薔薇くい姫・枯葉の寝床 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061963795

作品紹介・あらすじ

自分のことにしか興味が持てない著者が、現実との感覚のずれに逆上して《怒りの薔薇くい姫》と化し、渾然一体となった虚構と現実が奇妙な味わいを醸し出す「薔薇くい姫」、男同士の禁断の愛を純粋な官能美の世界にまで昇華させた「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」の3篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 薔薇くい姫はこれまで私が読んだ森茉莉そのものの世界。既知の世界である。
    枯葉の寝床もその調子で読み進めていき、仰天した。男色小説、と言われるのを嫌ったと何かで読んだが、うなづける。男色小説という言い方も今の時代となっては、なんだかなぁという感じではある。森茉莉に恋愛小説を書かせるとこうなるのかぁと驚いたわりには妙に納得。確かに、薔薇くい姫と同様の世界観の延長として、枯葉の寝床、日曜日には僕は行かない、がある。耽美な世界。男女の恋愛だと、こうはならないのは何となく分かる。男性同士の恋愛、女性同士の恋愛の世界は分からないけど、分からないからなのか、同じドロドロとした感情でも距離感がある分、耽美なところだけが抽出される感じがした。ということは、同性愛の人から男女間の恋愛を見たら、こんなふうに感じるのかな。同じ嫉妬やマゾ的な想いも、違って見える。森茉莉、ただのお嬢様ではないし、奥が深い人だなぁ。ますますハマっていく。

  • 再読。「恋人たちの森」と収録作がふたつもかぶっているので、当時なぜ買ったのか、と思うのだけど、たぶん「薔薇くい姫」が読みたかったのだろう。森茉莉さんは、エッセイからはまったので。

    今読むと、エッセイと短編小説が一緒の編集って、うーん、好きじゃないなあ。文庫未収録の短編小説を入れてくれた方が、読者はありがたいのだけど...。なんでこういう構成にしたのか、よくわからない。「枯葉の寝床」は冗談ではなく百回以上読んでいるけど、やっぱりいい!大好き。

  • 短編三作品を収録しています。

    「薔薇くい姫」は、いつも子どものようにあつかわれることに腹を立てている著者自身をえがいたエッセイに近いスタイルの作品です。

    「枯葉の寝床」と「日曜日には僕は行かない」は、中島梓(栗本薫)以来によって評論の対象となった、現在「BL」、かつては「やおい」と呼ばれていた作品の源流と目されることのある男性同性愛小説です。

    「枯葉の寝床」は、レオという美少年と38歳のギランの物語です。レオがオリヴィオという男によってマゾヒズムを呼び起こされ、そのことに嫉妬するギランは、レオとともに死ぬことをえらびます。「日曜日には僕は行かない」は、作家の杉村達吉とその弟子である青年の伊藤半朱(ハンス)の物語です。半朱は、婚約者を捨てて達吉をえらびますが、そのことが悲劇を呼び起こします。

    ほんの一節を読んだだけで著者のものとわかる文体によって構築された耽美的な作品世界をつくりあげ、そのなかでキャラクター的な潤色がほどこされた登場人物の心理的な駆け引きが展開されています。同性愛という題材以上に、ケレン味の強い作品世界そのものが、読者によっては受けつけがたいと感じられるかもしれません。

  • 森茉莉2冊借りてて、こないだ新潮文庫のを読み終わってじゃあこっちはどんなんが入っとんかなと思ったら3編あるうちの2編が新潮文庫のと被ってたよ。なので未読の冒頭のひとつだけ読んで登録しました。
    薔薇くい姫すごく面白かったです。これ私小説みたいなやつでしょ?めっちゃおもろいオバサンやんけ森茉莉。
    自分を理解してくれる人の間でだけで過ごして気分よくしてるのすごいよく分かるわ。分かってくれる人の中でだけ自分はまともな大人でいられて、その外出ると急にただの変な人になるんよね。わたしもそーゆーのを強く実感した経験がある。

  • 「薔薇くい姫」子供扱いされることについて怒りの薔薇くい姫となる魔利(まりあ)。
    鷗外の娘って初めて知りました。文が上手いわけだ。
    「枯葉の寝床」恋人たちの森がプロトタイプだったのかな、という感じだけどかなり別に仕上がっている。薬中のオリヴィオから受けたプレイでマゾヒズムに目覚めたレオに苦悩し、ついにはギランは‥‥。
    「日曜日には僕は行かない」兄弟関係であった達吉と半朱だが、半朱が婚約したことで苦悩が生まれる。しかし達吉は半朱を手放さず、婚約破棄の手紙を書かせる。婚約者は自殺する。二人は共犯者の気持ちを共有することでこれから生きていく、という、中々仄暗いホモでよろしい。

  • セレクトの良い短編3作品集。
    『薔薇くい姫』……自伝と言うかエッセイ風の日常小説。なんというか、70歳になって小説家としてもそこそこでも人に舐められる事にイライラしてる茉莉さんに「わかるわかる」と頷いてしまうw 主観と客観とのズレを冷静に分析してる所が良かったです。なんとなーく、自分もこいいうおばあちゃんになりそうだから、つい共感してしまいました。
    『枯葉の寝床』……元祖BL小説? とか言われてるみたいですが、耽美世界ですね。ただ、延々とそういう世界が続いてるので、少々飽きます。室生犀星に、もうちょっと飾りたてすぎる表現の肉を落とした方がいい、って指摘された意味がよく分かるような。頭にあんまり入ってこないスカスカのものになってしまう感がありました。ナルダンやロンジン、ムゲのパルファン、といった美的センスは今でも秀逸だと思いますが。後半にかけての犬のエピソードからクライマックスは良かったです。
    『日曜日に僕は行かない』……これも少年愛ものの変奏曲でした。

  • 「薔薇くい姫」で、なんて長ったらしくいちいち注釈をいれて前に進まない自分に酔った文章なんだろう、と思ってしまったけど、「枯葉の寝床」「日曜日に僕はいかない」は引きこまれた。格調高く匂い立つような文体。

  • 何が驚いたって、この小説を書いてた時筆者が70代ということですよ・・・!

  • J書店へ『父の帽子』を探しに行ったのだけれど、冒頭を読んでやめた
    タイトルにもひかれたので、同じ講談社文芸文庫のこちらを購入

    「枯葉の寝床」
    品と趣味の良いBLという人もいるかもしれないけれど、それで済ませてはいけないと思う
    めくるめく官能と、来るべき結末
    中だるみしそうな冗長な部分もあったけれど、破滅していく様を表現するのに不可欠な描写だったのだろうと感じた
    講談社文芸文庫はカバーの質感も装丁もいいのだけれど、高い

  • 『薔薇くい姫』を書いたとき茉莉は73才(!)なのですが、自分のことを「私」ではなく「マリア」と呼び、昭和51年にして「魔利のような超大人な年齢の女なら~」と、まるで21世紀のギャル(死語)のように「超」を使っていたりして、その言語感覚の新しさに驚愕しました。よく言われるBLの元祖というよりむしろ、昨今急激に増えた「姫系」とでも言うべき、ピンクや薔薇やレースが好きで、自分のことを名前で呼び、姫扱いされたがる女の子たちの先駆者というべきほうが正しい気がします(笑)

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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