絶望の書・ですペら (講談社文芸文庫)

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著者 : 辻潤
制作 : 武田 信明 
  • 講談社 (1999年8月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061976764

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絶望の書・ですペら (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

  • ゴシップ好きなので、真っ先に伊藤野枝について語る「ふもれすく」を読む。つい想像たくましく読んでしまう。教師と生徒の関係の頃、野枝さんのことを何とも思ってなかったように書いてあるが、本心だったろうか。30歳を前にして人生をはじめて謳歌すべく結婚を決断し、愛し合ったことをクールに語るが、真実は語る以上に情熱的だったろうな、とか。
    別れの前に大げんかしたようなことがあり、リアル。社会運動に没頭する野枝さんのことを、辻は家庭のことすらできないくせにと思っている。一方で、野枝さんは辻のことを社会運動に理解のない見下げた人間と見ている。野枝さんは現代でいう、意識高い系の代表格みたいな存在。ついつい正義を含めたあらゆる価値を相対化してしまう辻とは上手くいかなかったことだろう。
    ニヤニヤしたのは、辻自身が紹介される際に、野枝さんの亭主だの前夫だの言われることに不快感を表明しているところ。自身を低く見積もる辻の中にもプライドが垣間見えて安心した。

  • 辻潤のエッセイ集……とはいえよく知らない作者で、買ったのはタイトルに惹かれたから。
    『辻潤エッセイ集』という副題がついているが、はっきり『小説』と明記されたもの、小説ともエッセイとも散文詩ともつかないものなど、収録作は一筋縄では行かないものが多い。書き言葉より話し言葉に近い文体で、次々と頭に思い浮かんだものを書いているように思えてしまう。読者に直接語りかけ、作品世界にのめり込ませる力は、文体の魅力も大きいだろう。

  • この人は社会の中で何も考えずにあくせく働くことがどうしてもできない人だったんだろうなあ。かといって芸術面に才能があるとも思っていなかった。自分は何もない人間だと思い込んでいたのではないだろうか。

    それでも諦めと居直りの文章の中に自尊心が見え隠れしていたり、世間のことなど知ったことかという生き方をしていながら「世間では僕のことを○○といっているが~」など他者から見た自分に敏感だったりする矛盾がまた人間臭く、親近感をおぼえる。

  • ちゃらんぽらんでもどんどん生きてゆけるようになりました。二冊持ってるので誰か一冊あげる

  • ダダイストである辻 潤は、ですぺらというエッセイでこんなことをいっています。

    >  みんな自分のかけている眼鏡が最上で正しいと考えているらしい。
    > しかし、中には自分の眼鏡を信用せず、他人の眼鏡をも信用しない
    > 人間もいる。
    > その信用しないというのも彼の持つ一ツの人生観なのである。


    そうか、そういうのをダダイズムというのかと腑に落ちました。
    私が敬愛するあの方、この方、みな既成価値から自由で、だから、私は彼ら・彼女らが好きなんだとこの本(随筆)を読んで分かりました。

    本書には、若い時から晩年までのエッセイが収められています。若い時の辻潤は「各人はただ各人の持てる才能を自由に発揮さえすることが出来ればそれでいいのだ」と言います。明治16年生まれの人として進んだ考え方だと思いました。

    また、中年になって、恐らくその頃は洋行すると渡航記を書き発表するのがふつうなのでしょうが、それをするのが恥ずかしいと書きません。その羞恥心を私はとても愛おしく感じます。

    また、辻潤は、翻訳家でもあります。
    これをみると、素晴らしい翻訳をされていたのだといことがわかりますね。

    http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/2243/TJ_Hibiki/Texts/Yakushi.html

  • 詩人辻潤のエッセイ集。ダダ、アナキズム、ニヒリズム、老荘的酔生夢死、スチルネル的自我主義、萩原朔太郎、デカダンス、にるあどみらり、酒、煙草、無頼、乞食、放浪、発狂、そして餓死・・・まさに絵に描いたような落魄の生涯。でも辻の文章を身体に通すと、寂寥と云おうか諦観と云おうか、何とも不思議な安穏を覚えた。彼の"書けないわがまま"に、自分の姿を見ているからだろうか(「ものろぎあ・そりてえる」「にひるのあわ」)。『唯一者とその所有』『虚妄の正義』を読んでみたい。

  • 太宰と並んで人生の指標に掲げる。
    七十年近く前の絶望は、現代の絶望よりもきっと、雑じり気のない形をしていたんだろう。

  • 果てしない無力感、とてつもない虚脱感、言い知れぬ寂寥感、押しつぶされそうな圧迫感、どうにかこうにか、なんとか顔をあげて前を向こうとするその最後の気力をも打ちのめし、ためらわせる圧倒的な孤絶感。

    ふと気がつくと、確かにはるか後方にいるはずの私が、まわりの風景と自分の身体がたえず揺れ動いているような錯覚を、否、実際に何度も幾ばくかの振幅があった時もあるけれど、それを日常茶飯事に常に感じて、まるで夢遊病者のようになりつつあります。

    あの日から、こんなに連続して起こる地震を実際に体験することも初めてなら、身近でなくても次々と飛び火するようにまわりで起こるのを知るのも初めてです。

    事実としては家屋の崩壊も津波もなく、死に直面して肉体的な苦痛を味わったわけではないのですが、現地報道を絶え間なく見続けて、さらに前述のような疑似避難生活を送っていると、ついには濁流にのまれて自動販売機と一緒に汚泥の中を流されている夢を見たり、瓦礫の下敷きになって身動きできなくなって、ふと見るとそばに、見慣れた靴を履いた自分の右足が転がっているのを見つけて、その痛さにウンウンうなされて汗びっしょりで目が覚めるというような経験をするに到りました。

    なんというこの喪失感。

    そういえば、かつて少し似たような思いにかられたことがありました。

    漠然とした厭世的気分によって、後の三島由紀夫よりも10歳も若いみそらで自殺してしまった芥川龍之介の影響を多大に受けた文学少女の、次に手にした本がこの本だったといえば誰か信じてくれるでしょうか。

    今となっては、芥川龍之介も辻潤も、彼らのそのデスペレートな心情は所詮は観念的な思い込み、額に汗したこともないおぼっちゃま、ブルジョワ階級の戯言と一笑に伏すことができますが、その頃はもうたいへん、真剣にペシミスティックになって悩み抜き、まだたいした経験もしていないのに世の中と自分に絶望してましたもの。

    でも、未熟者の私でしたが、そのとき導き出した結論は、絶望とは最終的な境地ではなく、とことん感じて、つくづく舐めてみてもいいけれど、そこから這い上がってより強靭な自分になるための運命的な試練なのだというものでした。

    ですから芥川龍之介も辻潤も、愚か者どころか、身を持って反面教師としての姿を示して下さった偉大な先達として崇拝しています。

    ましてや辻潤などは、餓死するという究極の入滅を実行した人、仏さまです。

  • 2009/6/18図書館で借りる
    2009/

    初めて辻潤さんの本を手に取り、読みました。きれいな日本語で書く方で、わかりやすかった。

    ・一切の価値はただ自己が創造するのみだ。自分以外に価値を見出すものは自分以外に権威を認めるものだ。他人の評価を持たなければ自己の価値のわからないような人間は自己の所有者ではない。そんな人間は他人の価値観の変わるたびごとに自分の価値を変えなければならない。

  • 文庫のくせに1000円ぐらいしたから、
    10回ぐらいよんだった

  • 彼には「酔生夢死」って言葉がよく似合う。

  • 青空文庫の方で「ふもれすく」を読みました。伊藤野枝の成長のために、身を引くように大人の男として対応した彼だけど、「ふもれすく」には辻の心の内のやりきれなさがいたるところににじみ出ていて泣けます。
    辻潤のほかの文章も読んでみたいので、追々この文庫を手に入れたいと思います。

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絶望の書・ですペら (講談社文芸文庫)の作品紹介

幼時にキリスト教を信仰し、のちダダイストとして登場、自由を求めて絶望を知り、伊藤野枝と結婚し数年で離婚、尺八を吹き各地を流浪の末、巷間に窮死した辻潤(1884-1944)。後年大杉栄の元に行った野枝との回想「ふもれすく」を始め、著作集『浮浪漫語』『ですぺら』『絶望の書』等と未収録エッセイより、小説「三ちゃん」を含む二十五篇で構成。詩人の魂を持つこの無類の思想家の現代的魅力を伝える。

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