを痛感した。
    大学でも西洋史を専攻したぐらい歴史は好きだが
    目はすっかりドイツを始めとする欧州に向いていて
    足元をじっくり見ることを忘れていた。

    最近目が日本に向いているのは
    日本語教育の勉強をしているせいで
    日本語を深く考える習慣ができ
    日本語、日本というものに
    より興味を持つようになったからだと思う。
    言葉は文化であり歴史そのものでもある。

    白洲正子さんはその容貌や生涯が実に魅力的で
    つい表面的な憧れを持ってしまいがちだ。
    だが、豊かな知識と想像力に満ちたその著述からは
    その足取りを私も辿りたいと思わせるほどの
    知的でしなやかな人物像が垣間見える。

    この春、初めて近江路を歩いたのは
    自分のルーツをたどる旅であったが
    正子さんの「見る目」「感じる心」
    をベースにできたことでより充実した旅になった。

    日本を旅をするなら
    ガイドブックに頼るばかりではなく
    司馬遼太郎、松本清張ら文学者や
    白洲正子さんのようなエッセイストの著述に
    まず目を通すべきである。
    旅がより深いものになる。

  • 息長氏についても出てきた。この辺りの語が出てくるとどう解きほぐしたら良いのかという気持ちが湧いてきて落ち着かなかった。白洲さんの筆致は心地よいのだけれどところどころ違和感もあり

  • 将来は琵琶湖近辺に住みたい。

  • 19/02/24。

  • 近江の風土について書かれた本。
    近江の歴史の深さを再認識。
    行ったことのあるとこも行ったことのないとこも、また訪れてその雰囲気を直に味わいたい。

    また地名のもつ、意味合いに日本語の美しさを感じた。
    本文中に旧の町名を見るたびに、今の味気ない行政区分に寂しさを覚える。
    どうにかならんもんかね。

  • 何と深い教養をお持ちだろう。そして、この教養に裏打ちされた歴史観や審美眼で、近江が如何なる処なのかを、明晰に語られます。奈良や京都の文化的後背地である近江に魅かれていたところ、運良くこの随筆に出逢えて良かったです。
    香り立つような美しい文章も心に深く沁みました。

  • 滋賀県の自然。地図必携。多少強引だが、日本文学への深い知識がすごい。

  • 滋賀の良さが分かる作品。
    といっても、作者がこの作品を記した時代から随分変わってしまい、当時の面影もほとんどないような気がするのは非常に残念です。

    エッセイなので、作者の思いが強いですが、読んでいて嫌な感じを受けないのはさすがです。

  • エッセイなので読みやすいんだけど、古典の教養を前提とされている上に仮名を振られない正確に読めない漢字が多くて、教養主義の深さを痛感する次第。こうやって説明しないから人は古典に手を伸ばすんですよね。

  • ああ、私もこういう文章を書きたい。せめて、こういう感性を大切にしたい。
    「湖北には大音という村があって、楽器の糸のために、原蚕糸を作っているが、静かな村の中で糸繰りの音に耳を澄ましていると、琵琶の調べが聞こえてくるような気がする」
    「伊吹山の霧が、かかってはたちまち晴れ、またおそいかかる速さに、私は目くるめく思いがした。それはまさしく神のいぶきとしかいいようのない凄まじさであった。」
    「文化財を残したのは、国でもなく皇室でもなく庶民なのだ。」
    「向かい側は比良山のあたりであろうか、秋にしては暖かすぎる夕暮で、湖水から立ちのぼる水蒸気に、山も空も水も一つになり、まったく輝きのない太陽が、鈍色の雲の中へ沈んでいく。沈んだ後には、紫と桃色の横雲がたなびき、油を流したような水面に影を映している。わずかに水面とわかるのは、水鳥の群れが浮いていたからで、美しいとかすばらしいというにはあまりにも静かな、淀んだような夕焼であった。」

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著者プロフィール

1910(明治43)年、東京生れ。実家は薩摩出身の樺山伯爵家。学習院女子部初等科卒業後、渡米。ハートリッジ・スクールを卒業して帰国。翌1929年、白洲次郎と結婚。1964年『能面』で、1972年『かくれ里』で、読売文学賞を受賞。他に『お能の見方』『明恵上人』『近江山河抄』『十一面観音巡礼』『西行』『いまなぜ青山二郎なのか』『白洲正子自伝』など多数の著作がある。

「2018年 『たしなみについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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