- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061963207
作品紹介・あらすじ
中世フランスの女流詩人の伝記を書く主人公〈わたし〉。友人庵文蔵、非合法の運動をする文蔵の妹ユカリ――日常の様々な事件に捲込まれ、その只中に身を置く〈わたし〉の現実を、饒舌自在に描く芥川賞受賞作「普賢」のほか処女作「佳人」、「貧窮問答」など。和漢洋の比類ない学識と絶妙の文体、鋭い批評眼で知られた石川淳の文学原理を鮮明に表出する初期作品群4篇。
感想・レビュー・書評
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昭和10年代の初期作品群。この頃の石川淳は思ってたよりずっと文体のアクが強いというかいわゆる饒舌体でちょっと読みにくい。
文体そのものは読んでるうちに慣れてくるけれど、収録されている4作いずれも、語り手は貧乏文士、その友人たちは遊び人なんだかニートなんだかチンピラなんだか芸人なんだかよくわからないけれど、裕福なのも貧乏なのも一様に金銭および女性にだらしなく騙されやすく、高潔な思想や文学論を語るかと思えばくだらない女の奪りあいなどに終始していて、これが二十歳前後の学生さんならまだしもどうやら全員アラサーあたりなのだから読んでるほうはだんだんやりきれなくなってくる。
下宿代も払えないほど貧乏なのに飲み歩いてばかりいるし、書きもしない原稿料の前借をしては無駄遣い、女房がいても女を囲い、そのくせ甲斐性もない、ダメな男たちの軽妙なコメディと笑いながら読むしかないのだろうなあこれは。時代背景が違うから共感しづらいのかも。もしこれを現代の大学生に置き換えれば、森見登美彦的なノリなのかもしれない、とふと思いました。
※収録作品
「佳人」「貧窮問答」「葦手」「普賢」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
佳人◆貧窮問答◆葦手◆普賢(芥川賞)
第4回芥川賞
著者:石川淳、1899台東区-1987、作家、東京外国語大学仏語科卒
解説:立石伯、1941鳥取県出身、文芸評論家、法政大学→同大学院、法大文学部教授
作家案内:石和鷹、1933埼玉県-1997、小説家、早稲田大学文学部卒 -
運動していない
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うーん、わからない。一体何の話なのか、全くの力不足でした。読みづらいし、使い慣れない漢字を使っているしで、何度も挫折しそうになった。
ただ時折ハッとするような表現や展開があって、もう少し読解力をつけてからチャレンジしたい。 -
芥川賞第4回受賞作(1936下期)
これぞ純文学といった様相で、長いし読みづらいし、構成がわかるわけもなく、「普賢」が一体なんなのかもわからず仕舞、もう少し私の文章を読む力(噛み砕く力)をつけて読み直したいと思います。
しかし、所々の表現がぶわっと吹き付けてくるものがあって、特に出だし「盤上に散った水滴が変り玉のようにきらきらするのを手に取り上げて見ればつい消えうせてしまうごとく、かりに物語にでも書くとして垂井茂市を見直す段になるとこれはもう異様の人物にあらず、どうしてこんなものにこころ惹かれたのかとだまされたような気がするのは、.....」。それから「おりから日にきらめく並木を吹き渡る薫風」という表現は、私の好きなあの5月の透ける若葉、爽やかに吹き付ける風を一瞬の内にイメージさせ、小説自体のテーマがわからないなりにもその表現だけで読んでいる者をガーッと引きずり回し早いステップを踏ませくたくたにしてしまう、そんな感じでした。テーマは「浮世」、ぐだぐだと何名かの人物を中心に書いていて、きっとそう。フランス詩の様。
選考委員からは、身持ちの固さやわかりにくさが賛否両論あったので、他の作品も読んでみたい。 -
わけがわからないが文体は特徴的。
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卒論でとりあげました。もう二度と読まないだろう本。
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語る行為それ自体がいかににスリリングなことか。言葉が起動し意味の磁場を作り出すことがどれだけ絶望的で甘美な経験か。僕も含めほとんどの人は知りません。ただ、これを読めばそれが垣間見れます。こういう小説があるから、後世の人は困るのです。
ちなみに卒論は「普賢」を選び玉砕しました。。