新・平家物語(二) (吉川英治歴史時代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061965485

作品紹介・あらすじ

保元の乱前夜、爛れた世の病巣は、意外に深かった。院政という摩訶不思議な機構の上に、閨閥の複雑、常上家の摂関争いの熾烈、その他もろもろの情勢がからみあって、一時にウミを吹き出す。-かくて保元の乱は勃発したが、「皇室と皇室が戦い、叔父と甥が戦い、文字どおり骨肉相食むの惨を演じた悪夢の一戦」であった。その戦後処理も異常をきわめ、禍根は尾をひいた。

感想・レビュー・書評

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  • 保元の乱が勃発。朝廷と院、貴族と貴族の争い武家は源平混合して各々の陣営につく。清盛はおそらく35歳〜40歳と推定。
    清盛の兄弟を中心に平家一門がそれぞれ世の中に出て行く。
    そして保元の乱後、重用される平家、冷遇される源氏。これは次の乱の発端となる

  • 保元の乱に始まり平治の乱に終わる、乱世極まる巻。第一巻にも言える事だが、盛者必衰の理が多分に表されていたと感じる。

    例えば信西入道。保元の乱で天敵頼長が倒れ、窓際族から一躍出世を果たすも、信頼の謀反により倒れる。その信頼も、過激なやり方に反発を抱かれ、刎頸の交わりを結んだ者たちに裏切られた事で、今や朝敵である。鳥羽上皇や頼長に振り回され、最後は京を呪う悪霊と化した崇徳天皇などに至っては、憐れというほか無い。乱世の中にあって、世を治める事の難しさを感じた。

    また、保元の乱とは違い、平治の乱は平氏と源氏の争いという側面が強く、これを持って公家社会から武家社会へと移行した様に感じた。とは言え、義平と重盛の一騎打ちの様に、「武士の誉れ」という貴族的側面は残っており、近代の戦争の様な大量殺戮的側面は見られていない事も、平安時代という時代背景からなのだろう。

    面白かった。次巻に期待。

  • 保元・平冶の乱が巧みな描写で描かれている。

  • 保元の乱から平治の乱の中盤まで。

    権力に取り憑かれた者の愚かさが淡々と描かれている。

  • 関白忠通と左大臣頼長の兄弟の権力争いの火だねが、後白河天皇と崇徳上皇の兄弟の争いへと飛び火していく。まったくもって人間社会というのは権力が絡んでくると、醜いものなる。保元の乱の勃発である。父子、親族が敵味方に分かれて戦うという地獄絵図。そして戦いの決着がついた後には相手方の処刑と、きわめて陰惨なる風景が展開される。負けた側の崇徳上皇は讃岐へ流罪となる。禍根は残っていく。こんな悪夢の中で、水守の麻鳥の存在に救われる。なんの欲得もなく、ただ崇徳上皇に付き従う麻鳥の姿にこそ、われわれは人間の真心の美しさを知る。

    【このひと言】
    〇しかし、清盛がいったとおり、花見ではない、合戦なのだ。白刃と乱箭(らんせん)と炎の下に、名誉や出世だけが拾えるものと夢みているとしたら度し難いばかである。もう一ぺん、家郷を思い、妻子を胸にえがいてみるがいい。生命にも、悔いはないか、自分自身に訊いてみろ。
    〇たれの場合も、出発は正しくて美しい。晩年の、太政入道清盛は、まるで、別人みたいな存在になったが、壮年のかれには、そんな理想もあったのである。
    〇貴族でもない、武者でもない、麻鳥のような身分の軽い者に、どうして、そんな真心があるのか。官位や栄爵も欲しない---何の代償をも望んでいない---みすぼらしい身一つの人間がそんな美しい心ねをもっているのか。それが、新院には、おわかりにならない。いや、真心は真心として映らずにいないので、直後には、すぐ麻鳥の純なる敬愛の気持ちを、新院も、お汲みとりにはなった。そして、こういう素朴な野の民のうちにこそ、なんの裏表も醜さもごまかしていない、きれいな一つの精神の花が、この国の四季の中にはあったのだということを---まことに遅くではあったけれど---いま初めて、ここで、お習びになった。
    〇悪左府、悪別当、悪右衛門、悪何々---といったような呼び方は、めずらしくもなんともない。そのころの人の間では、アダ名ぐらいにつかわれていた。それは悪人とか、悪党とか、決定的な極印を打つ意味ではなく、むしろ憎悪のできない悪、道徳の規矩以外から人間的には愛称される悪、かれにもあるが自分らにもあるとはっきり共感のもてる悪、ほんとはとても善いやつなのにその反対のボロを出して世間からたたかれてばかりいる悪---などの単純でいて実は際限なくむずかしい"善と悪"なるものの差別にたいする一種の庶民称といったようなものである。

  • 第2巻では、保元の乱後の藤原信西の権勢と、平治の乱の勃発までの展開が描かれます。

    保元の乱で敗れ去った崇徳院と、院のために命がけで水守の仕事を守ろうとした麻鳥という男の交流や、清盛と久しぶりに再会した母・祇園御前のエピソードなど、本筋から離れた話など、ちょっとしたアクセントが効いています。

    後半は、熊野詣でに出かけていたために平治の乱の初動に遅れた清盛が、主上と院の身柄を遷して近衛大将信頼と源義朝の軍勢に対してたちまち優位を占めるところなど、もう少し清盛の活躍に詳しく迫ってほしかったところです。

  • 2015/05/16完讀

    保元之亂,內裏方先發動夜襲(賴長不願採行為朝的夜襲建議,反倒被內裏方以同樣方式將軍),兵數較少又被火攻,新院方慘遭潰敗。源義朝因功成為右馬頭被允許上殿取名,但清盛和信西交好取其實獲得播磨領地。

    這裡幾乎用了半本的篇幅描寫這場戰爭和戰後慘烈無比的清算,背後藏鏡人信西開始血洗新院方,大量逮捕及處刑。清盛在掙扎許久,半推半就執行了叔父平忠正(真的是一個嘴巴很兇猛又很可怕的老頭)和堂兄弟的斬首刑,源義朝也被迫暗算自己的父親為義,兄弟父子互相殘殺宛然人間地獄。惡左府早已在父親拒絕下咬舌自盡。最慘就是崇德上皇,在仁和寺剃髮後,被流放到讃岐,知道無法獲釋之後化身成怨念魔王而死,實在非常慘烈。不過阿部麻鳥是個很神奇的角色,忠心守護上皇的水,還在如意山神奇出現供奉水給上皇喝,乞討供養西行,甚至還渡海(他被丟到水裡怎麼沒領便當?)到讃岐完成吹笛給上皇聽的誓言。此人據說是吉川自創,亂世裏面弱肉強食互相殺戮暗算,不知道創出這麼純潔的人有何用意?看下去才會知道。

    暫時為維持兩三年的太平,後白河天皇讓位給二條天皇,改元平治。信西專擅掌權,背後是清盛的武力,引起年輕公家如信賴、經宗不滿,雖他們也受上皇寵愛,但暗地企劃打信西,聯合被平家比下去的源義朝,意圖策畫政變。清盛去熊野参詣(途中心中終於放下對母親的怨憤,接受她就是這樣的人這段寫得真好!),謀反方終於在京都發動了攻擊,在無謀的信賴等人指揮下,居然把三條烏丸的仙洞御所放火燒掉(呈子父親藤原伊通說,御所裡那口井是殺最多人的,最該受賞才對。真是令人毛骨悚然的笑(?)話),綁架並幽閉上皇與天皇,殺掉信西(據說他恢復三百年來未執行的死刑,掌權才三年就)及其親屬,擅自發旨論功行賞(上皇還沒放出來耶)。比較令人費解的是,信賴一夥都沒有攻打六波羅,一直在等清盛的動靜,也沒有如義平所建議直接決戰。而清盛得知消息,在掙扎之下決定不逃到四國或中國,入京一決死戰,回到先把女眷都移出去。

    信賴只在意其他公卿不太鳥他,於是要求無正當理由不上朝便處死,而且自己居然端坐紫宸殿最高位,晚上住在清涼殿,被光賴當庭斥喝。和他同夥的經宗和惟方看他這麼愚蠢,馬上暗投六波羅方,當晚上皇就被暗地救出移到仁和寺,天皇則被移到六波羅,史稱六波羅行幸。

    清盛獲得天皇綸旨之後出兵,吸引源氏離開皇城之後由內應佔領內裏,然而成為死兵的源氏勇猛進攻,現場更加激戰,到最後賴政加入平方,源氏側翼潰敗才分勝負。源氏敗退之後,清盛也開始邁向執掌權力([簡]入手)之路。為了將天皇迎回內裏,對盤據內裏的流浪漢既往不咎,但是要他們幫忙大掃除(好主意)!另一方面義朝帶著兒子要逃回東國,賴朝卻在途中走散。後來義朝反而受騙被殺,賴朝在清盛後母大力求情下終於決定流放伊豆(流放到源氏大本營東國!)。清盛後母認為這樣是累積福報,重盛不想再看到血腥屠殺(もののふのあわれ,知道這次只是運氣好沒有輪到自己)。作者說在此埋下後來平家滅亡的禍根,不是因為放賴朝一命,而是平家開始讓私涉公。而常盤御前煞到清盛,清盛最終也決定不殺義朝的這三個小孩。最小的牛若丸兩歲還在母親懷中喝奶。

    **
    看到這種政局會感到無常實在很正常,政權的更迭比翻書還快。。。

    **
    「清盛の本質にはその風貌にもたすけて、はなはだ渺としたところがあり、容易に他から意中のからくりをのぞかせないところもあった。そうかと思うと、赤裸で、あけっ放し過ぎるような点もあり、:その両面を知ると、人はなおさら「わからないお人よ」とよくいうのである。しかし、清盛の心の構造は、その両面の大広間のほか、なおいくつもの小部屋や開かずの間があったかも知れない。されは清盛自身さえまだ全部わかりきっていないのである。ただかれも年取るままに、やがてその年齢が、つぎつぎに、心の小間や明けず野間を開けてくることとは思われるが」

  • 保元の乱から平治の乱にかけての話になり、いよいよ面白くなってきました!
    天皇家の悲哀が特に切ない。文章に天皇家に対する敬意も感じられて、その時代の人間の感覚に近づける気がする。
    崇徳上皇と麻鳥の関係に権力争いに翻弄される一番の被害者である天皇家の悲しさが表現されていたと感じました。
    一方の公家は滑稽なまでにおろか。
    もう公家の時代ではないというのがひしひしと伝わる。

    武家の棟梁としての清盛と義朝の対比も面白い。
    端整な重盛VS悪源太義平の嫡男対決もわくわくする。
    ついに13歳の頼朝も登場するし、長期戦でのんびり読むつもりだったけど、早く続きが読みたいです。

  • 保元の乱と平治の乱の巻。

    保元の乱は、血を分けたもの同士が敵味方に別れ戦うという、悲劇的な乱。
    吉川英治も、その本文の中で「まことに、保元の乱を書くことは苦しい。」
    と述べている。崇徳上皇がとても無念。
    吉川英治の創作らしい、阿部麻鳥の存在で、やや救いを感じる。
    叔父を自ら斬らなければならなかった清盛も悲劇だけど、
    最後までどちらにつくか迷っていた父を斬らなくてはならなかった、
    義朝は特に悲劇だった。

    平治の乱では、熊野詣から引き返す際の家貞の用意周到さに心躍った。
    源氏の人々がこれからどうなるのか、読み進めるのが楽しみ。

    保元の乱、平治の乱をこの小説で、
    武士の武力に寄り添って政変が起こる様子を読んで、
    これまでの平安の歴史からがらりと変わったなという感じがした。

  • 保元の乱から平治の乱までを描いています。
    貴族と武士の力関係が逆転するきっかけとなった時代の節目だけに興味深い。それ以上に負けた側と勝った側の人間模様も考えてしまいますね。

    敗者の崇徳天皇の讃岐での悲哀。奢り高ぶる信西と権力の中枢から滑り落ちる藤原頼道。その信西も源氏により殺されてしまう。それも文覚のこの一言に集約されていると思う。

    「人間にとって何よりの毒は権力だよ。」

    親兄弟でも、反目しあい、殺しあう時代。「今日の友は明日の敵」の世界。後に頼朝が人間不信になってしまうのも分かる気がします。しかし、大河ドラマの世界と言うのは一度、小説などを読んでから見ないと歴史認識が誤りますね。

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著者プロフィール

1892年、神奈川県生まれ。1921年、東京毎夕新聞に入社。その後、関東大震災を機に本格的な作家活動に入る。1960年、文化勲章受章。62年、永逝。著書に『宮本武蔵』『新書太閤記』『三国志』など多数。

「2017年 『江戸城心中 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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