能の物語 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061963290

作品紹介・あらすじ

紀有常の娘が業平との永久の愛を語り清絶に舞う「井筒」、一ノ谷の合戦で討たれた平敦盛と今は僧となり弔う直実が夢のごとき人生と無常を語る「敦盛」、ほか「隅田川」等。最大限に省略された舞台空間で無限の表現を可能にした能、視覚聴覚に訴えるその"間"と、幽玄と美を文章に写す。創造的な独自の解釈を加え物語る能の名作二十一篇。

感想・レビュー・書評

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  • 「簡単にいえば、人間が神さまに扮して、祝福をあたえることに起こった儀式が、しだいに見物に見せる芸能に発展していったのが、お能の生いたちであり、歴史でもあります。」

  • 白洲正子 「 能の物語 」 舞台芸術の能を物語として意訳した本。

    能のモチーフ、物語の基本形、「幽玄」や「無常」の意味は わかりやすかった。「間」はこの本では理解できなかった。「井筒」
    「敦盛」「隅田川」など 有名な演目ほど 物語としては 単純で 単調に感じた

    「鵺」「葵の上」など化け物系
    「頼政」「清経」など源平系
    「大原御幸」は 物語として 面白かった

    能のモチーフ、物語の基本形
    *能=神様が現れて、人々に祝福をあたえ、平和を祈り、五穀のみのりを約束する民俗芸能
    *翁=長寿と幸福を象徴する神様→翁が能の本質を語っている
    *基本形=主人公は ほぼ 幽霊〜生前に思い残している→救いを求める→お祈り→成仏

    著者より
    *能は、舞台の上で舞って、初めて完全な芸術となる
    *本書を読んだだけで 能を知ったと思わないでほしい〜本書は 舞台へ いざなうための 橋掛り

    井筒=女の幽霊
    *伊勢物語〜在原業平の妻=筒井筒の女=幽霊
    *この世の無常と愛の永遠

    鵺(ぬえ)=化け物
    *平家物語〜源頼政に退治された鵺の亡霊
    *鵺であっても生あるもののために祈る〜草木すら成仏する

    頼政=源頼政(武士)の幽霊
    *平家物語〜宇治は京都と奈良の中間→夢うつつの境にある この世と似ている→うたかたのような世の中に無益な戦いをする人間は あわれ
    *辞世の句「埋れ木の花咲くこともなかりしに〜」〜埋れ木に終わることなく 花も身もある武士

    二人静=女の幽霊
    *源義経の妾 静→ 静の幽霊と その分身
    *栄枯盛衰は世のならいと思えば、満開の桜が散る自然の移り変わりと変わらない

    葵の上=女の幽霊
    *源氏物語〜六条御息所の憑き物
    *この世は電光石火のように、はかなく消える かりそめの世界

    敦盛=平敦盛の幽霊〜平家物語〜熊谷直実が 17歳の平敦盛を討つ→世の無常を感じ→出家

    清経=平清経→清経の幽霊
    *平家の凋落→清経の入水自殺
    *平家の栄華の空しさ、人間の命のさかなさ〜人生の無常が身にしみて、何も思い残すことはない

    大原御幸=平徳子(平清盛の長女) 女院
    *平家物語
    *六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上)を体験しても、生死の巷をさまよっても、人間は簡単に悟れない
    *むしろ悟れないところに 人間的な弱さと優しさがある
    *天人の五衰=天人さえ衰亡をまぬがれない

  • 19/03/18。

  • 能の世界に深く関わっていた白洲正子が、有名所のお話をわかりやすく記したもの。

    初見でも理解しやすいように、舞台では語られないサイドのお話や歌の解説なども交えていてとても読みやすくなっています。日本に伝わる名作物語集として読むことができるほど。
    「葵の上」「安宅」「敦盛」やらいろいろ。
    それにしても源平時代のお話が多いのが印象的でした。後に「平家物語」「義経記」など色々作られていっただけあって、日本人の心に訴えかけるものがあるのでしょうか。また、「安宅の関」など明らかに作り話であっても、そういった創作意欲をわかせた彼らの存在の大きさを感じました。

    能舞台でちゃんと見たことはありませんが、まずはここに収録されていたお話から、能の世界を覗いてみたく思います。

  • 能への誘い。
    物語の意訳を読む以上に前後の解説に価値ある内容。
    翁の話は納得度が高い。原点。
    著者が言うように見ることに価値がある。

  • 能のストーリーを小説形式で紹介。

    ストーリーを知らずに能を感激してもあまりよくわからなかったので、事前学習のために。

    しかし、能の作品は似てるのが多い。
    読み進めていても「あれ、これなんか聞いたことあるような、、」と思ったら、前の方に似た話が載ってたりすることがあった。

  • 一気読み。
    やっぱり、この方の文章は読みやすく、そして能の物語が美しい……。
    2度読みしてしまった……。

  • 白洲正子による能の翻訳本。~能は透明な、まるいもの~

    どの話も「物語」として、楽しめ、これを読んだ後に「能」を見れば怖いものなし。
    どうして、これらの「物語」が「能」として成立しているか、わかるような文章なのは、白洲正子さんだからだと思う。
    早く実際の「能」を見てみたい。

    この本を読んだわけは、先日観に行った『観世宗家展』の予備知識として知りたかったから。

    面、装束などひとつひとつにこめられた意味を知ることができるともっともっと楽しめるのではないかと思う。
    「装束は身体の上に着るのではなく、いつも身にツケルもので、~~~それも自分自身をお能の装束のなかに入れる、という感じをもつべきであると思います。」
    「面は顔へかぶるものではありません。自分の顔を面に吸いつける気持ちをお持ちなさい」

    部第を眺め、受け身に享受するのではなく、舞台の上に出現した美なるものに自ら進んでどうかすることなくして、真の享受はない。
    能と現実に生きているわれわれとの間には、「溝」が常に横たわっているのである。それをこちらから向うへと跳び越えなくてはならないのだ。

    井筒~在原業平
    鵺(ぬえ)
    頼政(よりまさ)
    実盛(さねもり)
    二人静(ふたりしずか)
    葵上(あおいのうえ)
    藤戸(ふじと)~人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな
    熊野(ゆや)~平宗盛(たいらのむねもの)の愛人
    俊寛(しゅんかn)
    巴(ともえ)
    敦盛(あつもり)
    清経(きよつね)
    忠度(ただのり)
    大原御幸(おおはらごこう)
    舟弁慶(ふなべんけい)
    安宅(あたか)
    竹生島(ちくぶしま)
    阿漕(あこぎ)
    桜川(さくらがわ)
    隅田川(すみだがわ)
    道成寺(どうじょうじ)

  • (2011.04.21読了)(2009.12.12購入)
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    【展覧会】
    能面と能装束 神と幽玄のかたち
    主催:三井記念美術館
    会場:三井記念美術館
    会期:2011年11月23日(水)~2012年1月28日(土)
    入館料:一般 1000円
    入館日:2012年1月18日(水)

    「今回の展覧会では、館蔵品の中から「能面と能装束」を中心に、「神と幽玄のかたち」という切り口で展観いたします。神体あるいは神の化身としての翁面・尉面、荒ぶる神々としての鬼神面、霊界にさまよえる怨霊・亡霊の能面、夢幻の空間を去来する老若男女の能面など、館蔵の重要文化財「旧金剛宗家伝来能面」54面を中心に、三井家伝来の能装束、楽器や謡本などに、橋岡一路氏寄贈予定品を加えて約100点を展観いたします。」(ホームページより)

    「能」だけをテーマとした展覧会を見たことがないので、見に行ってきました。
    入ってすぐのところには、「囃子の楽器と謡本」ということで、笛(能管)、小鼓堤、太鼓、謡本と能絵歌留多に能の簡単な筋書き、が展示してあります。
    能というのは、旅人に亡霊があらわれておのれのことを語り消えてゆくという形が多いようです。白洲正子の「能の物語」を読むと、代表的な能の荒筋が分かります。
    「能の物語」白洲正子著、講談社文芸文庫、1995.07.10
    先へ進むと、「面箱」が展示してあります。能面を納めて保存しておく箱です。能面を壁にかけてある情景しか見たことがなかったので、箱に納めておくというというのは、知ってしまうと、そりゃそうだよな、と思いますが、意外でした。
    一番大きい展示室に能面が並んでいます。
    能面は、翁面、尉面、鬼神面、男面、女面、に分類されて展示してあります。
    展示品のほとんどが重要文化財に指定されていますので、見事です。
    鬼神面がいちばん興味深いというか、見ごたえがあるというか、面白いというか、……。
    最後が、能装束です。大きいし、四角の集まりという感じです。
    (2012年1月18日・記)

  •  「井筒」、「熊野」、「隅田川」など、能の名作21篇の謡曲を、物語として語り直したもの。基本的に七五調の韻文で書かれ、背景の叙述や情景の描写が省略された謡曲のテクストを、描写的な散文へ翻訳し、作品世界へ読者を誘う。その際、謡曲に一部が引用される和歌が、原作へと言わば訳し戻され、それに最小限の注釈が付されていることが、それぞれの物語を味わい深いものにしている。白洲正子の端正で陰影豊かな文体も、「能の物語」に相応しい。謡曲を散文へと渡すことによって、生死の境を越えたところにある夢幻能の世界へ誘う好著であるが、「松風」が取り上げられていなかったのは少し残念。

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著者プロフィール

1910(明治43)年、東京生れ。実家は薩摩出身の樺山伯爵家。学習院女子部初等科卒業後、渡米。ハートリッジ・スクールを卒業して帰国。翌1929年、白洲次郎と結婚。1964年『能面』で、1972年『かくれ里』で、読売文学賞を受賞。他に『お能の見方』『明恵上人』『近江山河抄』『十一面観音巡礼』『西行』『いまなぜ青山二郎なのか』『白洲正子自伝』など多数の著作がある。

「2018年 『たしなみについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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