夜の靴,微笑 (講談社文芸文庫 よE 5)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061963078

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  •  初版は鎌倉文庫(1947年11月)。
     著者の山形での所懐生活に取材した日記体の長篇。作中では日付は匿名化されている(「―日」と表記される)が、文芸文庫版の巻末資料に掲げられた河上徹太郎の文章によれば、1945年8月15日から12月15日までの4ヶ月間の時間が描かれている。

     5月末の東京空襲後、やっとのことで山形の山村に疎開先を見つけた「私」は、自分が「小説家」であることをどうかして知られまいと努めながら、農村の人々のその暮らしを詳しく観察しつづける。描かれるのは、戦時下の「供出」がもたらした村内の対立であり、本家と分家の微妙で複雑な関係であり、濃密な人間関係の中での政治であり、戦争で我が子を失った、あるいはじっとその帰りを待っている老親たちの嘆きと健気さとであった。
     日本敗戦直後、GHQによる占領政策が本格化する以前の農村の記録として貴重。また、この小説での「私」は新聞にもラジオにも言及せず(「私」は用向きのため時折街へと出るのだが、そこでどんな情報に触れたかはまったく書かれない)、閉じた共同体としての農村のありようを強調しようとする。
     
     作の後半、特攻隊の生き残りが村に帰ってきて、父親とのんきに酒を呑みながら「ああ、もう、助かったのか死んだのか、分からん分からん」と語る場面が印象に残る。肝心な場面でわけのわからない一文が書き込まれていることも、とても気になる。

  • 初めての横光利一。
    夜の靴は日記形式で、あまり読まずに終わった。
    微笑は、ふと狂う/若さ のようなものが、先日読んだ小林秀雄の本とリンクしたな

  • 微笑だけ読む。扇風機の中心から目を外した一瞬だけ見ることができる半歩先の世界。世の中は戦争が終わっても相変わらず排中律で、誰もが狂っているような中で、その世界を信じるだけで心が少し軽くなるような、願いに満ちた小品。素晴らしかった

  • 横光晩年の傑作

  • 川端康成から横光利一への弔辞が泣けて仕方ない。いつだって遺されるものは途方も無く悲しいのだ。

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著者プロフィール

よこみつ・りいち
1898〜1947年、小説家。
福島県生まれ。早稲田大学中退。
菊池寛を知り、『文芸春秋』創刊に際し同人となり、
『日輪』『蠅』を発表、新進作家として知られ、
のちに川端康成らと『文芸時代』を創刊。
伝統的私小説とプロレタリア文学に対抗し、
新しい感覚的表現を主張、
〈新感覚派〉の代表的作家として活躍。
昭和22年(1947)歿、49才。
代表作に「日輪」「上海」「機械」「旅愁」など。



「2018年 『セレナード 横光利一 モダニズム幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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